平成29年2月24日東京地裁判決 テントの形態模倣事件

 本件訴訟は、原告が、被告の販売するテントは、原告の商品の形態を模倣したものであると主張して、被告に対し、不競法2条1項3号、3条1項、2項に基づき、被告テントの販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、同法4条、5条2項に基づき、損害合計500万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年9月4日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案です。  本件訴訟の争点は、被告の行為が不競法19条1項5号イ(適用除外行為)の「日本国内において最初に販売された日から起算して三年を経過した商品について、その商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為」に該当するかどうかです。
 原告テントの販売開始時期は平成22年10月頃であるのに対して、被告テントの販売が開始されたのは、そこから3年以上経過した平成27年5月2日なので不競法19条1項5号イにより同法3条及び4条は適用されないとの主張を被告はしました。
 これに対して、原告は、平成22年10月頃から販売しているのは第1世代の原告テントであって,本件で問題としている平成25年10月15日から販売している第2世代のテントであるとの主張をしたので、不競法19条1項5号イの「日本国内において最初に販売された日」がどちらになるかが問題になりました。
 結論からいうと、東京地裁は、第1世代の原告テントの販売開始日が「日本国内において最初に販売された日」に該当すると判断して、被告による被告テントの販売には、不競法19条1項5号イの適用除外事由があるとして、原告の請求を棄却しました。
 東京地裁の判断は以下の通りです。

東京地裁の判断
「不競法2条1項3号及び19条1項5号イは,他人の『商品』が日本国内において「最初に販売された日』から起算して3年を経過しない間に限り,当該商品の形態を模倣した商品の譲渡行為等を不正競争行為に当たるとしたものである。その趣旨は,同法1条の事業者間の公正な競争等を確保するという目的に鑑み,開発に時間も費用もかけず,先行投資した他人の商品形態を模倣した商品を製造・販売し,投資に伴う危険負担を回避して市場に参入しようとすることは公正とはいえないから,そのような行為を不正競争行為として禁ずることにしたものと解される。このことからすれば,不競法19条1項5号イの『最初に販売された日』に係る『商品』とは,保護を求める商品の形態を具備した最初の商品を意味するのであって,このような商品の形態を具備しつつ若干の変更を加えた後続商品を意味するものではないと解すべきである。原告は,原告テントの第2世代を第1世代と比較すると,①高さ調節を変更した点,②シルバーコーティングによるUVカット加工を施した点,③支柱を覆う細長い天幕のデザインを変更した点,④収納バッグの色を変更した点,⑤耐水圧及びシームシーリングを施した点で異なるから,上記『商品』とは第2世代の原告テントを指し,その販売開始日である平成25年10月15日を『最初に販売された日』とすべき旨主張する。しかし,本件全証拠を精査しても,そもそも原告テントに第1世代と第2世代があり,第2世代は第1世代と上記①ないし⑤の全ての点で異なっていることを示すに足りる的確な証拠は見当たらない。・・・(中略)・・・仮に原告の主張するとおり,原告テントに第1世代と第2世代があり,第2世代は第1世代と上記①ないし⑤の全て点で異なっているとしても,・・・(中略)・・・原告が保護を求める商品の形態は第1世代から具備されていたものというべきである。・・・(中略)・・・以上からすれば,原告の主張する原告テントの第2世代における変更点は,そもそも不競法2条1項3号の『商品の形態』を変更するものではないか,仮に『商品の形態』を変更するものであるとしても,原告テントの第1世代の商品形態を具備しつつ若干の変更を加えたものにすぎないというべきであるから,第1世代と第2世代は実質的に同一の形態であるものといわざるを得ない。以上によれば,原告の主張を前提としても,原告が保護を求める商品の形態を具備した最初の商品は,第2世代の原告テントではなく,第1世代の原告テントであるというべきである。そして,第1世代の原告テントが日本国内で最初に販売されたのは平成22年10月頃というのであるから(前記第2,2(2)),被告テントの販売開始時点である平成27年5月2日時点では,既に3年が経過していることになる。したがって,被告による被告テントの販売には,不競法19条1項5号イの適用除外事由があり,そもそも同法3条及び4条の適用がない。」

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