はじめに
ニデック株式会社の元従業員が社内資料を記者に渡し、その資料をもとに株式会社東洋経済新報社が運営するニュースサイトが記事を掲載した。ニデックは、資料を渡した元従業員だけでなく、記事を書いた記者と東洋経済新報社にも責任があるとして、合計1億1000万円の損害賠償を求めました。企業の情報管理、内部告発、報道対応という3つの実務課題が一度に問われた事件です。
本記事で取り上げるのは、知的財産高等裁判所第2部 令和8年(2026年)6月29日判決・令和8年(ネ)第10004号 損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和5年(ワ)第70401号)です(判決文PDF・裁判所ウェブサイト)。本記事では便宜上「社内資料提供事件」と呼びます。
当事者の表記について。 本記事では、判決文が実名で記載している当事者に限って実名で表記します。すなわち、判決文上の「原告」(控訴人兼被控訴人)がニデック株式会社(以下「ニデック」)、「被告会社」(被控訴人)が株式会社東洋経済新報社(以下「東洋経済新報社」)です。その余の当事者については、判決文自体が符号(被告Y1・Y2・Y3・Y4、及びA)で示しているため、本記事でも符号のまま記載し、推測して補うことはしません。なお、本記事中の逐語引用および図表は、判決文の表記に合わせて「原告」「被告会社」等の呼称を用いています(それぞれ上記の対応関係でお読みください)。
控訴審は、東洋経済新報社ら報道機関側の責任を否定する一方、元従業員(被告Y4)については損害賠償義務を認めつつ、原審の275万円を66万円へと減額しました。減額の鍵になったのが、「その行為の違法性の程度は比較的低い」という評価です。以下、①報道機関側の責任、②元従業員の責任と公益通報者保護法、③秘密管理性の認定、④損害額の順に見ていきます。
前提知識の整理
本判決を読む前提として、いくつかの概念を整理します。以下は法制度の一般的な説明であり、本判決がこれらの点について新たな判断枠組みを示したものではありません(後述のとおり、営業秘密の3要件に関する一般的な判断枠組みは原判決に示されており、本控訴審判決には現れていません)。
- 営業秘密(不正競争防止法2条6項):条文上は「この法律において『営業秘密』とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。」と定義されます。実務上は、秘密管理性(秘密として管理されていること)・有用性(事業活動に有用であること)・非公知性(公然と知られていないこと)の3要件として整理されています。
- 営業秘密に関する不正競争の類型(同2条1項):本件で主張された号は次のとおりです。
- 4号:窃取・詐欺・強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(営業秘密不正取得行為)と、それにより取得した営業秘密を使用・開示する行為
- 5号:営業秘密不正取得行為が介在したことを知って、または重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、またはそれを使用・開示する行為
- 6号:取得した後に営業秘密不正取得行為の介在を知って、または重大な過失により知らないで、その営業秘密を使用・開示する行為
- 7号:営業秘密保有者から営業秘密を示された者が、不正の利益を得る目的で、またはその保有者に損害を加える目的で、これを使用・開示する行為
- 8号:営業秘密不正開示行為であること、またはその介在を知って、もしくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、またはそれを使用・開示する行為
- 損害賠償の根拠:不正競争防止法4条は、不正競争による営業上の利益の侵害が民法709条の要件を満たすことを確認的に定めた規定です。本件では同法4条のほか、民法709条・719条1項(共同不法行為)が請求の根拠とされました。
- 公益通報者保護法:同法7条は、判決文の説明によれば「事業者は、公益通報によって損害を受けたことを理由として、当該公益通報をした公益通報者に対して、賠償を請求することができない旨を定める」ものです。同法2条2項は「公益通報者」を定義しており、不正の利益を得る目的や他人に損害を加える目的といった不正の目的による通報は、保護の対象から外れる仕組みになっています。
事案の概要
原告(控訴人兼被控訴人)はニデック株式会社です。被告会社(被控訴人)は株式会社東洋経済新報社で、インターネット上のニュースサイト(本件サイト)を運営しています。
被告Y1・Y2は東洋経済新報社の関係者ですが、判決文はその立場を示す記載を伏字としており、本記事でも推測して補うことはしません。被告Y3は本件記事の寄稿者、被告Y4はニデックの元従業員です。判決文中には、会計不正の背景とされる「経営スタイル」の主体としてAという符号が登場しますが、Aの氏名・役職についての説明は判決文にありません。

▲ 図1 当事者の関係と資料の流れ
ニデックの請求は、判決文によれば次のようなものでした。すなわち、①本件記事を寄稿した被告Y3、本件サイトを運営する東洋経済新報社、被告Y1及び被告Y2(判決文はあわせて「被告会社ら」と呼びます)の行為は不正競争防止法2条1項6号(Y3については同項5号又は8号)所定の不正競争に該当し予備的に不法行為に該当する、②ニデックの元従業員である被告Y4の行為は同項4号、5号又は7号所定の不正競争に該当し予備的に不法行為に該当する、と主張して、不正競争防止法4条、民法709条、719条1項に基づき、1億1000万円(うち調査費用601万4615円、弁護士費用1000万円)と令和5年8月23日(訴状送達の日の翌日)からの年3%の遅延損害金の連帯支払を求めた、というものです。
Y4がY3に提供した資料は57点で、うち25点が証券取引等監視委員会への内部通報に関する資料、残る32点がニデックの稟議書や人事通達等でした。ほかに、契約書索引(甲5)、ニデックの業績に係る未公表資料、ニデックの元従業員に係る個人情報も対象とされています。
原審(東京地裁)は、被告会社ら(東洋経済新報社・Y1・Y2・Y3)に対する請求を、正当な業務行為として違法性を欠くとして棄却し、Y4に対する請求のみ275万円(信用毀損による無形損害200万円、調査費用50万円、弁護士費用25万円)の限度で認容しました。ニデックとY4の双方が控訴したのが本件です。
なお、本件の審理と並行して、ニデック側では会計処理をめぐる調査が進行していました。判決が認定するところでは、令和7年7月に「原告の子会社の内部監査部門から、不適切な会計処理が行われた疑いがあるとの報告がされた」ことを契機にニデックが調査を実施し、令和7年9月にニデック取締役会が第三者委員会の設置を決定、令和8年2月27日に第三者委員会が調査報告書(乙18)を公表しました。控訴審の口頭弁論終結日は令和8年4月22日ですから、報告書の公表は審理の最終盤にあたります。

▲ 図2 訴訟の経過と第三者委員会の調査
争点
本判決の判示から整理すると、控訴審で主に検討されたのは次の点です。
- 被告会社ら(東洋経済新報社・同社関係者であるY1Y2・寄稿者Y3)の行為が、正当な取材・報道活動の範囲内といえるか
- 本件情報、とりわけ稟議書等の秘密管理性が認められるか
- 被告Y4が公益通報者保護法2条2項の「公益通報者」に当たり、免責されるか
- 被告Y4の行為とニデックの損害との間に相当因果関係があるか
- 損害額をどう算定するか

▲ 図3 争点と控訴審の判断
裁判所の判断
(1) 報道機関側(東洋経済新報社ら)――違法性を欠く
控訴審は、東洋経済新報社ら被告会社らの責任を否定しました。ニデックは、東洋経済新報社が警告書(本件警告書)を送付されたにもかかわらず報道に及んだ点を問題としましたが、裁判所は「被告会社が本件警告書の送付を受けたことを踏まえても、被告会社らの行為は、国民の知る権利に資するものとして、正当な取材、報道活動の範囲内にあるといえ、違法性を欠く。」と判断しました。
ニデックはさらに、寄稿者Y3がY4と共謀しニデックに損害を加える目的で本件記事を執筆したので正当な取材・報道活動の範囲を逸脱すると主張しましたが、裁判所は「被告Y3は真に報道の目的から本件記事を執筆したというべきであって、原告の主張は採用できない。」としてこれを退けました。
警告書を受け取った後の報道であっても、それだけで違法性が基礎づけられるわけではないという点は、危機管理広報の実務にとって重要な示唆です。
(2) 秘密管理性――「Internal Use Only」の表示と担当者による保管
本件稟議書等について、控訴審は、当時「Internal Use Only」との秘密管理表示がされ、ニデック総務部の稟議書業務担当者の管理するキャビネットで保管されていたと補正して認定しました。
Y4は、キャビネットに「Internal Use Only」の表示が付されていた事実はないと争いましたが、裁判所は「証人Bは、一貫して、稟議書を保管する全てのキャビネットには稟議業務担当者の氏名及び『Internal Use Only』との表示が付されていた旨の供述をするのである。上記供述によれば、稟議書を保管するキャビネットに『Internal Use Only』との表示が付されていたことが認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない。」としました。
さらに、「そして、このことは紙の稟議書の廃棄に係る原告総務課内のルールが順守されていなかったことにより(甲28、47、証人B)、左右されるものではない。」と述べ、運用ルールの一部が守られていなかったことは秘密管理性の認定を左右しないとしています。
もっとも、これは事実認定の補充であって、本控訴審判決は営業秘密の3要件についての一般的な判断枠組みを示していません(その部分は原判決に委ねられています)。本判決から読み取れるのは、表示・保管担当者の限定・これを裏づける証言という組合せが、当該事案において秘密管理性を支える事情と評価された、という限度です。
(3) 元従業員は免責されない――しかし「違法性の程度は比較的低い」
本判決の核心部分です。裁判所は次のように判示しました。
「もっとも、公益通報者保護法7条は、事業者は、公益通報によって損害を受けたことを理由として、当該公益通報をした公益通報者に対して、賠償を請求することができない旨を定めるのであり、本件において、被告Y3に提供した原判決別紙1『対象情報目録』記載の各資料のうちの相当部分は、原告の会計処理の状況やAの『経営スタイル』に関するものであり、第三者委員会による調査報告書にも、原告において会計不正が行われた背景には、Aの、日常的に業績目標を達成するよう強いプレッシャーをかけるという経営スタイルがある旨の指摘がされていることを踏まえると、原告に損害を加える目的で資料を被告Y3に提供した被告Y4は、同法2条2項所定の『公益通報者』に該当せず、原告の受けた損害につき損害賠償義務を免れないものの、その行為の違法性の程度は比較的低いというべきである。」(強調は筆者)
つまり、Y4は「公益通報者」には当たらず賠償義務を免れないが、提供資料の相当部分がニデックの会計処理や「経営スタイル」に関するものであり、後に公表された第三者委員会の調査報告書にも同旨の指摘があることを踏まえると、行為の違法性の程度は比較的低い、という評価です。免責か否かのオール・オア・ナッシングではなく、違法性の程度を損害額に反映させるという判断構造がとられています。
ここで、社名を挙げて紹介する以上、とりわけ強調しておかなければならない点があります。判決が認定したのは「第三者委員会の調査報告書にこのような記載がある」という事実であって、裁判所自身がニデックにおける会計不正の存否を認定したものではないという点です。判決は、報告書には、原告グループ内で多数の会計不正が発見され2025年度第1四半期末の連結財務諸表上の純資産への負の影響額が約1397億円に上ること、会計不正の背景にAが日常的に業績目標達成の強いプレッシャーをかけていたことがあること、Aが会計不正を指示・主導した事実は認められないものの一部の会計不正を容認していたとの評価を免れないこと等の記載がある、と述べています。あくまで報告書の記載内容についての認定であり、本記事の記述もその限度のものです。また、Aが誰であるかは判決文に記載がなく、本記事でも特定しません。
(4) 相当因果関係――メールの文言が決め手
Y4は、東洋経済新報社ら被告会社らが本件記事を掲載することを予見・容認していたわけではないから相当因果関係がないと主張しました。しかし裁判所は、Y4がY3に資料を電子メールで送付する際、「お渡ししている情報はそのまま書いていただいて ok ですし、書面は雑誌の紙面に出して頂いて ok です。」「一回ごとに、大騒ぎになって、会社側は訴えるとかいうはずですので、一カ月ごとに会社が動揺する様を見ながら、ネタを発表するのがよいと思います。」などと記載していたことを挙げ、Y4は掲載を予見し容認していたというべきであるとして、この主張を退けました。
このメールの文言は、相当因果関係のみならず、「原告に損害を加える目的」(すなわちニデックに損害を加える目的)の認定を支える事情としても機能しています。
(5) 損害額――275万円から66万円へ
裁判所は、「被告Y4の行為の違法性の程度は比較的低いことを併せ考慮すると、原告の信用毀損による損害額は50万円とするのが相当である。」としました。調査費用についても、「これを収集するための調査の内容、調査に至る経緯、被告Y4の行為の違法性の程度を総合考慮すると、上記業務委託費のうち10万円をもって、被告Y4の不正競争行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。」と述べています。
| 費目 | 原審(東京地裁) | 控訴審(知財高裁) |
|---|---|---|
| 信用毀損による無形損害 | 200万円 | 50万円 |
| 調査費用 | 50万円 | 10万円 |
| 弁護士費用 | 25万円 | 6万円 |
| 合計 | 275万円 | 66万円 |

▲ 図4 損害額の内訳(原審275万円 → 控訴審66万円)と減額の理由
主文は、原告(ニデック)の控訴を棄却し、Y4の控訴に基づいて原判決を変更してY4に66万円及び令和5年8月23日から支払済みまで年3%の割合による金員の支払を命じ、ニデックのその余の請求と被告会社(東洋経済新報社)・Y1・Y2・Y3に対する請求をいずれも棄却するというものです。訴訟費用は、認容額に照らし、第1審・第2審を通じて全額ニデックの負担とされました(民事訴訟法61条、64条ただし書)。
なお、本判決が上訴されたかどうかは判決文からは分かりません。
判例の意義・射程
- 報道機関側(東洋経済新報社ら)の免責が控訴審でも維持された。 原審が正当な業務行為として違法性を欠くとしたのに対し、控訴審は「国民の知る権利に資するものとして、正当な取材、報道活動の範囲内にある」と述べています。警告書の送付を受けた後の報道であること、寄稿者が情報提供者から資料を得ていたことを踏まえてもなお違法性が否定された点に、射程の広がりがあります。
- 「免責されないが違法性の程度は低い」という中間的な評価枠組み。 公益通報者保護法による免責は認められないとしつつ、通報内容の公益的性格を損害額の評価に取り込むという処理は、内部告発型の営業秘密事件における損害論のあり方を示すものとして参考になります。信用毀損・調査費用・弁護士費用のすべてが、この「違法性の程度」を経由して減額されています。
- 事後に公表された第三者委員会報告書が損害額の評価に影響した。 ニデックの設置した第三者委員会による報告書の公表(令和8年2月27日)は控訴審の口頭弁論終結(同年4月22日)の直前であり、控訴審段階で顕在化した事情が結論を動かした構造になっています。長期化する営業秘密訴訟において、係属中の外部調査の帰趨が損害論に跳ね返り得ることを示しています。
- 秘密管理性の認定は事実認定レベルの判断にとどまる。 前述のとおり、本判決は3要件の規範を示していません。営業秘密をめぐる裁判例では、従来から秘密管理性の認定が中心的な争点となってきたと指摘されており(末吉亙「三村量一先生と営業秘密」参照)、本判決もその系譜のなかで、表示と担当者管理という比較的簡素な措置が事案に即して評価された一例と位置づけられます。
- 立法段階から意識されていた緊張関係。 経済産業省の逐条解説も、営業秘密漏えいに対する刑事罰の整備をめぐる立法過程で、職業選択の自由や内部告発、報道の自由との関係から強い反対論があったことに触れています(同書95頁)。本判決は、この緊張関係を民事の損害論のなかで調整した実例といえます。
実務への影響・ポイント
企業の情報管理体制の視点: 本件でニデック側の秘密管理性を支えたのは、キャビネットへの「Internal Use Only」の表示と、稟議書業務担当者による管理、そしてそれを裏づける証人の一貫した供述でした。表示と管理主体の限定を、後日の証言で再現できる形で運用しておくことが実務上の要点です。また、紙の稟議書の廃棄ルールが守られていなかった点が結論を左右しなかったことは、運用の不徹底が直ちに秘密管理性を失わせるわけではないことを示しますが、逆にいえば、争いになれば必ず突かれる論点でもあります。定期的な運用点検と記録化をお勧めします。
内部告発への向き合い方の視点: 本判決は、公益通報者保護法の要件を満たさない情報提供であっても、その内容が会社の会計処理等に関わるものであれば、損害額の評価において「違法性の程度」として斟酌され得ることを示しました。企業としては、外部に情報が流れる前に受け止められる内部通報窓口の実効性を高めることが、結果的に最大の防御になります。他方、通報を検討する従業員の側からすれば、公益通報者保護法の保護は目的要件によって容易に外れ得るものであり、社外の第三者に資料を渡す行為には損害賠償責任が残るという点を、本件は具体的な金額とともに示しています。
報道対応の視点: 警告書を送付しても、それだけで媒体側の行為が違法になるわけではありません。本判決は、警告書送付の事実を踏まえてもなお「正当な取材、報道活動の範囲内」としました。報道を止める目的で形式的な警告書を送るより、事実関係の誤りがあるならその点を具体的に指摘し、訂正・反論の機会を確保するほうが実効的です。また、記者の目的(真に報道の目的か)が争点化することからも、取材経緯の記録は媒体側にとって重要な防御資料になります。
訴訟戦略の視点: 請求額1億1000万円に対し、認容額は66万円で、訴訟費用は全額ニデック(原告)の負担とされました。共同不法行為構成で報道機関側まで被告に取り込む戦略は、違法性阻却の壁が厚いことを本件は示しています。回収可能性と手続コストを踏まえた被告の選定が求められます。
まとめ
社内資料提供事件(ニデック株式会社対株式会社東洋経済新報社ら・知財高判令和8年(2026年)6月29日)の要点は次のとおりです。
- 東洋経済新報社・その関係者(Y1Y2)・寄稿者(Y3)の行為は、警告書の送付を受けたことを踏まえても「正当な取材、報道活動の範囲内」にあり、違法性を欠くとされた
- 資料を提供したニデックの元従業員(Y4)は、公益通報者保護法2条2項の「公益通報者」に該当せず、損害賠償義務を免れないとされた
- もっとも、提供資料の相当部分がニデックの会計処理や「経営スタイル」に関するもので、第三者委員会の調査報告書にも同旨の指摘があることを踏まえ、「その行為の違法性の程度は比較的低い」と評価された(裁判所が会計不正の存否そのものを認定したものではない)
- この評価を経由して、信用毀損・調査費用・弁護士費用のすべてが減額され、認容額は275万円から66万円になった
- 稟議書等の秘密管理性は、「Internal Use Only」の表示と担当者による保管、これを裏づける証言により認められ、廃棄ルールの不徹底は結論を左右しないとされた
情報管理と内部通報、そして報道対応は、いずれも「起きてから」では手当てが難しい領域です。営業秘密の管理体制の整備、内部通報窓口の設計、報道対応の初動について、当事務所では知的財産法・危機管理の観点から一体的にご相談をお受けしています。社内資料の持出しが疑われる場面や、報道機関から取材の申入れを受けた場面など、初動の判断に迷われた際はお早めにご相談ください。
出典・参考判例
本件
- 社内資料提供事件:知的財産高等裁判所第2部 令和8年(2026年)6月29日判決・令和8年(ネ)第10004号 損害賠償請求控訴事件(当事者=ニデック株式会社/株式会社東洋経済新報社ほか)
- 判決文PDF・裁判所ウェブサイト
- 原審:東京地方裁判所 令和5年(ワ)第70401号
- 原審の判決文は、本稿執筆時点で裁判所ウェブサイト(知的財産裁判例集・下級裁判所裁判例速報のいずれ)にも登載が確認できないため、リンクを付していません(2026年8月2日確認。同じ検索方法で控訴審の令和8年(ネ)第10004号は登載が確認できます)。本記事の原審に関する記述は、上記控訴審判決文PDFの記載に基づくものです。
参照条文
- 不正競争防止法(平成5年法律第47号)2条1項4号・5号・6号・7号・8号、2条6項、4条
- 民法(明治29年法律第89号)709条、719条1項
- 公益通報者保護法(平成16年法律第122号)2条2項、7条
- 民事訴訟法(平成8年法律第109号)61条、64条ただし書
参考文献
- 経済産業省知的財産政策室編『逐条解説 不正競争防止法』(令和6年4月1日施行版・経済産業省ウェブサイト公開PDF)38頁(2条6項の定義)、95頁(刑事罰整備をめぐる立法過程)、98〜105頁(2条1項4号〜8号の類型)、170〜171頁(4条の位置づけ)
- 末吉亙「三村量一先生と営業秘密」髙部眞規子=森義之編集代表『切り拓く──知財法の未来 三村量一先生古稀記念論集』(日本評論社・2024年)633〜644頁
本記事の記載範囲について
本記事は上記判決文PDFの記載に基づいています。当事者名は、判決文が実名で記載しているニデック株式会社(原告)及び株式会社東洋経済新報社(被告会社)についてのみ実名で表記し、判決文が符号で示している当事者(被告Y1・Y2・Y3・Y4及びA)は符号のまま記載しています。判決文に記載がないため本記事で触れていない事項として、本件記事の題名・掲載日・内容、被告Y4の在職期間、被告Y1・Y2の役職名、判決文中に符号Aで示された人物の氏名・役職、本判決の確定の有無があります。また、裁判所ウェブサイトには本判決の「要旨」が掲載されていますが、判決文PDFには含まれていないため、本記事では引用していません。
本記事は法的アドバイスを提供するものではなく、一般的な情報提供を目的としています。具体的な法律問題については、弁護士にご相談ください。