平成29年2月23日判決 NYLON事件

 原告(カエルム株式会社)は、「NYLON」という欧文字を横書きしてなる商標(以下、「本願商標」とする)について、平成25年9月30日にした登録出願(商願2013-76166号)の分割出願として、平成26年6月9日に第9類,第18類,第25類及び第35類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、登録出願(商願2014-47082以下、「本願」とする)をしましたが,平成27年3月26日付けで拒絶査定を受けたので、同年6月26日付で、拒絶査定不服審判請求をしました(不服2015-12178号)。
 原告は、その後2回手続補正を行いその結果、本願商標の指定商品及び指定役務は、第35類「被服の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」となりました(本願役務)。
 特許庁は、この不服審判に対して、平成28年6月24日「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をしましたが、原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を起こしました。
 審決理由の要点は、本願商標「NYLON」は、「(合成繊維の)ナイロン」を表す語として一般に知られているので、本願商標を、その指定役務である被服、履物及びかばん類を取扱商品とする小売等役務に使用するときは、これに接する需要者は、「当該小売等役務で取り扱われる商品がナイロン製の商品であること」と受け取るであろうことから、自他役務識別機能を果しえないと考えられるので商標法3条1項6号に該当するというものです。
 原告であるカエルム株式会社は、「NYLON/JAPAN」というファッション誌を発行している会社です。
 原告は、本願商標は、各構成文字及び全体の構成態様に特徴があるから「NYLON」の欧文字を「普通に用いられる方法で」横書きしてなるものではないこと、大文字「NYLON」が単独で商品の原材料として商品に表示される状況にはないこと、アンケート調査を実施したところ「NYLON」を「ナイロン」と読めた人は回答者の約29%しかおらず、本願商標から直ちに合成繊維「ナイロン」を想起する者の数は少ないので品質等表示にあたらないこと、原告が出版している雑誌「NYLON/JAPAN」との関係に基づいて識別標識としての機能を発揮していることなどを理由に商標法3条1項6号には該当しないと主張しました。

 知財高裁は、本願商標は、「Futura」と称する書体を太字で表したものと酷似しており、欧文字の大文字「NYLON」を一般に知られている書体によりありふれた大きさと配置で横書きしたにとどまるものであるから,欧文字の大文字「NYLON」普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認識されるにとどまるものと認められ、本願役務は、「被服,履物,かばん類及び袋物の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」であり、取扱商品の品揃え、陳列、接客サービス等といった最終的に取扱商品の販売により収益を上げるためのサービス活動をいい、顧客の商品選択が容易となるように、商品の原材料(素材)その他の特長等を説明することも含まれるから、本願商標を、その指定役務に使用した場合、これに接する需要者は、当該指定役務の小売の業務における取扱商品である被服、履物、かばん類及び袋物の原材料(素材)として相当程度利用されているナイロンを表したものと認識するにとどまり、役務の出所を表示するものと認識するとはいえないから、本願商標は、自他役務の識別力を欠くものと認められるので商標
法3条1項6号に該当するとした審決の判断に誤りはないとしました。

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