知財高裁平成28年4月12日判決「フランク三浦」事件

本件訴訟の原告は、手書き風のカタカナと漢字からなる「フランク三浦」(以下、「本件商標」とする。)について、第14類「時計、宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品、キーホルダー、身飾品」を指定商品として平成24年3月27日に出願し、平成24年7月31日に登録査定を受け、平成24年8月24日に商標権の設定登録を受けました。

本件訴訟の被告は、登録第4978655号商標「フランク ミュラー(標準文字)」(以下、「引用商標1」とする。)、登録第2701710号商標「FRANCK MULLER」(以下、「引用商標2」とする。)、国際登録第777029号商標「FRANCK MULLER REVPLUTION」(以下、「引用商標3」とする。)の商標権者です。

被告は、本件商標は、被告が所有する引用商標1から3に類似するので商標法第4条1項11号他の無効理由を有するとして、平成27年4月22日に無効審判の請求をしました。

特許庁は、本件請求について無効2015-890035号事件として審理し、平成27年9月8日、「登録第5517482号の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を行いました。

原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。

知財高裁は、本件商標と被告の引用商標1~3の称呼は類似するものの、「三浦」は日本人の一般的な姓、「フランク」は、外国人の一般的な名前であることから本件商標からは「フランク三浦」との名ないしは名称を用 いる日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じるのに対し、引用商標1~3からは、外国の高級ブランドである被告商品の観念が生じるから、両者は観念において大きく相違し、また外観において明確に識別し得るから本件商標は、引用商標1~3のいずれとも類似するとはいえない商標であるとして特許庁の審決を取消しました。

知財高裁平成28年1月20日判決「REEBOK ROYAL FLAG」事件

原告は、平成25年7月4日に「REEBOK ROYAL FLAG」の欧文字を標準文字で表して成る商標(以下「本願商標」とする。)について、指定商品を第25類「履物、運動用特殊靴、帽子・その他の被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、仮装用衣服、運動用特殊衣服」として、商標登録出願をしました。

本願商標は、引用商標「ROYAL FLAG」に類似するので商標法4条1項11号に該当するとして、拒絶査定を受けたので、原告は拒絶査定不服審判を請求しましたが、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を受けたので、原告は本件審決取消訴訟を提起しました。

知財高裁は、本願商標の内、「REEBOK」の部分は、指定商品である第25類「履物、運動用特殊靴、帽子・その他の被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、仮装用衣服、運動用特殊衣服」の分野において、原告の商標として広く知られていること、及び英語で「王の、王室の」等を意味する「ROYAL」と、「旗」を意味する「FLAG」はいずれも我が国において広く知られている外来語であることから「ROYAL FLAG」の部分は本願商標の指定商品の品質、内容等を直接表示するものではないとしても、取引者、需要者が日常において接するありふれた一般語であって、見る者に対して商品出所識別標識として格別に強い印象を与えるものではないとして、本願商標は「REEBOK」の部分か、または「REEBOK ROYAL FLAG」の商標全体で類否判断すべきであるとした上で、本願商標と引用商標「ROYAL FLAG」は非類似であるとの判断を行い、特許庁の審決を取消しました。

知財高裁平成27年11月30日判決「肉ソムリエ」事件

原告は、平成25年10月7日に第29類「食肉」、「肉ソムリエ(標準文字)」について商標登録出願を行いましたが、本願商標は3条1項3号に該当するので、登録することができないとして拒絶査定を受けました。原告は拒絶査定不服審判を請求ましたが、請求は棄却されました。原告は、これを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。

知財高裁は、「本願商標は,『肉ソムリエ』の文字を標準文字で表してなるものであり,本願商標から『ニクソムリエ』の称呼が生じる。大辞林第三版(平成18年10月27日発行。乙1及び2)によれば,本願商標を構成する『肉』の語は,『【1】動物の骨や植物の種子に付着した柔らかい部分。【2】食用とする鳥獣のにく。【3】からだ。【4】生身のからだだけで器具を用いないこと。【5】血縁であること。【6】印肉のこと。』を意味し,『ソムリエ』の語は,『ワインに関する専門的知識をもち,レストランなどで客の相談に応じてワインを選ぶ手助けをする給仕人。』を意味することが認められる。そして,本件審決日以前にウェブサイトに掲載された情報として,【1】『現在日本ではワイン以外でも○○ソムリエと,様々な専門分野に特化した専門家を○○ソムリエと呼ぶ事があります。』との記載に続き,『資格を取得出来るソムリエやまた,ソムリエと同じく専門特化している資格等』の例として,『日本酒ソムリエ』,『焼酎ソムリエ』,『コーヒーソムリエ』...などが紹介され(2012年(平成24年)10月27日付け『777NEWS』。乙3)...加えて,市民講座『丸の内朝大学』の2013年(平成25年)度秋学期クラス一覧(乙16)に,食肉の選び方,買い方や保存法,調理法等を学ぶ講座として開講される『No Meat No Life 肉ソムリエクラス』が挙げられていること,2013年(平成25年)4月16日付け日本経済新聞朝刊(乙17)に,『丸の内朝大学』が開講する講座に関し,『食肉の選び方や料理法などを,食べながら学ぶ【肉ソムリエ】が一番の人気だ。』との記事があることが認められる。そうすると,本件審決日当時,『肉』の語と『ソムリエ』の語を結合させた『肉のソムリエ』の語が,食肉業者間で『食肉技術専門士』の別称として用いられ,また,『肉ソムリエ』,『肉のソムリエ』,『お肉ソムリエ』などの語が,食肉の選択や品質管理等についての専門的知識を有する者を意味する語として用いられる例があったことが認められる。本願指定役務である『肉食を中心とすることで健康を維持・促進するための肉の選択方法・肉の調理方法・肉と他の食材との組み合わせなど』に関する資格検定試験の実施,資格の認定及び付与,資格検定試験に関する情報の提供,資格取得に関する知識の教授に係る事業の取引者,需要者には,食肉の選択や調理等についての専門的知識の修得に関わる食肉業者や一般消費者などが含まれるところ,前記(2)認定の事実によれば,本願商標を構成する『肉ソムリエ』の語は,本件審決日当時,かかる取引者,需要者によって,『肉(食肉)に関する専門的知識を有する者』を意味する語として,一般に認識されるものであったことが認められる。そして,『資格検定試験の実施』,『資格の認定及び付与』などの役務においては,『資格』の内容は,当該役務の質(内容)を構成するものといえる。そうすると,本願商標は,本件審決日当時,本願指定役務に使用されたときは,当該『資格検定試験の実施,資格の認定及び付与,資格検定試験に関する情報の提供,資格取得に関する知識の教授』に係る資格が,『肉(食肉)に関する専門的知識を有する者』に関するものであるという本願指定役務の質(内容)を表示するものとして,取引者,需要者によって一般に認識されるものであって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであったものと認められるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,自他役務識別力を欠くものというべきである。加えて,本願商標は,標準文字で構成されているから,『肉ソムリエ』の文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるというべきである。」として、本願商標は、商標法3条1項3号に該当するとの判断をしました。

「湯~トピアかんなみ」事件控訴審 知財高裁平成27年11月5日判決

本件は、東京地方裁判所平成25年(ワ)第12646号「湯~トピアかんなみ」事件の控訴審です。原審では、原告商標の「湯~とぴあ」の部分と被告標章の「湯~トピア」の部分がそれぞれ要部であるとされ、被告標章は、原告商標に類似すると判断され、被告標章の使用差止と損害賠償請求が認められました。被告側は、これを不服として控訴しました。

知財高裁は、入浴施設の提供という指定役務の分野において「ユウトピア」の称呼を含む施設が国内において相当数あることから、原告商標の「湯~とぴあ」の部分と被告標章の「湯~トピア」の部分の自他役務識別力は弱いので、原告商標は「ラドン健康パレス\湯~とぴあ」、被告標章は「§湯~トピアかんなみ\IZU KANNAMI SPA」のうち、「湯~トピアかんなみ」の部分で類否判断するべきであるとしました。

知財高裁は、「原告商標と、被告標章のうち強く支配的な印象を与える部分である『湯~トピアかんなみ』とを対比すると、原告商標からは、『ラドンケンコウパレスユートピア』の称呼及び『ラドンを用いた健康によい温泉施設であって、理想的で快適な入浴施設」という程度の観念が生じ、被告標章の「湯~トピアかんなみ』の部分からは、『ユートピアカンナミ』の称呼及び『函南町にある、理想的で快適な入浴施設』という程度の観念が生じることが認められるから、原告商標と、被告標章のうち強く支配的な印象を与える部分とは、称呼及び観念を異にするものであり、また、外観においても著しく異なるものであることが明らかである。その上、前記(4)のとおり、全国の入浴施設については、同一の経営主体が各地において同様の名称を用いて複数の施設を運営することがあり、原告商標及び被告標章にはいずれも『ユートピア』と称呼される『湯~とぴあ』又は『湯~トピア』の文字部分が含まれていることを考慮しても、原告商標と被告標章との外観上の相違点、原告施設及び被告施設以外で、『湯ーとぴあ』又はこれに類する名称を用いた施設が全国に相当数存在すること、被告施設の所在地、施設の性格及び利用者の層などの事情をも考慮すれば、原告商標と被告標章とが、入浴施設の提供という同一の役務に使用されたとしても、取引者及び需要者において、その役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認めることはできない。」として、原告商標と被告標章は非類似であるとしました。

サンローラン事件 平成27年12月10日知財高裁判決

被告は、指定商品を第3類「人造じゃ香、その他の香料類(薫料・香精・天然じゃ香・芳香油を除く。)、吸香、におい袋、香水、その他の香水類、フケ取り香水、香油、髪膏、おしろい、化粧下」とするカタカナ文字を書してなる商標「サンローラン」(以下、「本件商標」とする。)について、商標権を有しています。

原告は、本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないとして特許庁に対し商標法50条1項に基づき不使用取消審判を請求しました。特許庁は本件を、取消2013-301103号事件として審理しました。

特許庁は、売上伝票、払込取扱票及び美容室の代表者の購入確認書等から使用が認められるとして「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をしました。原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。
知財高裁は、「被告が、平成25年11月25日、ローナ美容室に対して販売した『商品コード/品名:オーデトワレ(フローラルグリーン)』の商品パッケージは、ローナ美容室の代表者であるA作成・提出に係る購入確認書記載の写真に掲載されたものであって、商品パッケージの裏面には『サンローラン』の表示がされていることが認められる。そして、同表示は、本件商標と社会通念上同一の商標ということができる。また、商品である『オーデトワレ(フローラルグリーン)』は、香水の範ちゅうに属するものと認められる。...(被告の)各行為は、商標法2条3項2号の『商品の包装に標章を付したものを譲渡し』に当たるというべきである。」として、被告は本件商標と社会通念上同一と認められる商標使用しているとしました。
原告は、被告が提出した証拠は、被告との関係性の強い取引先の代表者の購入確認書であり、「極めて主観的で証拠価値の認められない、いつでも容易に準備作成可能な証拠」であり、客観性を欠くとの主張をおこなっていますが、これに対して知財高裁は、「被告取引先の各代表者の作成・提出に係る購入確認書(乙13、14)は、その体裁、内容及び作成名義等について、特段、疑義を生じさせるものではなく、同購入確認書の記載内容に従って事実認定をすることができないとする根拠はない。原告は、上記購入確認書について、その信用性を疑わせるに足りる具体的事実を何ら主張立証しないのであって、その証明力を弾劾する主張立証活動も行うことなく、被告取引先の各代表者が作成・提出したものであり、容易に準備作成可能な証拠であるとの理由だけで、同購入確認書を、極めて主観的で証拠価値の認められないものであると主張するものにすぎない。」として原告の主張を退けました。

肉ソムリエ事件 知財高裁平成27年11月30日判決

原告は、「肉ソムリエ」(標準文字)(以下、「本願商標」とする。)の商標について出願しましたが、3条1項3号に該当するとして、拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判の請求と同日付で指定商品及び指定役務を補正しました。尚、補正前後の指定商品・指定役務は以下の通りです。

(補正前)
第29類「食肉」

第41類「食に関する資格検定試験の実施、資格の認定及び付与、資格検定試験に関する情報の提供、資格取得に関する知識の教授」

(補正後)
第29類「食肉」

第41類「肉食を中心とすることで健康を維持・促進するための肉の選択方法・肉の調理方法・肉と他の食材との組み合わせなどに関する資格検定試験の実施、肉食を中心とすることで健康を維持・促進するための肉の選択方法・肉の調理方法・肉と他の食材との組み合わせなどに関する資格の認定及び付与、肉食を中心とすることで健康を維持・促進するための肉の選択方法・肉の調理方法・肉と他の食材との組み合わせなどに関する資格検定試験に関する情報の提供、肉食を中心とすることで健康を維持・促進するための肉の選択方法・肉の調理方法・肉と他の食材との組み合わせなどに関する資格取得に関する知識の教授」(以下、この指定役務を「本願指定役務」ということがある。)特許庁は、上記請求について不服2014-19333号事件として審理し、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をしました。原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。

本件訴訟の争点は、本願商標の3条1項3号該当性です。

知財高裁は、「本願商標は、『肉ソムリエ』の文字を標準文字で表してなるものであり、本願商標から『ニクソムリエ』の称呼が生じる。大辞林第三版(平成18年10月27日発行。)によれば、本願商標を構成する『肉』の語は、『【1】動物の骨や植物の種子に付着した柔らかい部分。【2】食用とする鳥獣のにく。【3】からだ。【4】生身のからだだけで器具を用いないこと。【5】血縁であること。【6】印肉のこと。』を意味し、『ソムリエ』の語は、『ワインに関する専門的知識をもち、レストランなどで客の相談に応じてワインを選ぶ手助けをする給仕人。』を意味することが認められる。そして、本件審決日以前にウェブサイトに掲載された情報として、【1】『現在日本ではワイン以外でも○○ソムリエと、様々な専門分野に特化した専門家を○○ソムリエと呼ぶ事があります。』との記載に続き、『資格を取得出来るソムリエやまた、ソムリエと同じく専門特化している資格等』の例として、『日本酒ソムリエ』、『焼酎ソムリエ』、『コーヒーソムリエ』...【2】『ソムリエといえば客の好みや料理に合わせてワインを選ぶ人のことをいいますが、最近では『専門的な知識を持っている人』という意味として使われることも増えています。その中でも今回は、ワイン以外のものに関係する食べ物のソムリエをいくつかご紹介しましょう。』との記載に続き、資格の認定等が行われている例として『オリーブオイルソムリエ』、『だしソムリエ』...【3】資格の認定等が行われている例として『タオルソムリエ』、『温泉ソムリエ』...が紹介されている(同月7日付け『マイナビニュース』。)ことからすると、本件審決日当時、『ソムリエ』の語の前に商品や食品、事柄を表す語を結合した語は、当該商品等についての専門的知識を有する者を意味する語として、一般に理解されていたことが認められる。さらに、食肉業者や肉料理を提供する飲食店においては、食肉技術専門士協会の認定資格である『食肉技術専門士』を『肉のソムリエ』と称することがあるほか、商品である食肉の選択や品質管理等についての専門的知識を有する者を指す語として、『肉のソムリエ』、『お肉ソムリエ』、『肉ソムリエ』、『ビーフソムリエ』の語を用いている例があることが認められる。...そうすると、本件審決日当時、『肉』の語と『ソムリエ』の語を結合させた『肉のソムリエ』の語が、食肉業者間で『食肉技術専門士』の別称として用いられ、また、『肉ソムリエ』、『肉のソムリエ』、『お肉ソムリエ』などの語が、食肉の選択や品質管理等についての専門的知識を有する者を意味する語として用いられる例があったことが認められる。... 本願指定役務である『肉食を中心とすることで健康を維持・促進するための肉の選択方法・肉の調理方法・肉と他の食材との組み合わせなど』に関する資格検定試験の実施、資格の認定及び付与、資格検定試験に関する情報の提供、資格取得に関する知識の教授に係る事業の取引者、需要者には、食肉の選択や調理等についての専門的知識の修得に関わる食肉業者や一般消費者などが含まれるところ、前記(2)認定の事実によれば、本願商標を構成する『肉ソムリエ』の語は、本件審決日当時、かかる取引者、需要者によって、『肉(食肉)に関する専門的知識を有する者』を意味する語として、一般に認識されるものであったことが認められる。...加えて、本願商標は、標準文字で構成されているから、『肉ソムリエ』の文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるというべきである。したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当するものと認められる。」として知財高裁は原告の請求を棄却しました。

iロゴ商標事件 知財高裁平成27年10月29日判決

原告は、第36類「銀行業務、ミューチュアルファンド投資に関する助言」等を指定役務とするアルファベット「i」の文字をロゴ化した商標について商標登録出願を行いましたが、3条1項5号に該当するとして拒絶査定を受けました。 原告はこれを不服として拒絶査定不服審判を請求(不服2014-4145号) しましたが、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を受けました。原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。

本件訴訟の争点は、【1】商標法3条1項5号該当性についての判断の誤り、【2】商標法3条2項該当性についての判断の誤りの2点です。

知財高裁はこの2点について、それぞれ以下のように判断致しました。

【1】商標法3条1項5号該当性についての判断の誤りについて 知財高裁は、「本願商標は、アルファベットの『i』一文字をデザイン化して、特定の緑色の単色で着色したものである。その形状は、直線のみで構成されていて、上部に位置する点の部分が正方形であって、下部の縦線部の幅が上部の点の幅とほぼ同じであり、下部の上端左側と下端左右にセリフ部分がついている。セリフを持つ書体で欧文字を表すことは一般的に行われており、欧文字『i』をセリフ書体で表す場合に、縦線部に対して一定の太さを持つセリフにより表すことも通常行われている。また、『i』の上部の点を四角形とすること についても、しばしば行われているといえる。さらに、四角形の点と一定の太さのセリフを兼ね備えた書体(例えば、『Memphis』書体。)も存在する。そして、色彩も、看者をして通常の黄緑色の範囲内であると認識させるものを、単色で用いているにすぎず、本願の指定役務を提供する業界においても、緑色を基調とする色彩は広く用いられている。したがって、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなるものと認められ、その指定商品及び指定役務との関係でみても、格別自他商品識別力を有するとはいえず、特定人による独占的使用を認めるのに適しているともいえない。」として3条1項5号に該当するとの判断に誤りはないとしました。

【2】商標法3条2項該当性について 知財高裁は、「認定事実からすれば、本件審決時である平成26年9月16日において、原告が提供する役務である上場投資信託『iShares』は、その売上高が極めて大きいことからして、金融商品の需要者・取引者によく知られているものと認められるが、一方、本願商標は、その使用期間が1年2か月程度と短く、新聞や雑誌に本願商標を用いた広告(その立体的置物を含む。以下同じ。)を掲載したのは7回にすぎず、トレードショーなどで本願商標を用いたと認められる事例は本件審決後を含めても5回に限られ、しかも、本願商標は、原告の役務名である『iShares』や、原告の名称を表す『byBLACKROCK』と共に使用されるのが通例であり、本願商標単独で使用されるものとは認められない。そうすると、本願商標が指定役務とされる役務に使用されたか否かの判断はひとまず措くとしても、本願商標は、その使用の結果、需要者が原告の業務に係る役務であることを認識することができるに至ったとは認めるに足りない。」として、3条2項に該当しないとして、原告の請求を棄却しました。

湯ーとぴあ事件(控訴審) 知財高裁平成27年11月5日判決

被控訴人(原告)は、役務「入浴施設の提供」について「ラドン健康パレス\§湯~とぴあ」の商標権を持っており、「§湯~トピアかんなみ\IZU KANNAMI SPA」の標章を使用する控訴人(被告)に対し、差止請求及び損害賠償請求を行い、原審では、被控訴人の請求のうち、標章の使用差止や、損害賠償のうち1234万9069円及び内金1088万1892円に対する平成25年5月25日から、内金146万7177円に対する平成26年11月1日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却しました。控訴人はこれを不服として控訴しました。尚、控訴人(被告)は「§湯~トピアかんなみ\IZU KANNAMI SPA」について、「飲食物の提供、温泉施設の提供」を指定役務とする商標権を持っています。

控訴審の争点は、原告商標と被告標章の類否についてです。
知財高裁は、「原告商標の外観は、『ラドン健康パレス』の文字及び『湯~とぴあ』の文字を上下二段にそれぞれ横書きして成り、上段の『ラドン健康パレス』の文字は、細いゴシック調で色は青色であり、下段の『湯~とぴあ』の文字は、丸みを帯びた太いフォントのポップ体で、やや立体感を持たせた黄色の文字を青地でふち取って表されており、上段の文字の約7、8倍大きく、また、『湯~とぴあ』の『湯』の文字が『とぴあ』の文字よりも大きく強調されている。原告商標は、上記の上下二段の文字から、全体として、『ラドンケンコウパレス ユートピア』との称呼を生じる。そして、上段の『ラドン健康パレス』の部分は、元素の一つである『ラドン』、身体に悪いところがなくすこやかなことを意味する『健康』及び『宮殿、御殿。娯楽又は公益のための建築物』の意味を持つ『パレス』という一般的な単語を繋げたものであり...それらの単語が持つ個々の意味合いを併せた『ラドンを用いた健康によい温泉施設』という程度の一般名称的な観念が生じるものということができる。また、原告商標の下段の『湯~とぴあ』の部分は、『理想郷、理想社会』などを意味する英単語『utopia』(ユートピア)の『ユ』を『湯』に置き換えた造語であって、『理想的で快適な入浴施設』という程度の観念が生じるということができる。そうすると、この上段部分と下段部分の意味上のつながりから、原告商標を全体として見ると、『ラドンを用いた健康によい温泉施設であって、理想的で快適な入浴施設』という程度の観念が生じるということができる。...原告商標は、その外観上、上段の『ラドン健康パレス』の部分と下段の『湯~とぴあ』の部分とから成る結合商標と認められるところ、その文字の色及び大きさの違い、その配置態様によって、一見して明瞭に区分して認識されるものであるから、これらの二つの部分は、分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分に結合しているものということはできない。そして、下段の『湯~とぴあ』の部分は、前記アのとおり、「ユートピア」の「ユ」を「湯」に置き換えた造語であり、しかも、その文字が上段の文字よりもはるかに大きく目立つ色彩、態様で示されている。しかしながら...認定事実によれば、『ゆうとぴあ』(「ユートピア」)と称呼される語は、『湯』の漢字を含む場合であると、『湯』の漢字を含まない場合であると、いずれの場合であっても、入浴施設の提供という役務においては、全国的に広く使用されているということができる。したがって、原告商標のうち、下段の『湯~とぴあ』の部分は、入浴施設の提供という指定役務との関係では、自他役務の識別力が弱いというべきであるから、取引者又は需要者をして役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるということはできず、この『湯~とぴあ』の部分だけを抽出して、被告標章と比較して類否を判断することは相当ではない。...原告商標の上段部分の『ラドン健康パレス』及び下段部分の『湯~とぴあ』の各部分は、指定役務との関係では、いずれも出所識別力が弱いものであって、両者が結合することによってはじめて、『ラドンを用いた健康によい温泉施設であって、理想的で快適な入浴施設』であることが明確になるものであるから、原告商標における『ラドン健康パレス』と『湯~とぴあ』は不可分一体として理解されるべきものである。したがって、原告商標については、上段部分の『ラドン健康パレス』と下段部分の『湯~とぴあ』の部分を分離観察せずに、全体として一体的に観察して、被告標章との類否を判断するのが相当である。被告標章の外観は、上段に『湯~トピアかんなみ』の文字を横書きし、下段に、3枚の葉を伴う1輪の花の図形と、その図形の左右にそれぞれ『IZU KANNAMI』と『SPA』の極めて小さな欧文字を横書きに配して成る。上段の文字は、いずれも毛筆様のもので書いたように濃淡や太さに変化を持たせたデザインの字体(なお、『湯』の字の中の『日』の部分は、その中央の『-』が赤い丸に置き換えられて表現されている。)となっているが、このうち『湯~トピア』の部分は黒色(上記赤い丸を除く。以下同じ。)で、『かんなみ』の部分は緑色でそれぞれ表されており、『湯~トピア』の『湯』の文字が『~トピア』の文字よりも大きく強調されており、また、下段の花の図形は、上段の一文字と同程度かそれより小さく描かれ、下段の欧文字は、上段の文字に比して極めて小さいフォントで、黒色で記されている。...被告標章の上段部分のうち、『湯~トピア』及び『かんなみ』の各部分は、同様の字体で、1行でまとまりよく記載されている上に、いずれも出所識別力が弱いものであって、両者が結合することによってはじめて、『函南町にある、理想的で快適な入浴施設』であることが明確になるものであるから、被告標章における『湯~トピア』と『かんなみ』は不可分一体として理解されるべきものである。...原告商標と、被告標章のうち強く支配的な印象を与える部分である『湯~トピアかんなみ』とを対比すると、原告商標からは、『ラドンケンコウパレスユートピア』の称呼及び『ラドンを用いた健康によい温泉施設であって、理想的で快適な入浴施設』という程度の観念が生じ、被告標章の『湯~トピアかんなみ』の部分からは、『ユートピアカンナミ』の称呼及び『函南町にある、理想的で快適な入浴施設』という程度の観念が生じることが認められるから、原告商標と、被告標章のうち強く支配的な印象を与える部分とは、称呼及び観念を異にするものであり、また、外観においても著しく異なるものであることが明らかである。」として両商標は類似しないから、被告標章の使用は商標権の侵害にあたらないとの判断をしました。

養命青汁事件 知財高裁平成27年10月29日判決

原告は、指定商品を第5類「野菜を主原料とする液状・粉状・顆粒状・粒状・錠剤状・ゼリー状・クリーム状・ペースト状・カプセル状の加工食品、青汁を主原料とする液状・粉状・顆粒状・粒状・錠剤状・ゼリー状・クリーム状・ペースト状・カプセル状の加工食品、青汁及び野菜を主原料とする液状・粉状・顆粒状・粒状・錠剤状・ゼリー状・クリーム状・ペースト状・カプセル状の加工食品、サプリメント、食餌療法用飲料、食餌療法用食品、乳幼児用飲料、乳幼児用食品」とする登録第5649775号「養命青汁(標準文字)」(以下、「本件商標」とする。)の商標権者です。
被告は、「養命酒」を引用商標として本件商標に対し、無効審判を請求しました。特許庁は、本件審判請求を無効2014-890033号事件として審理し、その結果4条1項15号に該当するとして「登録第5649775号の登録を無効とする。」との審決をしました。
原告は審決を不服として本件審決取消訴訟を提起しました。本件訴訟の争点は、【1】引用商標及び本件商標から「養命」部分を分離抽出した認定の誤り、【2】混同を生ずるおそれの判断の誤りの2点です。
争点【1】について知財高裁は、「原告は、引用商標が、一種独特の筆文字の同じ書体、同じ大きさ、等間隔で書された漢字3文字をもって、外観上、まとまりよく一体的に表されているものであるから、『養命』部分を抽出することはできない旨主張する。しかし、引用商標は、『養命酒』を漢字で横書きにしたややデザイン化された毛筆体から成るもので、一語一語は同じ大きさの同一書体であり、意匠的な図案として、3文字の配列の中から一部を取り出すことができないような特殊なものではない。そもそも、引用商標は、被告商品の名称として永年使用された結果、高い著名性を獲得したものであり(この点は当事者間にも争いがない。)、そのデザインや書体の独自性に着目する原告の主張は失当である。」として原告の主張を退けました。
争点【2】について知財高裁は、「原告は、薬事法の点から、本件商標の指定商品と被告商品は、同一ドラッグストアで販売されるとしても、分離した陳列状態(異なる陳列棚に陳列)において需要者が接するから、密接な関係があるとはいえないと主張する。しかし、被告商品は、薬事法の適用があるものではあるが、第2類医薬品であり、一般家庭用医薬品として、医師による処方箋や、薬剤師による説明を要せずに購入できるものであり、ドラッグストアなどにおいて、他の日用品や食品、飲料等と共に販売されており、消費者が自らの選択によって手にとって直接購入することができるのであるから、陳列棚が異なるとしても、出所の混同の生ずるおそれがあるというべきである。また、原告は、被告商品は、『第一類医薬品以外で、副作用等によって、日常生活に支障をきたすほどの健康被害が生じるおそれがある医薬品』である第2類医薬品に当たり、健康に影響を及ぼす商品であるため、需要者は、特に慎重に商品を吟味して購入するものであると主張する。しかし、前記のとおり、被告商品は処方箋や薬剤師による説明なしに、一般消費者が手にとって購入できるものであり、ドラッグストアなどにおいて、他の日用品や食品、飲料等と共に販売されるものであるから、このような商品を購入する需要者である一般消費者に要求される注意力の程度がさほど高いということはできない。原告は、被告商品は、アルコールを含む商品であり、アルコールを受け付ける体質の成人に限る特殊性を有する商品であり、商品を購入するに当たって、購入者が、アルコールを含む被告商品とアルコール全く含まない本件商標の指定商品とを間違えるおそれは皆無というべきであると主張する。しかし、本件で問題とするのは、出所の混同のおそれであって、商品自体を誤認して購入するか否かを問題としているものではなく、失当である。...本件商標は、自他識別性を有し、最も注目される『養命』部分が商標の冒頭に付されており、この『養命』とは、『命を養う』との観念を生じ、『養生』や『健康』を連想させるものであるから、このような連想と結び付くような普通名称等が末尾に付加された場合には、『養命酒』の姉妹品であるなどとして、被告あるいは被告と緊密な関係にあるグループ会社の出所によるものであると誤認するおそれが高いといえる。」として、原告の請求を棄却しました。

養命茶事件 知財高裁平成27年10月29日判決

原告は、指定商品を第30類「茶飲料、粉末茶、植物を主原料とする混合茶、穀物を主原料とする混合茶、植物と穀物を主原料とする混合茶、その他の混合茶、その他の茶、茶を加味した菓子、茶を加味したパン、茶を主原料とするブロック状・顆粒状・粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状又はゼリー状の加工食品、茶エキスを主原料とするブロック状・顆粒状・粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状又はゼリー状の加工食品、穀物を主原料とするブロック状・顆粒状・粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状又はゼリー状の加工食品、穀物エキスを主原料とするブロック状・顆粒状・粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状又はゼリー状の加工食品、茶を加味した穀物の加工品」とする登録第5643664号「養命茶(標準文字)」(以下、「本件商標」とする。)の商標権者です。
被告は、「養命酒」を引用商標として本件商標に対し、無効審判を請求しました。特許庁は、本件審判請求を無効2014-890032号事件として審理し、その結果4条1項15号に該当するとして「登録第5643664号の登録を無効とする。」との審決をしました。
原告は審決を不服として本件審決取消訴訟を提起しました。本件訴訟の争点は、【1】引用商標及び本件商標から「養命」部分を分離抽出した認定の誤り、【2】混同を生ずるおそれの判断の誤りの2点です。

争点【1】について知財高裁は、「原告は、引用商標が、一種独特の筆文字の同じ書体、同じ大きさ、等間隔で書された漢字3文字をもって、外観上、まとまりよく一体的に表されているものであるから、『養命』部分を抽出することはできない旨主張する。しかし、引用商標は、『養命酒』を漢字で横書きにしたややデザイン化された毛筆体から成るもので、一語一語は同じ大きさの同一書体であり、意匠的な図案として、3文字の配列の中から一部を取り出すことができないような特殊なものではない。そもそも、引用商標は、被告商品の名称として永年使用された結果、高い著名性を獲得したものであり(この点は当事者間にも争いがない。)、そのデザインや書体の独自性に着目する原告の主張は失当である。」として原告の主張は失当であるとしました。
争点【2】について知財高裁は、「原告は、薬事法の点から、本件商標の指定商品と被告商品は、同一ドラッグストアで販売されるとしても、分離した陳列状態(異なる陳列棚に陳列)において需要者が接するから、密接な関係があるとはいえないと主張する。しかし、被告商品は、薬事法の適用があるものではあるが、第2類医薬品であり、一般家庭用医薬品として、医師による処方箋や、薬剤師による説明を要せずに購入できるものであり、ドラッグストアなどにおいて、他の日用品や食品、飲料等と共に販売されており、消費者が自らの選択によって手にとって直接購入することができるのであるから、陳列棚が異なるとしても、出所の混同の生ずるおそれがあるというべきである。また、原告は、被告商品は、「第一類医薬品以外で、副作用等によって、日常生活に支障をきたすほどの健康被害が生じるおそれがある医薬品」である第2類医薬品に当たり、健康に影響を及ぼす商品であるため、需要者は、特に慎重に商品を吟味して購入するものであると主張する。しかし、前記のとおり、被告商品は処方箋や薬剤師による説明なしに、一般消費者が手にとって購入できるものであり、ドラッグストアなどにおいて、他の日用品や食品、飲料等と共に販売されるものであるから、このような商品を購入する需要者である一般消費者に要求される注意力の程度がさほど高いということはできない。原告は、被告商品は、アルコールを含む商品であり、アルコールを受け付ける体質の成人に限る特殊性を有する商品であり、商品を購入するに当たって、購入者が、アルコールを含む被告商品とアルコール全く含まない本件商標の指定商品とを間違えるおそれは皆無というべきであると主張する。しかし、本件で問題とするのは、出所の混同のおそれであって、商品自体を誤認して購入するか否かを問題としているものではなく、失当である。」として取消理由2についても理由がないとしました。

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