ハイガード事件 知財高裁平成27年9月30日判決

原告は、指定商品を第17類「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート、繊維と貼り合わせたプラスチックシート」等とする登録第5041167号「ハイガード\HIGUARD」(以下「本件商標」とする。)の商標権者です。
被告は本件商標に対し、商標法50条1項による不使用取消審判(取消2013-300258号事件、以下「本件審判請求」とする。)を請求しました。特許庁は、本件審判請求について審理し、「登録第5041167号商標の指定商品中、第17類『繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート、繊維と貼り合わせたプラスチックシート、シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品、その他のプラスチック基礎製品』については、その登録は取り消す。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本が原告に送達されました。取消の理由は、原告は「ハイガード」及び「High-guard」の商標又は「ハイガード」のみの商標は使用していましたが、これらの商標の使用は本件商標と社会通念上同一のものの使用とみられないとの判断によるものでした。原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。本件審決取消訴訟の争点は、「ハイガード」及び「High-guard」の商標又は「ハイガード」のみの商標の使用が「ハイガード\HIGUARD」と社会通念上同一の商標の使用と言えるかです。
知財高裁は、「本件商標は、いずれもゴチック体による、片仮名文字の『ハイガード』を上段に、欧文字の『HIGUARD』を下段に配してなる商標である。これに対して、本件使用商標2及び3は、片仮名文字の『ハイガード』のみからなる商標である点において、本件商標と外観上の相違が認められることは明らかである。一方で、本件商標の上段の『ハイガード』の4文字の片仮名文字と下段の『HIGUARD』の7文字の欧文字は、欧文字1文字の大きさが片仮名1文字の約8割程度の大きさであるが、上段と下段との間隔は近接し、それぞれの文字部分の左右の幅は同一であり、その両端の位置がそろっており、全体として上段及び下段の文字部分がまとまりよく配置されていること、『GUARD』(guard)の語は、『警戒。監視。防御。』等の意味を有する英単語として我が国において一般的に認識されており、『HIGUARD』の欧文字中の『GUARD』の部分から『ガード』の称呼が自然に生じることからすると、『ハイガード』の片仮名文字は『HIGUARD』の欧文字の表音を示したものとして、両者は一体的に把握され、本件商標全体から『ハイガード』の称呼が生じるものと認められる。また、本件使用商標2及び3から『ハイガード』の称呼が生じることは明らかである。そうすると、本件商標と本件使用商標2及び3の称呼は同一であることが認められる。そこで、本件商標と本件使用商標2及び3から生ずる観念の異同について検討する。...しかし、『ハイ』の部分は、英語の『high』に由来し、『程度の高いこと。高度。高級。』などの意味を有する外来語として、また、『ガード』の部分は、英語の『guard』に由来し、『警戒。監視。防御。』などの意味を有する外来語として、いずれも一般的に使用されていること(広辞苑第六版)、また、片仮名の『ハイ』は、例えば、『ハイスピード』、『ハイジャンプ』、『ハイクラス』などのように、その後に続く外来語と結合して一連表記され、『高い○○』、『高度な○○』の意味で使用される用例が一般的にみられること(広辞苑第六版)からすれば、本件審判請求に係る指定商品である第17類「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層シート、繊維と貼り合わせたプラスチックシート、シート状・フィルム状・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品、その他のプラスチック基礎製品」に係る取引者、需要者が、片仮名の『ハイガード』からなる商標に接した場合には、これを上記のような意味を有する『ハイ』の語と『ガード』の語が結合した用語として認識すると考えられる。そして、これを前提とすれば、片仮名の『ハイガード』からなる商標からは、『高度な防御』といった観念が生ずるというべきであり、更には、これが上記指定商品に使用されることを想定すると、これらの商品の用途や性能等に関連した印象が生ずることの結果として、『物を保護する程度が高い。』といった観念が生ずるものと認めることができる。片仮名の『ハイガード』からは、上記のような観念が生ずるといえるところ、本件商標は、片仮名の『ハイガード』の下に『HIGUARD』の欧文字が配されていることから、これらを全体としてみた場合にも、上記と同様の観念が生ずるといえるかが問題となる。...本件商標の上段の『ハイガード』の片仮名文字は下段の『HIGUARD』の欧文字の表音を示したものとして両者は一体的に把握されるものといえるから、本件商標に接した取引者、需要者においては、欧文字の『HIGUARD』について、片仮名の『ハイガード』の『ハイ』の語に相応する『HI』の語と、片仮名の『ハイガード』の『ガード』の語に相応する『GUARD』の語とが結合したものであることを自然に認識するというべきである。そして、このうち、『GUARD』の語が、『警戒。監視。防御。』等の意味を有する英単語として、我が国においても一般的に認識されている...『HI』の語については、『やあ。』などの呼び掛けを表す間投詞に当たる英単語としての用例が一般的ではあるが、そのような間投詞が他の用語と結合して一連表記される用例は一般的ではないから、上記のように『GUARD』の語と結合して一連表記された『HI』の語が、間投詞の『HI』の語であると認識されることは考え難い。他方、『hi』の語には、『高い。高度な。高級な。』等の意味を有する英単語『high』の略語としての意味もあり(甲34)、しかも、『hi』の語には、例えば、高品位テレビジョンの日本方式の愛称として『hi-vision』、高度先端技術を表すものとして『hi-tech(technologyの略)』などのように、その後に続く英単語と結合して一連表記され、『高度な○○』の意味で使用される用例が、我が国においても一般的にみられるところである。以上のような『HI』の語及び『GUARD』の語に対する我が国における一般的な認識を前提とすれば、上記のような観念が生ずるものと認められる片仮名の『ハイガード』の下に配された『HIGUARD』の欧文字から構成された本件商標に接した本件審判請求に係る指定商品の取引者、需要者においては、これを上記用例と同様に、『HI』は『high』の略語として認識し、あるいは『HI』の語から『high』の語を想起又は連想し、本件商標は、『high』の語を表す『HI』と『警戒。監視。防御。』等の意味を有する英単語の『GUARD』とが結合して一連表記されたものであって、上段の『ハイガード』の片仮名と同様の意味を有するものとして認識するというべきである。してみると、本件商標からは、片仮名の『ハイガード』単独の場合と同一の観念、すなわち、『高度な防御』あるいは『物を保護する程度が高い。』といった観念が生ずるものと認めるのが相当である。本件使用商標2及び3は、片仮名の『ハイガード』からなる商標であるから、これからは、前記のとおり、『高度な防御』あるいは『物を保護する程度が高い。』といった観念が生ずる。また、本件商標からも、これと同一の観念が生ずることは、前記イのとおりである。したがって、本件商標と本件使用商標2及び3は、そこから生ずる観念が同一であるというべきである。」として、原告は本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることが認められるので、審決の判断には誤りがあるとして審決を取消しました。

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