人気セレクトショップ「JOURNAL STANDARD」。ファッション好きなら知らない人はいないブランドですが、この商標を「非類似の商品・役務」にまで拡張して保護しようとしたところ、裁判所は「著名性が足りない」と判断しました。
JOURNAL STANDARD事件(知財高判平成22年2月25日・平成21年(行ケ)第10189号)は、防護標章登録の要件である「需要者の間に広く認識されている」という文言の意味について判断を示した重要な判決です。
防護標章制度とは?
商標権の効力は、原則として登録商標の指定商品・役務と同一または類似の範囲にしか及びません。しかし、商標が非常に有名になると、非類似の商品・役務に使用された場合でも出所混同のおそれが生じます。このような事態から著名商標を保護するために設けられたのが防護標章登録制度(商標法64条)です。
防護標章登録の特殊性として、①3条・4条が拒絶理由とされない、②不使用取消しの対象外、③第三者の商標選択を広く制約する、という点があります。
【判決全文について】 本判決の判決全文(裁判所HP)には、原登録商標の使用実態やファッション雑誌への掲載状況など、著名性の判断の基礎となった事実が詳細に記載されています。
事件の概要
原告Xは、「JOURNAL」「STANDARD」の2段書き商標の商標権者で、アパレルメーカーとして1977年に設立されたセレクトショップです。Xは防護標章登録出願をしましたが、特許庁は「需要者の間に広く認識された商標」とはいえないとして拒絶しました。
Xに有利な事情として、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」「シップス」と並ぶ大手であること、売上高500億円、全国展開、ファッション雑誌への多数掲載がありました。
裁判所の判断――著名性を否定
知財高裁は、防護標章の「需要者の間に広く認識されている」とは、「商品や役務が類似していない場合であっても、なお商品役務の出所の混同を来す程の強い識別力を備えていること、すなわち、そのような程度に至るまでの著名性を有していることを指す」と判示しました。
そして、以下の7つの事情から著名性を否定しました。
- 使用開始から約10年にとどまること
- 店舗は首都圏以外では大都市に限定
- ファッション雑誌への掲載で原登録商標付きのものはわずか
- ウェブサイトの閲覧状況が不明確
- 雑誌等以外の宣伝広告が限定的
- 売上高が市場全体の1%未満
- ファッションブランド関連書籍や百科事典で紹介なし
「需要者の間に広く認識されている」は条文によって意味が異なる
商標法には同一文言が複数の条文に登場しますが、求められる水準は異なります。
- 7条の2(地域団体商標):例えば隣接県程度の周知性
- 32条(先使用権):一定地域での周知性
- 4条1項10号:周知性
- 64条(防護標章):著名性(最も高い水準)
実務へのポイント
- 防護標章登録のハードルは非常に高く、売上高500億円規模でも認められない場合があります
- 防護標章が難しい場合は、多区分での商標登録や不正競争防止法による保護も検討すべきです
- 著名性の立証には、売上高・シェア、広告実績、メディア掲載、百科事典等での紹介など、多角的な証拠が必要です
まとめ
JOURNAL STANDARD事件は、売上高500億円、全国展開のセレクトショップブランドであっても、防護標章登録に必要な「著名性」は認められないとした判決です。防護標章の効力の大きさに見合った最も高い水準の知名度が要求されるのです。
出典・参考判例
- JOURNAL STANDARD事件(知財高判平成22年2月25日・平成21年(行ケ)第10189号)
本記事は法的アドバイスを提供するものではなく、一般的な情報提供を目的としています。具体的な法律問題については、弁護士にご相談ください。