商標権侵害・トラブル対応
2026/04/25

商標権侵害訴訟の流れ・期間・費用を弁護士が解説

「相手が警告書を無視した。いよいよ訴訟しかないのか」「訴訟になったらどれくらい時間とお金がかかるのか知りたい」——商標権侵害への対応を検討している方から、よくいただく質問です。

訴訟は最後の手段ですが、見通しを知ることで交渉でも有利に動けます。この記事では、商標権侵害訴訟の全体像を、手続きの流れ・期間・費用の観点から実務的に解説します。

商標権侵害訴訟の管轄裁判所

商標権侵害訴訟には専属管轄があります。

  • 東京地方裁判所 知的財産部(東日本エリア)
  • 大阪地方裁判所 知的財産部(西日本エリア)

一般の民事訴訟と異なり、知的財産の専門裁判体が審理します。控訴審は知的財産高等裁判所(東京)が全国統一で担当します。

訴訟の流れ:7つのステップ

ステップ1:訴状の作成・提出

弁護士が訴状を作成し、裁判所に提出します。訴状には、請求内容(差止・損害賠償の金額)と法的根拠を記載します。

訴状提出から第1回口頭弁論期日まで、通常1〜2ヶ月かかります。

ステップ2:第1回口頭弁論

裁判所で最初の期日が開かれます。この段階では形式的な手続きの確認が主で、実質的な審理はまだ始まりません。

ステップ3:被告の答弁書提出・争点整理

被告(相手方)が答弁書を提出し、主張の骨格が明らかになります。その後、裁判官の主導で争点(何が法的に争われているか)が整理されます。

商標権侵害訴訟では主に以下が争点になります。

  • 商標の類似性(外観・称呼・観念)
  • 指定商品・役務の類否
  • 商標的使用の有無
  • 先使用権・商標法26条の適用除外
  • 損害額の算定

ステップ4:書面攻防(準備書面の交換)

双方が準備書面(主張書面)と証拠を提出し合います。期日は通常1〜2ヶ月に1回のペースで進行します。

商標権侵害訴訟では、鑑定(商標の類似性に関する専門家意見)が必要になることもあります。

ステップ5:証人尋問・当事者尋問

書面での攻防がひと段落したら、証人尋問や当事者尋問(当事者本人が証言台に立つ)が行われます。損害額の立証のために、相手方の帳簿・売上データの提出を求める「書類提出命令」の申立てもこの段階で行います。

ステップ6:和解期日・和解勧試

裁判所は、判決の前に双方に和解を勧めることがあります(和解勧試)。実務上、知的財産訴訟の多くは判決前に和解で解決します。

和解の内容例:

  • 相手が使用を停止し、一定の解決金を支払う
  • ライセンス契約を締結して使用を継続させる
  • 段階的な移行措置(猶予期間付きの使用停止)

ステップ7:判決

和解が成立しなかった場合、裁判所が判決を言い渡します。判決に不服がある場合は、知的財産高等裁判所に控訴できます。

期間の目安

段階 期間の目安
訴状提出〜第1回期日 1〜2ヶ月
審理期間(第1審) 1〜1.5年
控訴審(知財高裁) 6ヶ月〜1年
合計(第1審のみ) 1〜2年

事案が複雑な場合(多数の商品・広範な損害・技術的な争点)や相手が徹底抗戦する場合は、2年を超えることもあります。

費用の目安

弁護士費用

内容 目安
着手金(差止+損害賠償) 55万円〜110万円(税込)
成功報酬 獲得額の10〜16%程度
控訴審追加費用 着手金の50〜100%

裁判所への費用

  • 訴訟費用(印紙代):請求額に応じて変動。例:請求額1,000万円なら約5万円
  • 担保供託金(仮処分の場合):数十万〜数百万円(事案による)

その他の費用

  • 鑑定費用(商標の類似性鑑定):30万〜100万円程度
  • フォレンジック費用(証拠保全):案件による

訴訟と和解解決の費用対効果

訴訟は時間と費用がかかります。相手の規模・侵害の悪質性・損害額の大きさによって、どちらが合理的かが変わります。

ケース 推奨
侵害規模が大きく損害額が明確 訴訟(十分な費用対効果)
相手が中小で侵害期間が短い 警告書→交渉和解
ブランド毀損が続いており緊急性がある 仮処分→本案訴訟
相手が悪質・再発のおそれ 訴訟+刑事告訴

まとめ

商標権侵害訴訟は、第1審だけで1〜2年、弁護士費用は着手金だけで55万円以上かかるのが一般的です。しかし、被害が大きい場合や相手が交渉に応じない場合には、訴訟が唯一の解決手段となります。

大切なのは、最初から訴訟を見据えた証拠保全と初動対応を行うことです。警告書の段階から戦略的に動いておくことで、訴訟に移行した際の負担を大きく軽減できます。

ご相談はこちら 虎ノ門法律特許事務所では、商標権侵害訴訟・仮処分の対応を弁護士・弁理士がサポートします。「訴訟になるか交渉で解決できるか、見通しを聞きたい」という段階からご相談をお受けしています。お電話またはWebフォームからお気軽にどうぞ。

本記事は一般的な情報提供を目的とし、法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な問題は弁護士にご相談ください。

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