巻くだけダイエット事件 知財高裁平成27年1月29日判決

被控訴人Yは被控訴人T社から「折り畳んだバンド」を付録にした「お腹が凹む! 巻くだけダイエット」という題名の書籍を出版しました。控訴人Xは、Yの行為は、控訴人Xの著名な商品等表示 である「巻くだけダイエット」を冒用するものであるとして不正競争防止法2条1項2号で差止請求等を行いました。
知財高裁は、「『巻くだけダイエット』との表示は、数あるダイエット手法の中において、控訴人が提唱しているダイエットの方法を表示したもの、すなわち、控訴人の業務の内容を需要者に示しているものにすぎず、『巻くだ けダイエット』が控訴人の業務を表示するもの、すなわち控訴人の業務の出所を指し示すものとして使用されていたとはいえないというべきである。しかも、『巻くだけダイエット』が、控訴人の業務を表示するものとして、需要者の間で著名であったことも認められない。」としました。

バター飴缶事件 札幌地裁昭和51年12月8日判決

債権者は、ステンレス製牛乳缶型容器にに債権者製造のバター飴を入れ、ラベルおよび包装箱を使用して「北海道名産バター飴」と記したものを商品として、昭和四七年四月一一日以降販売しています。債務者の会社は、北海道地方で菓子類の製造、販売を業とすることを目的として昭和四八年六月一日設立され、「北海道銘菓バター飴」と記したものを商品として販売していたので、債権者は販売の差止を請求しました。

札幌地裁は、「債権者の本件商品は、殊にバター飴の容器にステンレス製牛乳缶型を使用していることにおいて、少なくとも北海道地方では広く認識されていたもの即ち周知性を有する商品表示を有していたものということができる。...債権者、債務者の両商品とも、その商品のイメージを構成する主要な部分は、バター飴の容器としてステンレス製牛乳缶型容器を使用していることであり、債権者の本件容器の胴の部分に牛と北海道の地図のマークを組合せた打出しがあることは細部の違いに過ぎず、全体的にみれば、全く同一と考えてよいのである。...本件容器、ラベル、包装箱を含めて全体として、債権者、債務者の商品表示を比較すると、この間に商品表示の類似が存し、その出所につき何らかの関係が存するのではないかと思わしめる混同の虞を生じたものというのが相当である。」との判断を示しました。

断熱ドレインホース事件 大阪地裁平成8年11月28日判決

原告は、ドレンホースを開発し、これを「結露防止用SCS断熱ドレンホース(エアコン用)」の商品名で製造販売している者です。 被告は、訴外T社が製造したドレンホースを、「断熱ドレンホースソフトタイプ」の商品名で販売しています。 原告は、被告商品は原告商品の形態を模倣したものであり、原告はこのような被告商品の販売によって営業上の利益を侵害されたと主張して、不正競争防止法2条1項3号、4条に基づき損害賠償請求を行いました。
大阪地裁は、「原告は、被告商品は原告商品の新規性ある形態をすべて備えているから、原告商品の形態を模倣したものであると主張し、その原告商品の新規性ある形態として、【1】長尺ホースである、【2】外皮部分には内部に独立した伸縮自在のパッド状筒が内蔵されている、【3】ホース芯がプラスチック製である、との三点を挙げる。そこで、まず、これらの点が不正競争防止法二条一項三号にいう『商品の形態』に当たるか否かについて検討するに、他人が商品化のために資金、労力を投下して開発した商品について、その機能面ではなく形態面における模倣をもって不正競争行為とする同号の立法趣旨及び『形態』という用語の通常の意味に照らせば、同号にいう『商品の形態』とは、商品の形状、模様、色彩、光沢等外観上認識することができるものをいうと解すべきである。したがって、商品の機能、性能を実現するための構造は、それが外観に顕れる場合には右にいう『商品の形態』になりうるが、外観に顕れない内部構造にとどまる限りは『商品の形態』に当たらないといわなければならない(このような商品の機能、性能を実現するための内部構造は、要件を具備することにより特許法、実用新案法等による保護を受けることが可能であるから、権利保護に格別欠けるところはない。)。」との判断を示しました。

マクドナルド事件 大阪地決平成5年10月15日

債権者はハンバーガー・レストランチェーンとして著名な米国法人マクドナルド・コーポレーションが資本の五〇パーセントを出資し、残りの五〇パーセントを日本法人が出資して設立された合弁会社であり、米国マクドナルド社とのライセンス契約に基づき、ハンバーガー類の販売を業としている。債権者及び米国マクドナルド社の略称である「McDonald's」又は「マクドナルド」は、債権者の営業を示す表示として我が国において著名であり、また、債権者が商品の容器及び包装に使用する「M」の文字の下段に「McDonald's」の文字を横一列に配した標章、(以下「債権者商品ロゴマーク」という。)も、債権者の商品及び営業を示す表示として我が国において著名です。
債務者は、パチンコホール及びマージャンクラブの経営等を業とする株式会社であり、債権者の商品ロゴマークと類似するものを使用しているので、債権者はその差止を請求しました。
大阪地裁は、「債権者ロゴマークは、【1】二個の細長いアーチ型を左側アーチの右側部と右側アーチの左側部が重なるように組み合わせたM字形で、【2】何処にも直線又は角の部分がなく、【3】アーチの幅がMの左、右、中央各下端から山型の頂部に向けて順次滑らかに細くなり、頂部が細い円弧状になっており、【4】M字の中央下端が左右下端部よりも僅かに上方にある、という顕著な特徴を有し、他にこれらの特徴を全て備えたMが存在することは本件全疎明によっても認めることができないのであるから、たとえ、アルファベットのM一文字という簡単な標章であっても、字体に特殊な技巧が加えられているというべきであり、このような標章が債権者により長期間継続して使用、広告宣伝された結果、現在では、債権者の営業を表示するものとしての自他識別力を備えていると考えるのが相当である。」との判断を示しました。

キシリトールガム比較広告事件 知財高裁平成18年10月18日事件

控訴人と被控訴人は共にガムを含むお菓子の製造販売業を行っています。被控訴人は広告で被控訴人の製品は控訴人の製品の約5倍の歯の再石灰化効果がある旨の表示を行っていました。控訴人は被控訴人の行為は、不正競争防止法2条1項13号所定の品質等誤認表示及び同項14号所定の虚偽事実の陳述流布に当たるとして、本件訴訟を起こしました。
知財高裁は「本件比較広告の本件比較表示や【1】の棒グラフは、被控訴人の製品であるポスカムが、控訴人の製品であるキシリトール+2の約5倍の再石灰化効果を有することを表示するものである。しかしながら、その根拠である 実験が合理性を欠くものといわざるを得ないことは、上記のとおりであり、他にポスカムの再石灰化効果がキシリトール+2の約5倍であるということの根拠は何ら主張されていないから、ポスカムが、キシリトール+2の約5倍の再石灰化効果を有するというのは、客観的事実に沿わない虚偽の事実というべきであり、被控訴人が 上記【1】の本件比較表示や【2】の棒グラフを含む本件比較広告を実施した行為は、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布する行為として、不正競争防止法2条1項14号に該当するものである。また、本件比較広告がポスカムに関するものであることは明らかであるところ、上記のとおり、【1】の本件比較表示や【2】の棒グラフは、ポスカムがキシリトール+2の約5倍の再石灰化効果を有することを表示するものであり、かつ、それが客観的事実に沿わないのであるから、本件比較広告のこれらの部分は、ポスカムの品質を誤認させるものというべく、したがって、被控訴人が、これらの部分を含む本件比較広告を実施した行為は、同項13号に該当するものである。」との判断を示しました。

特許権侵害通告事件 東京高裁平成14年8月29日判決

本件訴訟の控訴人は、磁気信号記録用金属粉末の製造・販売等を事業目的とする株式会社であり、被控訴人は、ドイツに本拠を置く世界有数の化学企業です。被控訴人は、平成6年3月17日付け書簡(以下「本件書簡」という。)によって、控訴人の取引先に対し、控訴人の製造・販売する磁気信号記録用金属粉末(以下「控訴人製品」という。)が被控訴人の有する特許権を侵害すると考える旨の通知を行いました。控訴人は、被控訴人の行為は競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為(不正競争防止法2条1項13号)に当たるとして、損害賠償請求等を行いました。
東京高裁は、「特許権者が競業者の取引先に対して行う特許権侵害訴訟の提起は、当該取引先との関係では、特許権者が、事実的、法律的根拠を欠くことを知りながら、又は、特許権者として、特許権侵害訴訟を提起するために通常必要とされている事実調査及び法律的検討をすれば、事実的、法律的根拠を欠くことを容易に知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が特許権侵害訴訟という裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限って違法となるものと解すべきである。そして、特許権者が競業者の取引先に対する訴え提起の前提としてなす警告も、それ自体が競業者の営業上の信用を害する行為でもあることからすれば、訴え提起と同様に、特許権者が、事実的、法律的根拠を欠くことを知りながら、又は、特許権者として、特許権侵害訴訟を提起するために通常必要とされている事実調査及び法律的検討をすれば、事実的、法律的根拠を欠くことを容易に知り得たといえるのにあえて警告をなした場合には、競業者の営業上の信用を害する虚偽事実の告知又は流布として違法となると解すべきであるものの、そうでない場合には、このような警告行為は、特許権者による特許権等の正当な権利行使の一環としてなされたものというべきであり、正当行為として、違法性を阻却されるものと解すべきである。」という判断基準を示しました。
その上で、本件においては「本件書簡の送付行為は、被控訴人の本件特許の権利行使の一環としてなされたものであり、その結果として、控訴人の営業上の信用を害するに至ったとはいえ、正当行為として、その違法性が阻却されるものである。」として本件控訴を棄却しました。

5年間ノーワックス事件 知財高裁平成17年8月10日判決

控訴人(被告)と被控訴人(原告)はともに、自動車のコーティング剤の製造、販売等を行っています。控訴人は、控訴人の製品の広告や取引書類等に「施工後5年間、新車時の塗装の輝きが維持される」との表示をしているのは、被告商品の品質及び内容を誤認させるものであり、控訴人が本件各表示を広告等に使用する行為は不正競争防止法2条1項13号所定の不正競争行為に該当すると主張して、控訴人に対し、本件各表示の記載の差止め、ウェブページからの削除、本件各表示を記載したカタログの廃棄、被告商品の譲渡等の差止め、謝罪広告の掲載及び損害賠償の支払を求めました。控訴人は原判決を不服として控訴しました。
知財高裁は、「実際に被告商品を施工した5年経過後の複数の車両の平均光沢度が、93.7%、96.1%という高い数値を維持していることを示す測定結果もあることなどに照らすと、被控訴人が援用する前記の各耐候性試験の結果に依拠して、被告商品には新車時の塗装面の光沢度を5年間持続する効果がないとまで的確に認定することはできないといわざるを得ない。そして、本件各表示における『新車の輝き』が持続しているかどうかということ自体が、多分に見る者の主観によるところが大きく、ある程度の幅を持つものであることをも考え併せると、本件全証拠をもってしても、未だ本件各表示における『新車時の塗装の輝きが5年間維持される』との表示が虚偽であり、その表示が需要者等に被告商品の品質及び内容を誤認させるものであると認めることはできない。」との判断を示しました。

男性用かつら顧客名簿事件 大阪地裁平成8年4月16日判決

原告は、男性用かつらの販売を業とする株式会社です。被告は、平成5年某日まで、原告の従業員として稼働していましたが、現在は原告を退職して、大阪市中央区において「○○」の屋号で男性用かつらの製造、販売を行っています。原告は、各営業店舗において新規顧客の顧客名簿を作成し、顧客からは見えない店のカウンター内で保管していました。被告は、原告の心斎橋店にある原告顧客名簿をコピーし、これを利用して原告の顧客に電話をかけるなどして営業活動をしていました。
大阪地裁は、「一般に男性用かつらの販売業においては、理容業等の業種に比ベて顧客の獲得が困難であり、多額の宣伝広告費用を投下して新聞、テレビ等の各種宣伝媒体を利用せざるを得ない実情にあり、原告顧客名簿も、原告において長年にわたり継続して多額の宣伝広告費用を支出してようやく獲得した顧客が多人数記載され、各顧客の頭髪の状況等も記載されているものであり、これらの顧客からは将来にわたって定期的な調髪等の外、かつらの買替えの需要も見込まれることに照らせば、原告顧客名簿は、原告が同業他社と競争していく上で、多大の財産的価値を有する有用な営業上の情報であることが明らかである。そして、原告は、原告顧客名簿の表紙にマル秘の印を押捺し、これを原告心斎橋店のカウンター内側の顧客からは見えない場所に保管していたところ、右のような措置は、顧客名簿、それも前記のような男性用かつら販売業における顧客名簿というそれ自体の性質、及び証拠(証人丁、原告代表者)により認められる原告の事業規模、従業員数等(従業員は、本店及び三支店合わせて全部で七名。心斎橋店は店長一人)に鑑み、原告顧客名簿に接する者に対しこれが営業秘密であると認識させるのに十分なものというべきであるから、原告顧客名簿は、秘密として管理されていたということができる。更に、原告顧客名簿に記載された情報の性質、内容からして、原告以外の者に公然と知られていない情報であることは明らかである。したがって、原告顧客名簿は、不正競争防止法二条四項所定の『営業秘密』に該当するというべきである。」と判断しました。

二重帳簿事件 東京地裁平成11年7月19日判決

原告は、主として中国からの食品、食品原材料の輸入、販売等を業とする会社です。被告1は、もと原告の食品部長でした。被告1は、原告を退社後、被告2に入社しました。
原告は、被告は原告の営業秘密である「油炸スイートポテトについて、真実の原価、利益率は秘密にしながら、取引相手にはより低い利益率を示し、企業内で極秘に利益を獲得する営業システム」を使用しており、この行為は不正競争行為に該当するとして、損害賠償請求等を行いました。
東京地裁は、「原告は、その保護の対象とする秘密情報の内容について、『油炸スイートポテトについて、真実の原価、利益率は秘密にしながら、取引相手にはより低い利益率を示し、企業内で極秘に利益を獲得する営業システム』であると主張する。不正競争防止法二条一項所定の保護の対象となる「営業秘密」とは、営業上秘密とされた情報のすべてを指すのではなく、営業上の秘密として管理された情報の中で、事業活動に有用な技術上又は営業上の情報のみを指すことは規定上明らかである(同法同条四項)が、右の有用性の有無については、社会通念に照らして判断すべきである。そこで、この観点から検討すると、原告が保護の対象とする内容は、必ずしも明らかではないが、その主張によれば、極秘に二重に帳簿を作成しておいて、営業に活用するという抽象的な営業システムそれ自体のようであり、そうだとすると、このような内容は、社会通念上営業秘密としての保護に値する有用な情報と認めることはできない。また、真実の利益率より低い利益率を取引相手に示して取引を行うこと自体は、正当な取引手段であるか否かはさておき、特段、原告独自の経営方法と認めることもできない。以上のとおり、原告主張に係る事項は、営業秘密として保護されるような有用性を有するとはいえないし、非公知であるともいうことができない。」と判断しました。

三菱ホーム事件 東京地裁平成14年7月18日判決

本件の原告らはいずれも旧三菱財閥に由来するいわゆる「三菱グループ」に属する会社であって、その社名中に「三菱」の名称を含んでいて、「三菱」の名称及びいわゆる「スリーダイヤマーク」を使用しています。
被告は、熊本県熊本市所在の株式会社で「中九州ライトハウス株式会社」から「株式会社三菱ホーム」に商号を変更し、かかる商号の下で、不動産事業、賃貸事業及び建築事業を営んでいます。
被告は、その開設するホームページにおいて、被告会社の名称である「株式会社三菱ホーム」等を表示し、不動産部では九州全般の土地建物の仲介・買い取り・販売を、賃貸部ではマンション・アパート・テナント・一戸建ての斡旋や管理を、建築部では注文住宅・アパート・テナントのリフォーム工事をそれぞれ行っていることなどを紹介してます。
原告は、被告の行為は不正競争防止法2条1項2号に該当するとして差止及損害賠償を請求しました。
東京地裁は、「三菱グループには、多方面にわたり事業を展開する数多くの企業があり、各企業は全国各地に本店、支店を有する。また、同グループは、長年にわたって多大の広告宣伝費を費やし、パンフレット等に三菱標章を表示しているほか、『三菱』の名称及び三菱標章について、国内外でほぼすべての商品及び役務の分野において商標登録を受けている。また、国内外のマスコミ等においても、三菱グループに属する企業が、『三菱』もしくはMitsubishiの名称又は三菱標章と共に頻繁に採り上げられている。『三菱』の名称及び三菱標章(スリーダイヤのマーク)は、企業グループである三菱グループ及びこれに属する原告らをはじめとする企業を表すものとして著名であり、不正競争防止法2条1項2号にいう著名な商品等表示に該当するということができる。...被告が使用する被告名称(「株式会社三菱ホーム」という名称〔商号〕)のうち、『株式会社』及び『ホーム』という事業分野を示す一般名詞部分に商品ないし役務の出所識別機能がないことは明らかであるから、類否判断の上で意味のある要部は『三菱』の部分というべきところ、これは原告らの商品等表示である前記『三菱』と同一である。したがって、被告名称(「株式会社三菱ホーム」)は、『三菱』の名称と類似するものと認められる。」との判断を示しました。

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