商標権侵害の警告書が届いたら?弁護士が解説する初動対応5ステップ
ある日突然、「商標権侵害」を理由とする警告書が届いた――。多くの事業者にとって、これは初めての経験であり、不安や焦りを感じるのは当然のことです。
しかし、冷静に対応すれば、事態を悪化させずに解決できるケースは少なくありません。重要なのは、正しい順序で、正しい初動をとることです。
本記事では、商標権侵害の警告書を受け取った方が最初にやるべき5つのステップを、弁護士・弁理士の視点から解説します。
1. 商標権侵害の警告書とは何か
まずは、警告書がどのような書面であるかを正しく理解しましょう。
警告書の法的位置づけ
警告書とは、商標権者(またはその代理人弁護士)が、商標権を侵害していると考える相手方に対して送付する書面です。警告書自体には法的強制力はありません。裁判所の命令ではなく、あくまで相手方の「主張」です。
ただし、警告書を無視することは大きなリスクを伴います(後述します)。法的強制力がないからといって放置してよいわけではありません。
典型的な警告書の内容
商標権侵害の警告書には、一般的に以下のような内容が記載されています。
- 使用中止の要求:「貴社の商品名○○の使用を直ちに中止してください」
- 損害賠償の請求:「当社が被った損害として金○○万円をお支払いください」
- 回答期限:「本書到達後○日以内にご回答ください」(通常2〜3週間)
- 法的措置の予告:「ご回答なき場合は訴訟その他の法的手段を講じます」
例えば、あなたが「○○堂」という店名で菓子店を営んでいるところ、大手菓子メーカーから「当社の登録商標『○○堂』に類似するため使用を中止せよ」という警告書が届く、というケースが典型的です。
2. 警告書が届いたときにやるべき5ステップ
警告書を受け取ったら、以下の5つのステップを順に進めてください。
ステップ1:警告書の内容を正確に読む
まず、警告書に書かれている内容を冷静に、正確に読み取りましょう。確認すべきポイントは以下の3つです。
- 何を求めているか:使用中止だけなのか、損害賠償も請求しているのか、謝罪を求めているのか
- 誰が送っているか:商標権者本人か、代理人弁護士か。相手の規模や性質を把握します
- いつまでに回答が必要か:回答期限を確認し、カレンダーに記録してください
警告書には法律用語が多く含まれ、読みにくいと感じるかもしれません。しかし、上記の3点だけはこの段階で把握しておくことが大切です。
ステップ2:絶対にやってはいけないことを確認する
警告書を受け取った直後に、以下の行動を取ってしまうと、その後の対応が著しく不利になります。
- 無視する:回答期限を過ぎると相手方は訴訟に踏み切りやすくなります。また、裁判になった場合に「誠意ある対応をしなかった」として不利に働く可能性があります
- 慌てて相手に直接連絡する:法的知識がないまま電話やメールで連絡すると、「侵害を認めた」と取られかねない発言をしてしまうリスクがあります。特に「すみません」「今後は気をつけます」といった謝罪は避けてください
- すぐに使用を全面中止する:相手の主張が正しいとは限りません。安易に中止すると、交渉の余地を失い、本来守れた事業を手放すことになりかねません
- 自分で回答書を書く:法的に不利な内容を書いてしまったり、本来主張できるはずの反論を見落としてしまうリスクがあります
ステップ3:商標法に詳しい弁護士に相談する
警告書への対応は、商標法の専門知識が不可欠です。一般の弁護士ではなく、知的財産(特に商標法)に精通した弁護士に相談してください。
なぜ専門の弁護士でなければならないのか。それは、商標権侵害の判断には、商標の類似性判断(外観・称呼・観念の三要素)、指定商品・指定役務の類否判断、先使用権、商標的使用論、無効審判の可能性など、高度な専門知識が必要だからです。
また、弁理士の資格を併せ持つ弁護士であれば、相手の商標登録の有効性を調査し、必要に応じて特許庁に対する無効審判を請求するという「攻めの防御」も可能です。
相談のタイミングは、回答期限の少なくとも1週間前までが理想です。期限が迫っている場合でも、まずは電話で状況を伝えれば、期限延長の交渉を含めた対応が可能です。
ステップ4:権利の有効性と侵害の成否を確認する
弁護士と協力して、以下の点を確認します。
- 相手の商標登録は有効か?:商標登録が存続期間内か、更新がなされているか、取消審判や無効審判の対象となり得るかを確認します
- 指定商品・指定役務は何か?:商標権の効力は、登録された指定商品・指定役務の範囲に限られます。自社の商品・サービスがその範囲に入っていなければ、侵害は成立しません
- 本当に「類似」か?:商標の類似性は、外観(見た目)、称呼(読み方)、観念(意味)を総合的に判断します。文字が少し似ているだけでは、必ずしも「類似」とは判断されません
- 先使用権は成立するか?:相手の商標登録出願前から、自社が同じ商標を使用していた場合、先使用権(商標法32条)が認められる可能性があります
例えば、相手が「第30類:菓子」で商標登録をしているが、あなたは「飲食サービスの提供」として店名を使用している場合、指定商品・指定役務が異なるため侵害が成立しない可能性があります。
ステップ5:方針を決定する
調査の結果を踏まえ、対応方針を決定します。主な選択肢は以下のとおりです。
- 反論する:非侵害であることを根拠とともに主張する回答書を送付します
- 交渉する:使用態様の変更やライセンス契約など、双方が受け入れ可能な着地点を探ります
- 使用を変更する:侵害リスクが高い場合、商標やロゴを変更して事業を継続します
- 無効審判を請求する:相手の商標登録に無効理由がある場合、登録自体を取り消す手続きをとります
- 訴訟に備える:交渉が決裂した場合に備え、証拠の確保や訴訟方針の準備を進めます
どの方針が最適かは、侵害成否の見通し、事業への影響度、コスト、相手方の姿勢など、さまざまな要素を総合的に判断して決定します。
3. よくある防御戦略
警告書への対応において、被警告者側が取り得る防御戦略は複数あります。以下に主なものを紹介します。
非類似の主張
相手の登録商標と自社の使用する標章が「類似」しないことを主張します。商標の類否判断は、外観・称呼・観念を総合的に考慮し、取引の実情も踏まえて行われます。一見似ているように見えても、取引の実情を考慮すれば非類似と判断されるケースは少なくありません。
先使用権の主張
商標法32条に基づく先使用権です。相手の商標登録出願日より前から、不正競争の目的なく同一・類似の商標を使用し、かつ需要者の間に広く認識されていた場合に認められます。使用開始時期を示す証拠(開業届、広告物、取引書類など)の確保が重要です。
商標的使用でないことの主張
自社の使用態様が、出所表示として機能する「商標的使用」に該当しない場合、商標権侵害にはなりません。たとえば、商品の品質や特徴を説明するための記述的使用や、装飾的なデザインとしての使用がこれに該当する場合があります。
相手商標の無効審判
相手の商標登録に無効理由がある場合、特許庁に対して無効審判を請求できます。たとえば、出願時に既に周知であった他人の商標と類似していた場合や、普通名称・記述的表示にすぎない場合などです。無効審判が認められれば、警告の根拠である商標権自体が消滅します。弁理士資格を持つ弁護士であれば、この手続きもワンストップで対応可能です。
権利濫用の抗弁
相手が商標を使用しておらずもっぱら警告・訴訟による利益を目的としている場合や、警告の目的が不当な競争排除にある場合には、権利濫用として請求が認められないことがあります。
4. 警告書を無視するとどうなるか
「無視すれば相手も諦めるのではないか」と考える方もいるかもしれません。しかし、警告書の無視は以下のリスクを伴います。
- 訴訟の提起:相手方は「交渉の余地なし」と判断し、訴訟に踏み切る可能性が高まります。訴訟になれば、時間・費用・精神的負担が大幅に増加します
- 仮処分の申立て:本案訴訟に先立ち、裁判所に使用差止めの仮処分を申し立てられる可能性があります。仮処分が認められると、裁判の結論が出る前に使用を中止せざるを得なくなります
- 裁判での心証悪化:警告書に対して何ら応答しなかったことが、裁判官の心証に悪影響を与える可能性があります。「侵害の認識がありながら放置した」と評価されるリスクがあります
警告書には、必ず何らかの対応(回答)をすることをお勧めします。
5. 弁護士費用の目安
費用への不安から弁護士への相談をためらう方も多いですが、早期に専門家に相談することで、結果的にコストを抑えられるケースがほとんどです。
| サービス内容 | 費用の目安 |
|---|---|
| 初回法律相談(60分) | 11,000円(税込) |
| 警告書の分析・意見書作成 | 5万5,000円〜(税込) |
| 回答書の作成・送付 | 11万円〜(税込) |
| 交渉代理(着手金) | 22万円〜(税込) |
| 訴訟代理(着手金) | 33万円〜(税込) |
※事案の難易度により変動します。正式なお見積りは初回相談時にご提示します。詳しくは弁護士費用ページをご覧ください。
6. まとめ — 警告書が届いたら、まず専門家にご相談ください
商標権侵害の警告書が届いたときの対応をまとめます。
- 警告書には法的強制力はないが、無視してはならない
- 慌てて相手に連絡したり、使用を全面中止してはいけない
- 商標法に詳しい弁護士に、回答期限前に相談する
- 相手の権利の有効性と侵害の成否を調査する
- 調査結果を踏まえ、最適な方針を決定する
対応を誤れば事態は悪化しますが、正しい初動をとれば、事業を守りながら解決に至ることは十分に可能です。
虎ノ門法律特許事務所にご相談ください
当事務所では、商標権侵害の警告書を受け取った方からのご相談を数多くお受けしています。代表弁護士の大熊裕司は弁護士・弁理士の両資格を保有しており、商標権の有効性の調査から回答書の作成、交渉、訴訟対応まで一貫してサポートします。
「警告書が届いたが、どうすればいいかわからない」「回答期限が迫っている」という方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
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