商標権侵害に対する救済 - 記事一覧

差止請求(商標法36条)

差止請求(商標法36条)

 差止請求権とは、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる権利です(36条1項)。
 差止請求権を行使できるのは、商標権者と専用使用権者に限られます。
 36条2項には、侵害組成物の廃棄請求、侵害の行為に供した設備の除却請求、その他の他の侵害の予防に必要な行為が請求できることが定められていますが、これは36条1項のいずれかとともに請求する必要があります。
 差止請求権の行使には、故意や過失は要件とされていません。
 36条2項の廃棄請求については、登録商標に類似する商標が商品タグや、シールなどのように商品から分離できる形で付されている場合は、その部分を取り外せば良いと解されていて、商品から商標部分が分離不可能な形で付されていない限りは、商品そのものを廃棄させるのは難しいとされています。

損害賠償請求

 故意又は過失によって商標権、専用使用権を侵害された者は、侵害者に対し、損害賠償を請求することができます(民法709条)。
 民法709条の損害賠償請求をする際の損害額の立証責任は請求者側にありますが、商標権侵害については、損害額の立証が困難な場合が多いことから、損害額について商標法で算定規定を設けています(商標法38条)。
 商標法38条1項では、簡単にいうと、損害額を「侵害者の譲渡等数量」×「権利者の単位あたりの利益」とする規定です。ただし、計算した損害額が商標権者又は専用使用権者の使用能力を超えていたり、譲渡数量の全部又は一部を商標権者又は専用使用権者が販売することができないとする事情があったりする場合は、これらが減額要素として考慮されます。
 商標法38条2項は、侵害者がその侵害の行為により利益を受けている場合は、その利益の額を商標権者等が受けた損害額と推定する規定です。
 商標法38条3項は、商標権のライセンス料相当額を商標権者等が受けた損害額と推定する規定です。この3項の規定は、1項又は2項の請求が認められなかった場合の予備的な請求として利用されることがあります。
 また損害賠償の請求に必要な故意又は過失の要件についても、過失の推定規定を設けています(商標法39条)。

関税法による水際措置

 輸入差止申立制度について
 商標権者は、自己の商標権を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合に、税関長に対し、当該貨物の輸入を差し止め、認定手続を執るべきことを申し立てることができます(関税法第69条の13、 同法施行令第62条の17)。
 輸入差止申立をするには、以下に記載する5つの要件を満たす必要があります。

1.権利者(知的財産権を有する者及び不正競争差止請求権者)であること
2.権利の内容に根拠があること(不正競争防止法に係る申立ての場合は、経済産業大臣の意見書又は認定書が必要。)
3.侵害の事実があること
4.侵害の事実を確認できること
5.税関で識別できること
 
 上記の5つの要件を満たした場合、最長4年間の申立ができます。
 輸入差止申立の一般的な手続きについては、税関のホームページに案内がございますので、興味がある方は、以下のリンクからご確認下さい。

http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/b_003.htm

 なお、この手続は、いずれか一か所の税関に対して行えば、他の税関においても対応してもらえ、また税関への差止申立て自体に手数料等は発生しません。(弊所が代行する場合は、別途弊所費用が発生します)。

刑事罰

刑事罰

 商標法78条では、「商標権又は専用使用権を侵害した者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」と規定されていますので、商標権を侵害した場合は、刑事罰の適用を受ける可能性があります。
 37条又は67条に規定する侵害とみなす行為をおこなった者は、「五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」とされています(商標法78条の2)。
 なお、法人については、その業務に関して侵害行為、又は侵害とみなす行為を行った場合は、行為者本人を罰するだけでなく、業務主体である法人に対しても罰金刑が課されます(82条)。

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