取消2012 - 300291「ASPIRE」

登録第3194846号商標「ASPIRE」(以下「本件商標」という。)は、指定商品を第12類「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,陸上の乗物用の機械要素,乗物用盗難警報器」を指定商品として、平成8年9月30日に設定登録されましたが、請求人は、本件商標は本件審判の請求前3年以内に、日本国内において商標権者等に使用されていないとして、商標法50条の規定により、不使用取消審判を請求しました。本件不使用取消審判においては、「中古車」への本件商標の使用が「自動車」についての使用と認められるかどうかが判断されており、興味深い内容となっています。審決の内容は以下の通りです。

当審の判断「商標権者(被請求人)は、本件商標『ASPIRE』を付した自動車を1998(平成10)年8月から2003(平成15)年3月まで新車として販売したと推認される。また、東日本三菱自動車販売株式会社は、商標権者の連結子会社であって、販売会社として、『三菱自動車(商標権者)又は三菱自動車(商標権者)の指定する者が製造し、三菱自動車(商標権者)が供給する自動車(以下『自動車』という。)の販売促進に資するため、中古車販売体制を充実させ、積極的で健全な中古車販売を行うことに努める』ことが課せられており、2011(平成23)年7月に、上記新車として販売された自動車のうちの1台(車台番号『EA7A-0403727』)を中古車として取引したことが認められる。そして、上記の中古車が取引された平成23年7月は、本件審判の請求の登録前3年以内に該当するものである。...認定した事実を総合して判断すれば、商標権者である『三菱自動車工業株式会社』は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した『自動車』について、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者の連結子会社である東日本三菱自動車販売株式会社を介在させ、中古車として販売したことが推認できる。...商標権者等が登録商標の使用をしている場合とは、特段の事情のある場合はさておき、商標権者等が、その製造に係る商品の販売等の行為をするに当たり、登録商標を使用する場合のみを指すのではなく、商標権者等によって市場に置かれた商品が流通する過程において、流通業者等が、商標権者等の製造に係る当該商品を販売等するに当たり、当該登録商標を使用する場合を含むものと解するのが相当である。このように解すべき理由は、今日の商品の流通に関する取引の実情に照らすならば、商品を製造した者が、自ら直接消費者に対して販売する態様が一般的であるとはいえず、むしろ、中間流通業者が介在した上で、消費者に販売することが常態であるといえるところ、このような中間流通業者が、当該商品を流通させる過程で、当該登録商標を使用している場合に、これを商標権者等の使用に該当しないと解して、商標法50条の不使用の対象とすることは、同条の趣旨に反することになるからである。(知財高裁平成24年(行ケ)第10310号、同25年3月25日判決参照) 本件においてこれをみるに、東日本三菱自動車販売株式会社は、商標権者の連結子会社であって、販売会社として、『自動車の販売促進に資するため、中古車販売体制を充実させ、積極的で健全な中古車販売を行うことに努める』ことが課せられていることからすれば、商標権者の製造に係る商品を販売するに当たり、本件商標を使用したとみて差し支えないものであり、これを商標権者が本件商標を使用している場合に含むものと解することも可能であって、わざわざ東日本三菱自動車販売株式会社を本件商標の通常使用権者としなければならない理由はない。」として、商標権者がその請求に係る指定商品中の「自動車」について、本件商標の使用をしていたことを証明したと認め得るから取消すことはできないとしました。

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