商標登録の異議申立制度

商標登録の異議申立制度商標登録出願の審査は特許庁の審査官が行います。しかし、審査官も人間です。商標の過誤登録がなされる場合がゼロということはありえません。

そこで異議申立制度無効審判があります。

異議申立制度とは、商標掲載公報の発行の日から二月以内に限り一定要件下で、商標登録について異議を申し立てることができる制度です。

この異議申立制度は何人も請求することができ、商標登録に対する公衆審査的な側面を持ち、商標登録に対する信頼を高めるという役割を果たしており、異議申立理由は公益的事由が主なものとなっています。
これに対して、無効審判は利害関係人にのみ認められており、私益的事由や、商標登録後の後発的な無効理由(条約違反、商標権者が商標権を居有することができない者になった場合等)が含まれております。
一般的には異議申立を行い、それでも駄目なら無効審判ということになりますが、異議申立制度は、原則として書面審理の形をとり、また参加については商標権者側にしか認められておりませんので、明らかな利害関係がある場合は口頭審理による当事者対立構造をとる無効審判で一気に決着を着けたいと考えられる方もいらっしゃるようです。異議申立にするか、無効審判を請求するか迷っていられるようであれば、異議申立の請求期間は非常に短期間な為、専門家への迅速な相談が必要と言えるでしょう。

商標登録無効審判

商標登録の無効審判とは、本来拒絶されるべき商標登録出願が過誤登録により登録された場合や、後発的に無効事由を有することになった商標を無効にすることについて審判の請求を認めるものです。
以前に解説をした異議申立は何人も請求可能ですが、無効審判については民事訴訟法上の「利益なければ訴権なし」の原則に則り、利害関係人にのみ請求が認められます。

無効理由については、46条第1項各号に限定列挙されており、異議申立理由とほぼ同様となっています。

無効審判の請求は、原則として商標権の設定登録後であればいつでも可能ですが、47条に規定する除斥期間の適用があるものについては、商標権の設定登録の日から5年となっておりますので注意が必要です。

不使用取消審判(50条)

不使用取消審判とは、継続して3年以上商標権者等が指定商品又は指定役務に対して登録商標の使用をしていない場合に、商標登録の取消を請求できるとする審判です。

商標法では、商標は使用により信用が化体するとされているので、一定期間使用をしていない商標は信用が化体しないか、又は一度化体した信用も消滅するので保護すべきではないとして、審判により取消を請求できるとしています。

この審判は何人も請求することができ、また指定商品等が複数ある場合は、指定商品ごとに請求することができますが、審判請求をした指定商品のうちの一つでも使用事実が証明された場合は、他の指定商品についても取消をま免れることができるため、本当に取消したい指定商品等のみを請求すべきであるとされています。また使用の事実については、登録商標と同一の商標のほか、社会通念上同一の商標にしても使用と認められ、商標権者のほか、専用使用権者、通常使用権者の使用でも取消しをまぬかれる事ができる。

また、商標権者がライセンス交渉により、相手方が不使用取消審判の請求をすることを察知して、いわゆる駆け込み使用をする可能性があるが、審判請求人が一定要件下で駆け込み使用を証明したときは、商標は取消される。

不正使用取消審判(51条)

不正使用取消審判とは、いわゆる禁止権の範囲で商標権者が故意に商標の使用をして出所混同を生じさせた場合に商標を取消す審判です。故意にとあるので過失で禁止権の範囲で商標を使用してもこの審判の対象にはなりません。

また、無効審判は指定商品・指定役務毎に請求しますが、この審判は請求が認容されれば全ての指定商品が取消になります。全ての指定商品が取消されることになっているのは、商標権者の不当使用に対する制裁規定としての性格を有する審判だからです。

なお、本審判が認容された場合は、商標権はその後に消滅することになりますので、差止請求権に対しては有効な対抗手段ですが、消滅前の侵害行為に対しては損害賠償請求を行使される可能性があります。

また本審判には除斥期間があり、商標の不正使用の事実がなくなった日から5年を経過した後は請求することができませんので、審判請求の際には留意する必要があります。

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