iロゴ商標事件 知財高裁平成27年10月29日判決

原告は、第36類「銀行業務、ミューチュアルファンド投資に関する助言」等を指定役務とするアルファベット「i」の文字をロゴ化した商標について商標登録出願を行いましたが、3条1項5号に該当するとして拒絶査定を受けました。 原告はこれを不服として拒絶査定不服審判を請求(不服2014-4145号) しましたが、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を受けました。原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。

本件訴訟の争点は、【1】商標法3条1項5号該当性についての判断の誤り、【2】商標法3条2項該当性についての判断の誤りの2点です。

知財高裁はこの2点について、それぞれ以下のように判断致しました。

【1】商標法3条1項5号該当性についての判断の誤りについて 知財高裁は、「本願商標は、アルファベットの『i』一文字をデザイン化して、特定の緑色の単色で着色したものである。その形状は、直線のみで構成されていて、上部に位置する点の部分が正方形であって、下部の縦線部の幅が上部の点の幅とほぼ同じであり、下部の上端左側と下端左右にセリフ部分がついている。セリフを持つ書体で欧文字を表すことは一般的に行われており、欧文字『i』をセリフ書体で表す場合に、縦線部に対して一定の太さを持つセリフにより表すことも通常行われている。また、『i』の上部の点を四角形とすること についても、しばしば行われているといえる。さらに、四角形の点と一定の太さのセリフを兼ね備えた書体(例えば、『Memphis』書体。)も存在する。そして、色彩も、看者をして通常の黄緑色の範囲内であると認識させるものを、単色で用いているにすぎず、本願の指定役務を提供する業界においても、緑色を基調とする色彩は広く用いられている。したがって、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなるものと認められ、その指定商品及び指定役務との関係でみても、格別自他商品識別力を有するとはいえず、特定人による独占的使用を認めるのに適しているともいえない。」として3条1項5号に該当するとの判断に誤りはないとしました。

【2】商標法3条2項該当性について 知財高裁は、「認定事実からすれば、本件審決時である平成26年9月16日において、原告が提供する役務である上場投資信託『iShares』は、その売上高が極めて大きいことからして、金融商品の需要者・取引者によく知られているものと認められるが、一方、本願商標は、その使用期間が1年2か月程度と短く、新聞や雑誌に本願商標を用いた広告(その立体的置物を含む。以下同じ。)を掲載したのは7回にすぎず、トレードショーなどで本願商標を用いたと認められる事例は本件審決後を含めても5回に限られ、しかも、本願商標は、原告の役務名である『iShares』や、原告の名称を表す『byBLACKROCK』と共に使用されるのが通例であり、本願商標単独で使用されるものとは認められない。そうすると、本願商標が指定役務とされる役務に使用されたか否かの判断はひとまず措くとしても、本願商標は、その使用の結果、需要者が原告の業務に係る役務であることを認識することができるに至ったとは認めるに足りない。」として、3条2項に該当しないとして、原告の請求を棄却しました。

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