Fashion Walker事件 平成24年(行ケ)第10310号 審決取消請求事件

本件は商標法50条の不使用取消審判の棄却審決に対する審決取消訴訟で、使用の主体について争われた興味深い事例です。
商標法50条1項は、継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。以下この条において同じ。)の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録について取消すことができる旨を規定しています。
本件については、商標権者、専用使用権者は登録商標と社会通念上同一の商標を使用しておらず、通常使用権者であるグンゼ社からパンティストッキングを仕入れて販売していたアイ・ティ・エム・ユー社が楽天市場において販売していた事実が使用証拠として採用されています。

知財高裁はその理由を以下のように判事しています。
「商標法50条1項には、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者(以下『商標権者等』という。)のいずれもが、同項に規定する登録商標の使用をしていないときは、取消しの審判により、その商標登録は取り消される旨規定されている。ここで、商標権者等が登録商標の使用をしている場合とは、特段の事情のある場合はさておき、商標権者等が、その製造に係る商品の販売等の行為をするに当たり、登録商標を使用する場合のみを指すのではなく、商標権者等によって市場に置かれた商品が流通する過程において、流通業者等が、商標権者等の製造に係る当該商品を販売等するに当たり、当該登録商標を使用する場合を含むものと解するのが相当である。このように解すべき理由は、今日の商品の流通に関する取引の実情に照らすならば、商品を製造した者が、自ら直接消費者に対して販売する態様が一般的であるとはいえず、むしろ、中間流通業者が介在した上で、消費者に販売することが常態であるといえるところ、このような中間流通業者が、当該商品を流通させる過程で、当該登録商標を使用している場合に、これを商標権者等の使用に該当しないと解して、商標法50条の不使用の対象とすることは、同条の趣旨に反することになるからである。本件においてこれをみると、【1】アイ・ティ・エム・ユーは、グンゼが製造し、本件商標が付されたパンティストッキングを仕入れ、楽天株式会社の運営に係るウエブサイト(楽天市場、本件サイト)において、上記パンティストッキングを表示して、販売を継続しており、平成21年5月、同年8月、平成22年3月、同年6月、同年7月、同年10月、平成23年9月頃、本件サイトを利用して、一般消費者に上記パンティストッキングを販売していることが確認できること、【2】本件サイトには、本件使用商標の表示されたグンゼの製造に係るパンティストッキングの包装の写真が掲載されており、その掲載態様に照らすならば、本件使用商標は、その商品の出所がグンゼであることを示しているといえること、【3】グンゼの製造に係るパンティストッキングは、流通業者を介して、消費者に販売することを前提として、市場に置かれた商品であることが明確に理解でき、グンゼも、そのことを念頭に置いた上で、パンティストッキングを販売し、アイ・ティ・エム・ユーはこれを仕入れていると解されること等の事実が認められる(甲18の1ないし18の3、乙19)。以上のとおり、本件商標の通常使用権者であるグンゼは、流通業者を介して、本件審判請求の予告登録前3年以内に、指定商品である「靴下」に該当するパンティストッキングに、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたと認めることができる。...原告は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が商標を付した商品がいったん流通におかれた場合に、当該権利者の全くあずかり知らない第三者のもとで当該商品が販売されてさえいれば、当該権利者による商標の使用の中止から3年以上経っていたとしても、当該権利者による販売であるとして、不使用による取消しを免れることになるのは、不合理である旨主張する。しかし、全証拠によるも、本件において、原告主張のような特段の事情が存在すると認めることはできない。」

今日においては、商標権者が商品に登録商標を使用しなくなって以後も、長期に渡り商品が点々流通してネット販売等されているのは良くあることであり、そのような長期間に渡って登録商標を保護することがあるのかということで、本判決については反対意見も多いですが、実務にあたる者としては、今後は流通業者による使用の可能性も考慮して不使用取消審判請求をする必要がありそうです。

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