養命茶事件 知財高裁平成27年10月29日判決

原告は、指定商品を第30類「茶飲料、粉末茶、植物を主原料とする混合茶、穀物を主原料とする混合茶、植物と穀物を主原料とする混合茶、その他の混合茶、その他の茶、茶を加味した菓子、茶を加味したパン、茶を主原料とするブロック状・顆粒状・粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状又はゼリー状の加工食品、茶エキスを主原料とするブロック状・顆粒状・粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状又はゼリー状の加工食品、穀物を主原料とするブロック状・顆粒状・粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状又はゼリー状の加工食品、穀物エキスを主原料とするブロック状・顆粒状・粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状又はゼリー状の加工食品、茶を加味した穀物の加工品」とする登録第5643664号「養命茶(標準文字)」(以下、「本件商標」とする。)の商標権者です。
被告は、「養命酒」を引用商標として本件商標に対し、無効審判を請求しました。特許庁は、本件審判請求を無効2014-890032号事件として審理し、その結果4条1項15号に該当するとして「登録第5643664号の登録を無効とする。」との審決をしました。
原告は審決を不服として本件審決取消訴訟を提起しました。本件訴訟の争点は、【1】引用商標及び本件商標から「養命」部分を分離抽出した認定の誤り、【2】混同を生ずるおそれの判断の誤りの2点です。

争点【1】について知財高裁は、「原告は、引用商標が、一種独特の筆文字の同じ書体、同じ大きさ、等間隔で書された漢字3文字をもって、外観上、まとまりよく一体的に表されているものであるから、『養命』部分を抽出することはできない旨主張する。しかし、引用商標は、『養命酒』を漢字で横書きにしたややデザイン化された毛筆体から成るもので、一語一語は同じ大きさの同一書体であり、意匠的な図案として、3文字の配列の中から一部を取り出すことができないような特殊なものではない。そもそも、引用商標は、被告商品の名称として永年使用された結果、高い著名性を獲得したものであり(この点は当事者間にも争いがない。)、そのデザインや書体の独自性に着目する原告の主張は失当である。」として原告の主張は失当であるとしました。
争点【2】について知財高裁は、「原告は、薬事法の点から、本件商標の指定商品と被告商品は、同一ドラッグストアで販売されるとしても、分離した陳列状態(異なる陳列棚に陳列)において需要者が接するから、密接な関係があるとはいえないと主張する。しかし、被告商品は、薬事法の適用があるものではあるが、第2類医薬品であり、一般家庭用医薬品として、医師による処方箋や、薬剤師による説明を要せずに購入できるものであり、ドラッグストアなどにおいて、他の日用品や食品、飲料等と共に販売されており、消費者が自らの選択によって手にとって直接購入することができるのであるから、陳列棚が異なるとしても、出所の混同の生ずるおそれがあるというべきである。また、原告は、被告商品は、「第一類医薬品以外で、副作用等によって、日常生活に支障をきたすほどの健康被害が生じるおそれがある医薬品」である第2類医薬品に当たり、健康に影響を及ぼす商品であるため、需要者は、特に慎重に商品を吟味して購入するものであると主張する。しかし、前記のとおり、被告商品は処方箋や薬剤師による説明なしに、一般消費者が手にとって購入できるものであり、ドラッグストアなどにおいて、他の日用品や食品、飲料等と共に販売されるものであるから、このような商品を購入する需要者である一般消費者に要求される注意力の程度がさほど高いということはできない。原告は、被告商品は、アルコールを含む商品であり、アルコールを受け付ける体質の成人に限る特殊性を有する商品であり、商品を購入するに当たって、購入者が、アルコールを含む被告商品とアルコール全く含まない本件商標の指定商品とを間違えるおそれは皆無というべきであると主張する。しかし、本件で問題とするのは、出所の混同のおそれであって、商品自体を誤認して購入するか否かを問題としているものではなく、失当である。」として取消理由2についても理由がないとしました。

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