商標権侵害の警告書が届いた場合の対応

「貴社の商品名は当社の登録商標を侵害している。直ちに使用を中止し、○日以内に回答されたい」――ある日突然、こうした警告書や内容証明郵便が届き、戸惑ってこのページをご覧になった方も多いはずです。

先に結論を申し上げます。警告書は無視してはいけませんが、慌てて相手の要求どおりに使用を中止したり、賠償に応じたりする必要もありません。 警告書が届いた事案には、①そもそも侵害が成立していない、②先使用権などの反論ができる、③相手の商標登録自体を取り消し・無効にできる、という余地が相当の割合で残されています。回答の内容次第でその後の交渉・訴訟の展開が大きく変わるため、回答書を送る前の初動が最も重要です。

このページでは、商標・不正競争防止法に注力する弁護士・弁理士が、警告書を受け取った直後にやるべきこと・やってはいけないことを解説します。

回答期限が迫っている方は、期限当日でもまずお電話ください

知財トラブルの相談を予約する

お電話:03-6205-7455LINEでのご相談・ご予約も承ります。法律相談料は60分1万1000円(税込)です。

警告書を無視するとどうなるか

警告書自体に法的な強制力はありません。しかし放置した場合、相手方は次の手段に進みます。

  • 商標権侵害訴訟の提起:使用の差止め(商標法36条)と損害賠償(民法709条)を求める訴訟。商標法38条には損害額の推定規定があり、侵害が認められると譲渡数量や利益をもとに賠償額が算定されます。
  • 仮処分の申立て:判決を待たずに商品名・サービス名の使用を止められる可能性があります。
  • 取引先・プラットフォームへの働きかけ:Amazon・楽天等への出品削除申告や、取引先への通知により、訴訟の前に事業への実害が生じることがあります。
  • 刑事告訴:商標権侵害には刑事罰の定めもあります(商標法78条・78条の2)。

一方で、警告書への対応を誤り、侵害を認める趣旨の回答を安易に出してしまうと、後から反論することが難しくなります。「無視もしない、認めもしない」が鉄則です。

回答前に必ず確認すべき4つのポイント

1. 相手の商標権は本当に有効か

まず、警告書に記載された登録番号をもとに、特許庁のデータベース(J-PlatPat)で登録の実体を確認します。確認すべきは、①現に有効に登録されているか、②権利者は警告書の差出人と一致するか、③指定商品・指定役務は何か、の3点です。登録商標であっても、あなたの商品・サービスが指定商品・役務と類似しない分野のものであれば、原則として侵害は成立しません。

2. 商標・商品は本当に「類似」しているか

商標の類否は、外観(見た目)・称呼(呼び方)・観念(意味合い)を総合し、取引の実情を踏まえて需要者が出所を混同するおそれがあるかどうかで判断されます(最高裁昭和43年2月27日判決・氷山印事件)。警告書には「類似は明らか」と断定的に書かれているのが通常ですが、裁判で争えば非類似と判断される事案は少なくありません。

3. そもそも「商標としての使用」にあたるか

商品の産地や品質を普通に表示しているだけの場合や、デザイン・装飾として使っているだけで出所表示として機能していない場合には、商標権の効力が及ばないか(商標法26条1項2号・6号)、そもそも「商標の使用」にあたらないという反論が可能です。

4. 反論できる抗弁・対抗手段はないか

  • 先使用権(商標法32条):相手の商標出願より前から、不正競争の目的なくその名称を使用し、需要者に広く認識されていた場合、継続使用が認められる余地があります。
  • 不使用取消審判(商標法50条):相手が登録商標を3年以上使用していない場合、登録の取消しを請求できます。警告への対抗手段として実務上よく用いられます。
  • 無効審判(商標法46条):相手の登録自体に無効理由(他人の周知商標との類似など)がある場合。
  • 権利濫用の抗弁:権利行使の経緯・態様によっては権利濫用として請求が排斥されることがあります。

これらの検討には商標法の知識と裁判例の知見が不可欠です。当事務所は弁護士・弁理士の双方の資格で、侵害論と特許庁での審判手続の両面から対応します。

対応の流れ

  1. ご相談・警告書の検討(回答期限が迫っている場合はその旨お知らせください):警告書・登録情報・使用状況を確認し、侵害成立の見込みと反論の可能性を診断します。
  2. 方針決定:(a)争う(非侵害・抗弁の主張)、(b)交渉する(使用継続のライセンス・名称の段階的変更・解決金の減額)、(c)使用を中止して早期解決、のいずれが最も損失が小さいかを、事業への影響も含めて助言します。
  3. 弁護士名義での回答書の作成・送付:認めるべきでない点は認めず、争点を適切に設定した回答書を期限内に送付します。以後の窓口は弁護士が引き受け、相手方と直接やり取りする必要はなくなります。
  4. 交渉・審判・訴訟対応:交渉決裂の場合も、不使用取消審判・無効審判の請求、訴訟対応まで一貫して代理します。

初動を誤ると選択肢が狭まります。まずは現状をお聞かせください。

知財トラブルの相談を予約する

お電話:03-6205-7455LINEでのご相談・ご予約も承ります。法律相談料は60分1万1000円(税込)です。

解決事例

大手同業者から表示の差止めと数千万円の賠償を求められた事案で、一審・控訴審とも請求を全面的に退けました。→解決事例を見る

※依頼者が特定されないよう内容を一般化しています。

弁護士費用

  • 法律相談:60分1万1000円(税込)
  • 警告書への回答・交渉対応の費用は、事案の内容に応じて初回相談時にお見積りします。詳細は弁護士費用をご覧ください。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 回答期限が「10日以内」とされていますが、間に合いません。

警告書の回答期限に法的拘束力はありません。「検討のうえ追って回答する」旨を通知して検討時間を確保するのが通常であり、期限を数日過ぎたことだけで直ちに訴訟になるわけではありません。ただし無用の刺激を避けるため、一次回答は早めに出すべきです。

Q2. 当方は商標登録をしていません。それでも反論できますか。

できます。侵害の成否は登録の有無ではなく、商標・商品役務の類否や使用態様で決まります。また、相手の出願前から周知の名称を使っていた場合は先使用権の主張も検討できます。

Q3. 警告書に「損害賠償として○○万円を支払え」とあります。払うべきですか。

直ちに支払ってはいけません。侵害の成否自体に争いの余地があるほか、損害額の算定根拠も検証が必要です。金額は交渉で大きく変わるのが通常です。

Q4. すでに商品名の使用をやめれば、それで終わりますか。

使用中止だけでは過去の使用分の損害賠償請求が残ることがあります。中止する場合も、清算条項を含む合意書を取り交わして紛争を完全に終了させることが重要です。

Q5. 相手はその商標を使っていないように見えます。

相手が3年以上登録商標を使用していなければ、不使用取消審判で登録を取り消せる可能性があり、有力な対抗手段になります。使用状況の調査から対応します。

Q6. 遠方(東京以外)ですが依頼できますか。

対応可能です。警告書対応は書面と電話・Web会議で完結することが多く、全国からご依頼いただけます。

弁護士・弁理士 大熊裕司

このページの監修

虎ノ門法律特許事務所 代表
弁護士・弁理士 大熊 裕司

第一東京弁護士会所属(登録番号:37803)・日本弁理士会所属。商標・不正競争防止法をはじめとする知的財産紛争に注力し、警告書対応から審判・訴訟まで一貫して取り扱う。

© 虎ノ門法律特許事務所(知財・商法・不正競争防止法サイト)