喜多方ラーメン事件 知財高裁平成22年11月15日判決

原告は、指定役務を第43類「福島県喜多方市におけるラーメンの提供」とする地域団体商標として「喜多方ラーメン(標準文字)」(以下、「本願商標」とする)の商標登録出願を行いましたが、本願商標は商標法7条の2第1項の要件を具備しないとして拒絶査定を受けたため拒絶査定不服審判を請求しました。そこで原告は拒絶査定不服審判を請求しましたが、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を受けたので、原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。本件審決取消訴訟の争点は【1】7条の2第1項の解釈の誤り、【2】7条の2第1項該当性の判断の誤りの2点です。
知財高裁は、「3条2項で同条1項各号で登録できないとされている商標が、使用により登録が認められるとしても、『何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの』との要件、すなわち識別力を発揮できるまでの程度の要件を充たさなければならないのに対し、7条の2第1項柱書では、使用により『自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている』との要件を充たすことを要件としており、前記の地域団体商標の立法経緯を踏まえてみると、後者の要件は前者の要件を緩やかにしたものと解するのが相当ということになる。しかし、この要件緩和は、識別力の程度(需要者の広がりないし範囲と、質的なものすなわち認知度)についてのものであり、当然のことながら、構成員の業務との結び付きでも足りるとした点において3条2項よりも登録が認められる範囲が広くなったのは別としても、後者の登録要件について、需要者(及び取引者)からの当該商標と特定の団体又はその構成員の業務に係る商品ないし役務との結び付きの認識の要件まで緩和したものではない。...審決の7条の2第1項の解釈に誤りはなく、『使用をされた結果自己又はその構成員に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識された』実際に使用している商標及び役務、使用開始時期、使用期間、使用地域、当該営業の規模(店舗数、営業地域、売上高等)、広告宣伝の方法及び回数、一般紙、雑誌等の掲載回数並びに他人の使用の有無等の事実を総合的に勘案するのが相当である。との要件の充足の有無を判断するに際して、審決が説示したとおり実際に使用している商標及び役務、使用開始時期、使用期間、使用地域、当該営業の規模(店舗数、営業地域、売上高等)、広告宣伝の方法及び回数、一般紙、雑誌等の掲載回数並びに他人の使用の有無等の事実を総合的に勘案するのが相当である。...『喜多方市内のラーメン店』では、喜多方市内のラーメン店(通し番号で124店)中、原告の会員とされているのは47店であり、『喜多方市内のラーメン店』でも、喜多方市内のラーメン店(通し番号で125店)中、原告の会員とされているのは44店である。そうすると、喜多方市内でラーメンを提供する店のうち、原告に加入しているものは半数に満たない。...原告(その前身たる団体を含む。)又はその構成員が『喜多方ラーメン』の表示ないし名称を使用し、喜多方市内においてラーメンの提供を行うとともに、指定役務『福島県喜多方市におけるラーメンの提供』に関する広告宣伝活動を積極的に行っていたとしても、喜多方市内のラーメン店の原告への加入状況や、原告の構成員でない者が喜多方市外で相当長期間にわたって『喜多方ラーメン』の表示ないし名称を含むラーメン店やラーメン店チェーンを展開・運営し、かつ『喜多方ラーメン』の文字を含む商標の登録を受けてこれを使用している点にもかんがみると、例えば福島県及びその隣接県に及ぶ程度の需要者の間において、本願商標が原告又はその構成員の業務に係る役務を表示するものとして、広く認識されているとまでいうことはできないというべきである。なお、喜多方市内の製麺業者によるラーメンの麺の販売実績等を考慮しても、この結論が左右されるものではない。」として審決に誤りはないとしました。

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