商標権侵害・トラブル対応
2026/04/11

商標権侵害で損害賠償を請求されたら?減額交渉のポイントを弁護士が解説

商標権侵害で損害賠償を請求されたら?減額交渉のポイントを弁護士が解説

商標権侵害を理由に、数百万円、場合によっては数千万円の損害賠償を請求された――。その金額を見て、途方に暮れている方もいるかもしれません。

しかし、請求された金額がそのまま認められるとは限りません。警告書や訴状に記載されている金額は、あくまで相手方が一方的に算定した「言い値」です。実際に裁判で認められる金額は、請求額を大幅に下回るケースが少なくありません。

本記事では、商標権侵害の損害賠償額がどのように算定されるか、そして減額交渉において押さえるべき6つのポイントを解説します。

1. 商標権侵害の損害賠償額はどう算定されるか

損害賠償額の交渉を行うには、まず商標法上の損害額の算定方法を理解しておく必要があります。商標法38条は、3つの算定方法を定めています。

条文 算定方法 概要
38条1項 逸失利益型 侵害者の譲渡数量 × 権利者の単位あたり利益。権利者が「侵害がなければ自分が売れたはずの利益」を算定する方法
38条2項 侵害者利益型 侵害者が侵害行為によって得た利益の額を損害額と推定する方法
38条3項 ライセンス料相当額型 商標の使用に対し受けるべき金銭の額(ライセンス料相当額)を損害額とする方法。最低保障的な位置づけ

相手方は通常、最も高額になる算定方法を選択して請求してきます。しかし、どの算定方法にもそれぞれ反論の余地があります。

弁護士費用の請求

損害賠償に加えて、相手方の弁護士費用の一部(通常、認容額の10%程度)も損害として請求されることがあります。ただし、これは損害賠償が認められた場合に限られるため、本体の損害額を減らせれば、弁護士費用部分も連動して減少します。

2. 警告書・訴状の請求額は「相手の言い値」

最も重要なポイントです。警告書や訴状に記載されている損害賠償額は、相手方が自分に有利な前提で算定した金額であり、法的に確定した金額ではありません。

実際に裁判で認められる金額との乖離

商標権侵害訴訟において、請求額がそのまま認められることはむしろ少数です。裁判所は、提出された証拠に基づいて独自に損害額を認定します。例えば、以下のようなケースがあります。

  • 請求額1,000万円に対し、裁判所が認定した損害額は100万円
  • 請求額500万円に対し、そもそも侵害が認められず損害賠償は0円
  • 請求額300万円に対し、ライセンス料相当額として30万円のみ認容

このように、請求額と認容額の間には大きな開きがあることが珍しくありません。

請求額通り支払う必要はない

警告書の段階で請求額を支払えば、早期に問題が解決するように見えるかもしれません。しかし、専門家の分析なしに支払うことは絶対に避けてください。安易な支払いは、侵害を認めたことになり、将来の追加請求の根拠にもなり得ます。

3. 損害賠償額を減額できる6つのポイント

損害賠償額の減額交渉において、特に重要な6つのポイントを解説します。

ポイント1:侵害の成否自体を争う

そもそも侵害が成立しなければ、損害賠償義務は一切発生しません。これが最も強力な防御です。商標の非類似、商品・役務の非類似、商標的使用の否定、先使用権、商標権の無効など、侵害自体を否定する主張を検討します。

例えば、相手の登録商標「SUNSHINE」に対して、自社が「SunShine Kitchen」という飲食店名を使用していた場合、結合商標として全体で非類似と判断される可能性があります。侵害が否定されれば、損害賠償は0円です。

ポイント2:損害額の算定根拠を精査する

相手方の損害額の計算が正しいかを精査します。よくある問題点は以下のとおりです。

  • 38条1項の場合:侵害者の譲渡数量の算定が過大ではないか。権利者の単位あたり利益が適切に計算されているか。権利者の製造・販売能力を超える部分は控除されるべきではないか
  • 38条2項の場合:侵害者の利益の計算において、経費が適切に控除されているか。侵害品以外の売上が含まれていないか
  • 38条3項の場合:ライセンス料率が業界の相場に照らして適切か。基準となる売上額が正しいか

ポイント3:寄与率を主張する

これは減額交渉において最も実効性の高いポイントです。商品の売上は、商標だけでなく、品質、価格、デザイン、広告、立地など、さまざまな要因によって形成されます。売上全体に対する商標の寄与度(貢献度)を主張することで、損害額を大幅に減額できる可能性があります。

例えば、ある商品の年間売上が1,000万円であっても、商標の寄与率が10%と認定されれば、損害額の算定基礎は100万円となります。

ポイント4:侵害期間を争う

損害額は侵害期間に応じて算定されます。相手方が主張する侵害期間が実際より長い場合、正確な使用開始時期を立証することで損害額を減額できます。また、警告書を受け取った後に使用を変更・中止した場合は、その時点で侵害期間が終了したと主張できます。

ポイント5:相手方の損害との因果関係を争う

38条1項の場合、権利者の逸失利益は「侵害がなければ権利者が販売できたであろう数量」に基づいて算定されます。しかし、侵害者の顧客が侵害品を購入しなかったとしても、必ずしも権利者の商品を購入したとは限りません。市場に競合品が多数存在する場合、権利者の商品に流れる割合は限定的です。

ポイント6:過失の程度を主張する

商標権侵害については過失が推定されますが(商標法39条・特許法103条)、その過失の程度は損害額の算定に影響し得ます。侵害の認識がなかったこと、類似性の判断が微妙な事案であったことなどを主張し、損害額の減額を求めることが考えられます。

4. 減額に成功した事例のパターン

以下は、損害賠償額の減額に成功した典型的なパターンです(一般的な事例に基づく)。

パターン1:請求額1,000万円 → 非侵害認定で0円

相手方は商標の類似を主張して1,000万円を請求しましたが、商標の外観・称呼・観念を総合的に検討した結果、裁判所は非類似と判断。侵害が認められず、損害賠償は0円となりました。

パターン2:請求額500万円 → 寄与率の主張で50万円に減額

侵害自体は認められたものの、商品の売上に対する商標の寄与率が低いことを主張。裁判所が寄与率を考慮し、損害額を50万円と認定しました。

パターン3:請求額300万円 → 交渉で80万円で和解

訴訟前の交渉段階で、非類似の主張と損害額の根拠の不備を指摘。相手方が訴訟リスクを考慮し、80万円での和解に応じました。また、ブランド名を一部変更することで、今後の使用継続も認められました。

5. 安易に支払ってしまうリスク

「面倒だから支払ってしまおう」「金額がそれほど大きくないから」と考えて安易に支払うことには、以下のリスクがあります。

  • 侵害を認めたことになる:支払いは事実上の侵害自認です。今後、同種の商標の使用について相手方から更なる請求を受ける根拠になります
  • 将来の請求の根拠にされる:一度支払った事実は、「過去にも侵害を認めて支払った」として、将来の追加請求の材料になり得ます
  • 本来支払う必要のない金額を支払うことになる:専門家の分析により、請求額が大幅に減額される可能性や、そもそも侵害が成立しない可能性があります

損害賠償を請求された場合は、支払いの前に必ず専門家に相談してください。

6. 費用の目安

サービス内容 費用の目安
初回法律相談(60分) 11,000円(税込)
警告書の分析・損害額の検証 5万5,000円〜(税込)
回答書の作成・減額交渉 22万円〜(税込)
訴訟代理・被告側(着手金) 33万円〜(税込)

※事案の内容・請求額の規模により変動します。正式なお見積りは初回相談時にご提示します。
詳しくは弁護士費用ページをご覧ください。

弁護士費用を考慮しても、減額できる金額が費用を大きく上回るケースがほとんどです。特に請求額が数百万円以上の場合、専門家への相談は経済的にも合理的な判断です。

7. まとめ — 請求額を鵜呑みにしないでください

商標権侵害で損害賠償を請求された場合の対応のポイントをまとめます。

  • 請求された金額 ≠ 支払うべき金額。警告書・訴状の金額は「相手の言い値」
  • 損害額の算定には3つの方法があり、それぞれに反論の余地がある
  • 寄与率の主張が減額に最も効果的。商標以外の要因による売上は損害から除外すべき
  • 侵害の成否自体を争えば、損害賠償が0円になる可能性もある
  • 安易に支払ってはならない。侵害の自認と将来の追加請求のリスクがある

虎ノ門法律特許事務所にご相談ください

当事務所では、商標権侵害の損害賠償請求への対応・減額交渉を数多く手がけています。代表弁護士の大熊裕司は弁護士・弁理士の両資格を保有しており、権利の有効性から損害額の算定根拠まで、多角的に検証して最善の結果を目指します。

「損害賠償を請求されたが、金額が妥当かわからない」「減額の余地があるか知りたい」という方は、まずはお問い合わせください。

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