VOSS事件 知財高裁平成24年2月21日判決

本件は、訴外Sによる異議申立に対する取消決定取消請求事件です。原告と訴外Iは、アルファベットとカタカナの二段書きからなる商標「VOSS\フォス」(以下、「本件商標」とする。)の商標登録を受けていましたが、訴外Sにより登録異議申立がなされました。その結果、本件商標は4条1項11号に該当するとして、取消決定を受けました。原告はこれを不服として、本件訴訟を行いました。
知財高裁は、「本件商標は、...その上段に『VOSS』の欧文字、下段に『フォス』の片仮名が記載されている。そして、証拠によれば、『VOSS』とはノルウェー産のミネラルウォーターのブランドで、ノルウェー語で『滝』という意味を有し、ノルウェーの山間の小さな町の名であるが、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語では『VOSS』という語は日常レベルの語としては存在しないことが認められ、以上からすれば、我が国において、本件商標から特段の観念が生じるとはいえず、また、本件商標の下段に『フォス』と記載されていることから、原則として『フォス』との称呼が生じるものといえる。この点につき、本件決定は、本件商標においては『VOSS』の欧文字部分から、これを英語風に読んだ『ヴォス』の称呼が生じる旨認定し、被告もその旨主張する。確かに、『VOSS』を英語読みすると『ヴォス』となるため、本件商標からは『ヴォス』との称呼も生じ得るものと解される。しかし、一般に、欧文字と仮名文字とを併記した構成の商標において、その仮名文字部分が欧文字部分の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識できるときは、仮名文字部分より生ずる称呼が、その欧文字部分より生ずる自然の称呼とみるのが相当である。...本件商標と引用各商標とでは、そもそもイラストの有無を含め、外観において大きく異なる上、観念においても、本件商標からは特段の観念が生じないのに対し引用各商標からは、『缶コーヒーのボス』や『パイプをくわえた男性』といった観念が生じるものである。そして、本件商標からは、基本的に『フォス』との称呼が生じるのに対し、引用各商標からは、『ボス』、『ボスコーヒー』ないし『サントリーコーヒーボス』との称呼が生じ、ここでも非類似というべきである。 以上のとおり、本件決定が『本件商標と引用各商標とは類似する』とした判断は誤りというべきであり、指定商品の類否について判断するまでもなく、本件商標と引用各商標につき商標法4条1項11号を適用した本件決定は誤りである。」との判断を示し、特許庁の決定を取消しました。

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