本件は、東京地方裁判所平成25年(ワ)第12646号「湯~トピアかんなみ」事件の控訴審です。原審では、原告商標の「湯~とぴあ」の部分と被告標章の「湯~トピア」の部分がそれぞれ要部であるとされ、被告標章は、原告商標に類似すると判断され、被告標章の使用差止と損害賠償請求が認められました。被告側は、これを不服として控訴しました。
知財高裁は、入浴施設の提供という指定役務の分野において「ユウトピア」の称呼を含む施設が国内において相当数あることから、原告商標の「湯~とぴあ」の部分と被告標章の「湯~トピア」の部分の自他役務識別力は弱いので、原告商標は「ラドン健康パレス\湯~とぴあ」、被告標章は「§湯~トピアかんなみ\IZU KANNAMI SPA」のうち、「湯~トピアかんなみ」の部分で類否判断するべきであるとしました。
知財高裁は、「原告商標と、被告標章のうち強く支配的な印象を与える部分である『湯~トピアかんなみ』とを対比すると、原告商標からは、『ラドンケンコウパレスユートピア』の称呼及び『ラドンを用いた健康によい温泉施設であって、理想的で快適な入浴施設」という程度の観念が生じ、被告標章の「湯~トピアかんなみ』の部分からは、『ユートピアカンナミ』の称呼及び『函南町にある、理想的で快適な入浴施設』という程度の観念が生じることが認められるから、原告商標と、被告標章のうち強く支配的な印象を与える部分とは、称呼及び観念を異にするものであり、また、外観においても著しく異なるものであることが明らかである。その上、前記(4)のとおり、全国の入浴施設については、同一の経営主体が各地において同様の名称を用いて複数の施設を運営することがあり、原告商標及び被告標章にはいずれも『ユートピア』と称呼される『湯~とぴあ』又は『湯~トピア』の文字部分が含まれていることを考慮しても、原告商標と被告標章との外観上の相違点、原告施設及び被告施設以外で、『湯ーとぴあ』又はこれに類する名称を用いた施設が全国に相当数存在すること、被告施設の所在地、施設の性格及び利用者の層などの事情をも考慮すれば、原告商標と被告標章とが、入浴施設の提供という同一の役務に使用されたとしても、取引者及び需要者において、その役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認めることはできない。」として、原告商標と被告標章は非類似であるとしました。