商標法
2026/04/25

商標権侵害に対する差止請求とは?手続きと実務上のポイントを弁護士が解説

「競合他社が自社の登録商標と酷似したロゴを使い続けている。損害賠償だけでなく、今すぐ使用をやめさせたい」——このような場合に活用できるのが差止請求です。

損害賠償は過去の損害を金銭で回収するものですが、差止請求は将来の侵害行為そのものを止める手段です。ブランドの毀損が続く状況では、賠償金より先に「止める」ことが最優先になります。

この記事では、商標権侵害における差止請求の法的根拠・手続き・仮処分との使い分けを解説します。

差止請求とは何か

差止請求とは、商標権者が侵害者に対して「侵害行為を止めよ」または「侵害のおそれのある行為を予防せよ」と求める権利です(商標法36条1項・2項)。

請求できる内容

差止請求では、以下の内容を求めることができます。

  • 侵害行為の停止:問題のある商標・ロゴの使用中止
  • 侵害品の廃棄:在庫の侵害品・包装・広告物の破棄
  • 侵害設備の除去:侵害に使用している設備・看板等の撤去

損害賠償との違い

  差止請求 損害賠償請求
目的 侵害行為を止める 過去の損害を金銭補填
要件 故意・過失不要 故意または過失が必要
効果 将来の侵害防止 過去分の回復

差止請求は故意・過失を問わず認められる点が重要です。相手が「知らなかった」と主張しても差止請求は妨げられません。

差止請求の2つのルート

ルート①:訴訟による差止請求(本案訴訟)

通常の民事訴訟として、差止請求訴訟を提起します。

手続きの流れ:

  1. 訴状の作成・提出(東京地裁または大阪地裁の知的財産部)
  2. 口頭弁論・証拠調べ(双方の主張立証)
  3. 判決
  4. 判決確定後、相手が従わない場合は強制執行

メリット・デメリット: 確実に権利を確定できる一方、判決まで通常1〜2年かかります。侵害が続く間も被害が拡大するため、急を要する場合は後述の仮処分と組み合わせます。

ルート②:仮処分(暫定的な差止め)

本案訴訟の判決を待たずに、裁判所が暫定的に使用禁止を命じる手続きです(民事保全法23条2項)。

仮処分が認められる要件:

  • 被保全権利の存在:商標権侵害が一応認められること
  • 保全の必要性:本案訴訟の確定を待っていては回復しがたい損害が生じること

仮処分のメリット: 申立てから決定まで数週間〜2ヶ月程度と迅速です。ブランド毀損が進行中の場合や、相手が大量の侵害品を販売し続けている場合は、まず仮処分を申し立てることが有効です。

仮処分のデメリット: 担保(保証金)の供託が必要になる場合があります。また、仮処分は暫定的な措置であるため、最終的には本案訴訟で権利を確定させる必要があります。

差止請求を成功させるための準備

① 侵害の証拠を固める

差止請求の申立てには、侵害の事実を疎明(一応証明)する必要があります。以下の証拠を事前に確保してください。

  • 相手の商品・ウェブサイト・広告のスクリーンショット(日時記録付き)
  • 侵害品の実物購入記録
  • 自社の商標登録証・登録原簿(J-PlatPat)
  • 需要者が混同した事例(問い合わせメール、SNS投稿など)

② 自社商標の有効性を確認する

差止請求の前提として、自社の商標登録が有効であることが必要です。登録が失効していたり、指定商品・役務の範囲が実態と合っていない場合は、先に更新・追加出願を検討します。

③ 警告書を先に送る

いきなり仮処分申立てをすることもできますが、実務上は先に警告書を送付するのが一般的です。警告書への対応を見て、相手が誠実に対応する意向があるか判断します。無視または不誠実な回答があった場合に、仮処分・訴訟に進みます。

差止請求の費用と期間の目安

手続き 期間の目安 弁護士費用の目安(着手金)
警告書作成・送付 1〜2週間 11万円〜
仮処分申立て 1〜2ヶ月 33万円〜
本案訴訟(差止) 1〜2年 33万円〜

※担保供託金は別途必要です(事案により数十万〜数百万円)。

まとめ

差止請求は、商標権侵害に対する最も直接的な法的手段です。損害賠償で過去を回収しながら、差止めで将来の侵害を防ぐ——この両輪で対応するのが実務上のセオリーです。

急を要する場合は仮処分、腰を据えた解決は本案訴訟と使い分けることがポイントです。いずれにせよ、証拠の確保と早期の弁護士相談が成否を左右します。


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本記事は一般的な情報提供を目的とし、法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な問題は弁護士にご相談ください。

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