Yチェア事件 知財高裁平成23年6月29日判決

原告は、指定商品を第20類「家具」(拒絶査定不服審判請求後に指定商品を「肘掛椅子」に減縮補正)として肘掛椅子の立体形状について立体商標で商標登録出願を行いましたが、3条1項3号に該当するとして拒絶査定を受けた為、拒絶査定不服審判を請求しましたが、請求不成立となりました。原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。
知財高裁は、「本願商標の特徴的形状を備えた原告製品(肘掛椅子)は、参加人により1950年(昭和25年)に発売されて以来、材質や色彩にバリエーションはあるものの、その形状の特徴的部分において変更を加えることなく、継続的に販売されている。...。原告製品の販売地域は全国に及んでおり、資料等により、判明している限りでも、平成6年7月から平成22年6月までの間に、合計9万7548脚が販売されており、このような販売数量は、食卓椅子の販売数量全体と比較すれば必ずしも多いとはいえないものの、1種類の椅子としては際だって多いといえる(なお、原告製品は、既製品であり、注文を受けてから作る受注品ではない。)。原告製品は、1960年代以降、日本国内においても、雑誌等の記事で紹介され、日本で最も売れている輸入椅子の一つとの評価がされている。また、原告製品は、インテリア用語辞典、インテリアコーディネーター試験問題集等の家具業界関係者向けの書籍や、中学生向けの美術の教科書に掲載されるなどの実績を残している。さらに、原告により相当の費用を掛けて、多数の広告宣伝活動が行われている。原告は、原告製品について、国内有数の家具展示会等に出展したり、自社ショールーム、百貨店等における展示会を開催したりするなど、原告製品の周知性を高めるための活動を継続して行った。こうした継続的な広告宣伝活動等により、原告製品は、一部の家具愛好家に止まらず、広く一般需要者にも知られるものとなっているということができる。...【1】原告製品は、背もたれ上部の笠木と肘掛け部が一体となった、ほぼ半円形に形成された一本の曲げ木が用いられていること、座面が細い紐類で編み込まれていること、上記笠木兼肘掛け部を、後部で支える『背板』(背もたれ部)は、『Y』字様又は『V』字様の形状からなること、後脚は、座部より更に上方に延伸して、『S』字を長く伸ばしたような形状からなること等、特徴的な形状を有していること、【2】1950年(日本国内では昭和37年)に販売が開始されて以来、ほぼ同一の形状を維持しており、長期間にわたって、雑誌等の記事で紹介され、広告宣伝等が行われ、多数の商品が販売されたこと、【3】その結果、需要者において、本願商標ないし原告製品の形状の特徴の故に、何人の業務に係る商品であるかを、認識、理解することができる状態となったものと認めるのが相当である。」として3条2項該当性を認め、審決を取消しました。

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