商品形態模倣行為

概要他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡する行為他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡する行為(商品形態模倣行為)は、不正競争行為とされています(不正競争防止法2条1項3号)。

3号の趣旨は、他人が商品化のために資金・労力を投下した成果を他に選択肢があるにもかかわらずことさら完全に模倣して、何らの改変を加えることなく自らの商品として市場に提供し、その他人と競争する行為は、競争上、不正な行為として位置づけられる必要があるからであるとされています(逐条解説不正競争防止法64頁)。

商品形態は、通常意匠法により保護されるのが原則ですが、意匠登録には時間と費用がかかり、商品サイクルが早い分野では意匠登録により権利保護を図るのは現実的ではないケースがままあります。そのような場合は、デッドコピー規制として、不正競争防止法により商品形態模倣行為を抑止するメリットがあります。

商品の形態商品の形態」とは、「需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感」と定義されています(不競法2条4項)。
上記定義から、「商品の形態」とは具体的な形状等を意味しており、抽象的な商品のアイデアは含まれません。

(1)商品内部の形態上記のように、「商品の形態」の定義が、「需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識 することができる商品の外部及び内部の形状」とされている以上、商品内部の形態については原則として保護を受けません。しかし、通常の使用時に、需要者に外部から容易に認識され、需要者に注目される場合は、商品内部の形態であっても保護されることになります。

(2)セット商品セット商品の組み合わせ自体はアイデアに過ぎませんので、商品形態には該当しません。しかし、セット商品の外観については、組み合わされたセット自体を一つの商品と考えることができますので、商品形態に該当するとも考えられます。
小熊タオルセット事件(大阪地判平成10年9月10日知的裁集30巻3号501頁)は、小熊の人形やタオル類等を包装箱等に収納したセット商品全体の形態を中心に、「商品の形態」を捉えています。
その他、宅配鮨事件(東京地判平成13年9月6日判時1804号117頁)でも、一般論として、使用する容器、ネタ及び添え物の種類、配置等によって構成されるところの1個1個の鮨を超えた全体としての形状、模様、色彩及び質量感などが商品の形態となり得ると判示しています。

(3)商品の容器・包装商品の容器・包装が「商品の形態」と言えるかは、定義上明らかではありません。
この点、ワイヤーブラシセット事件(大阪地判平成14年4月9日判時1826号132頁)では、商品の容器や包装についても、商品と一体となっていて、商品自体と容易に切り離せない態様で結びついている場合には、同号の「商品の形態」に含まれるとしたうえで、包装(台紙及びブリスターパック)も「商品の形態」に含まれると判示しました。

模倣不正競争防止法2条5項では、「模倣」とは、「他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう」と定義されています。

「依拠」とは、「当該他人の商品形態を知り、これを形態が同一であるか実質的に同一といえる程に酷似した形態の商品と客観的に評価される形態の商品を作り出すことを認識していること」とされています(ドラゴンキーホルダー事件(東京高判平成10年2月26日知的裁集30巻1号65頁)。

また、上記東京高判は、「実質的同一性」について、「他人の商品と作り出された商品を対比して観察した場合に、形態が同一であるか実質的に同一といえる程に酷似していること」を意味するとしています。

「依拠」とは「依拠」とは、「他人の商品形態を知り、これを形態が同一であるか実質的に同一といえる程に酷似した形態の商品と客観的に評価される形態の商品を作り出すことを認識していること」とされています(ドラゴンキーホルダー事件(東京高判平成10年2月26日判時1644号153頁))。

このように、「依拠」したといえるか否かは、主観面が問題となるので、依拠性が訴訟で争われた場合、それをどのような方法で立証していくかが大きな問題となります。この点は、著作権侵害事件における依拠性の立証と類似するものといえます。

(1)アクセス可能性被告が原告商品にアクセスすることができた状況であれば、アクセス可能性があるといえます。例えば、原告商品の販売時期の方が被告商品の販売時期より先行している事実、両商品の販売エリアが重複している事実、原告商品の市場での認知度が相当高かった事実等の間接事実を、原告は証明することになります。

(2)商品形態の類似性被告商品の形態が原告商品の形態と偶然似てしまったような場合であれば、依拠性は認められず、形態模倣行為に該当しないことになります。しかし、単純な形態であればともかく、それなりに個性がある商品形態の場合、殆ど同じ形態の商品が偶然に作り出されるとは通常考えられず、両商品の形態が似ていれば似ているほど、依拠性は認められやすいといえます。

(3)開発の時間的前後関係被告商品の方が原告商品よりも先に開発していたという事実が証明された場合、被告商品が原告商品に依拠していないことを示す間接事実となり得ます。

形態の実質的同一性「模倣」のもう一つの要件として、原告商品に依拠して作成された被告商品の形態が、原告商品の形態と実質的に同一であることが必要です。実施的に同一であるか否かは、原告商品と被告商品の形態を対比して、その共通点がありふれたものであるか否か、創作的なものであるか、他方相違点は些細なものであるか否か等の観点から、総合的に判断されます。

なお、上記実質的同一性について、需要者を基準に判断するのか、競業者を基準に判断するのか争いがありますが、裁判実務でも明確にはなっていません。

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