商標権侵害を理由に内容証明が届いた場合の対処法|弁護士が解説
見慣れない封筒に「内容証明郵便」の文字。開封すると、「商標権侵害」「使用中止」「損害賠償」といった物々しい文言が並んでいる――。
内容証明郵便が届くと、多くの方が強い不安を感じます。しかし、内容証明郵便自体には法的な強制力はありません。落ち着いて対処すれば、適切に解決できるケースがほとんどです。
本記事では、商標権侵害を理由とする内容証明郵便が届いた場合の対処法を、弁護士・弁理士の立場から詳しく解説します。
1. 内容証明郵便とは何か
まず、内容証明郵便がどのような書面であるかを正しく理解しましょう。よくある誤解を解消することが、冷静な対応の第一歩です。
内容証明郵便の法的効力
内容証明郵便には、それ自体に法的な強制力はありません。内容証明郵便とは、郵便局が「いつ、誰が、誰に対して、どのような内容の文書を送ったか」を証明してくれる郵便サービスです。裁判所の命令でもなければ、行政処分でもありません。
したがって、「内容証明が届いたからといって、書かれている内容に従わなければならない」ということはありません。
なぜ内容証明で送るのか
では、なぜ相手方はわざわざ内容証明郵便を使うのでしょうか。主な理由は以下の3つです。
- 証拠化:「この内容の書面を送った」という事実を、後の裁判で証拠として使えるようにするため
- 本気度の表明:普通郵便やメールではなく内容証明を送ることで、「法的手段を講じる用意がある」という姿勢を示すため
- 時効との関係:損害賠償請求権の消滅時効について、催告(請求の意思表示)の証拠とするため
よくある誤解
内容証明郵便について、以下のような誤解がよくあります。
- 「届いたら従わなければならない」 → 誤りです。強制力はありません
- 「弁護士名義で来ているから本当に訴えられる」 → 弁護士名義であることは交渉の一環であり、必ず訴訟になるわけではありません
- 「無視しても問題ない」 → これも誤りです。強制力はなくても、無視にはリスクがあります(後述)
2. 商標権侵害を理由とする内容証明の典型的な内容
商標権侵害を理由に送られる内容証明郵便には、一般的に以下のような事項が記載されています。
使用中止の要求
「貴社が使用する商品名(またはサービス名、ロゴ等)○○は、当社の登録商標(商標登録第○○○○号)に類似するものであり、商標権を侵害しています。直ちに使用を中止してください。」
損害賠償の請求
「当社が被った損害として、金○○万円をお支払いください。」損害額の算定根拠(使用期間、売上規模、ライセンス料相当額など)が記載されている場合もありますが、根拠なく請求額のみが記載されていることも少なくありません。
謝罪文の要求
「謝罪文を提出してください」という要求が含まれることもあります。ただし、謝罪文の提出は法的義務ではありません。
回答期限の設定
「本書到達後○日以内(通常2〜3週間)にご回答ください。ご回答なき場合は、訴訟その他の法的措置を講じます。」
3. 内容証明を受け取ったときの対応手順
以下の5つの手順に沿って対応してください。
手順1:受取日を記録する
内容証明郵便は通常、配達証明付きで送られます。受け取った日付を必ず記録してください。この日付が回答期限の起算点になります。また、受け取りを拒否しても、法的には「到達した」とみなされる場合があるため、受け取り拒否は避けてください。
手順2:内容を冷静に読み、要求事項を整理する
感情的にならず、以下のポイントを整理してください。
- 相手方は誰か(会社名、代理人弁護士名)
- 何を根拠にしているか(商標登録番号、指定商品・役務)
- 何を要求しているか(使用中止、損害賠償、謝罪のいずれか、またはすべてか)
- 回答期限はいつか
- どのような法的措置を予告しているか
手順3:指摘されている商標登録番号を確認する
内容証明に記載されている商標登録番号をもとに、特許庁の「J-PlatPat」(特許情報プラットフォーム)で商標登録の内容を確認しましょう。J-PlatPat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)は誰でも無料で利用できます。
確認すべき事項は以下のとおりです。
- 商標登録が現在も有効か:存続期間が満了していないか、更新されているか
- 指定商品・指定役務は何か:自社の商品・サービスが指定の範囲に含まれるか
- 商標権者は誰か:内容証明の差出人と商標権者が一致しているか
J-PlatPatの「商標」タブで、登録番号を入力して検索すると、これらの情報を確認できます。
手順4:弁護士に相談する
上記の情報を整理した上で、知的財産に詳しい弁護士に相談してください。弁護士は、侵害が成立するかの見通し、最適な対応方針、回答書の内容について専門的なアドバイスを提供します。
相談のタイミングは、回答期限の少なくとも1週間前が理想です。期限が迫っている場合でも、弁護士から相手方に対して回答期限の延長を求めることが可能です。
手順5:回答書を送付する
弁護士と方針を決定した上で、回答書を作成・送付します。回答書は弁護士名義で作成することで、相手方に対して「法的な対応を準備している」ことを示す効果があります。
4. 内容証明を無視するとどうなるか
先述のとおり、内容証明郵便に法的強制力はありません。しかし、無視することには重大なリスクがあります。
相手方が訴訟に踏み切る可能性
内容証明は、訴訟前の最終通告として送られるケースが大半です。回答がなければ、相手方は「交渉の余地なし」と判断し、訴訟を提起する可能性が高まります。訴訟になれば、費用・時間・精神的負担が大幅に増加します。
仮処分を申し立てられる可能性
本案訴訟に先立ち、商標の使用差止めの仮処分を申し立てられることがあります。仮処分が認められると、裁判の結論が出る前に使用を中止せざるを得なくなります。
裁判での心証への影響
内容証明に対して何の応答もしなかった事実は、裁判になった場合に「侵害の認識がありながら放置した」「誠意ある対応をしなかった」として、裁判官の心証に影響する可能性があります。
5. 回答書に書くべきこと・書いてはいけないこと
回答書の内容は、その後の交渉や訴訟の展開を大きく左右します。弁護士に依頼することが最善ですが、一般的な指針として以下を参考にしてください。
書くべきこと
- 反論の骨子:侵害が成立しないと考える理由を、法的根拠とともに示します(商標非類似、指定商品非類似、先使用権など)
- 回答期限の延長要請:十分な調査を行うために、回答期限の延長を求めることは正当な対応です
- 協議の申し入れ:必要に応じて、冷静な協議の場を設けることを提案します
書いてはいけないこと
- 侵害の自認:「確かに似ているかもしれませんが」「知らずに使っていました」といった表現は、侵害を認めたものとして利用されるリスクがあります
- 根拠のない反論:法的根拠のない感情的な反論は、かえって相手方を訴訟に向かわせる可能性があります
- 感情的な文面:「そちらこそ不当だ」「営業妨害だ」といった感情的な文言は、プロフェッショナルな対応とはいえません
6. 費用の目安
| サービス内容 | 費用の目安 |
|---|---|
| 初回法律相談(60分) | 11,000円(税込) |
| 内容証明の分析・意見書作成 | 5万5,000円〜(税込) |
| 回答書の作成・送付 | 11万円〜(税込) |
| 交渉代理(着手金) | 22万円〜(税込) |
| 訴訟代理(着手金) | 33万円〜(税込) |
※事案の内容・難易度により変動します。正式なお見積りは初回相談時にご提示します。
詳しくは弁護士費用ページをご覧ください。
7. まとめ — 内容証明が届いたら、まず専門家に相談を
商標権侵害を理由とする内容証明郵便への対応のポイントをまとめます。
- 内容証明郵便に法的強制力はない。しかし無視してはならない
- 受取日を記録し、要求事項と回答期限を整理する
- J-PlatPatで商標登録の内容を確認する
- 知的財産に詳しい弁護士に、回答期限前に相談する
- 回答書は弁護士名義で作成する。侵害を自認する表現は避ける
内容証明郵便が届いた段階は、まだ交渉で解決できる可能性が最も高い段階です。この段階で適切に対応することが、訴訟回避と事業保全の鍵となります。
虎ノ門法律特許事務所にご相談ください
当事務所では、商標権侵害の内容証明郵便への対応を数多く手がけています。代表弁護士の大熊裕司は弁護士・弁理士の両資格を保有しており、商標権の有効性の調査から回答書の作成、交渉、訴訟対応まで一貫してサポートします。
「内容証明が届いたが、どう対応すればいいかわからない」「回答期限が迫っている」という方は、まずはお問い合わせください。
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