専用使用権(商標法第30条)について

 専用使用権とは、設定行為で定めた範囲内において、指定商品又は指定役務について登録商標を独占的に使用することができる権利です(商標法第30条第2項)。専用使用権を設定した後は、たとえ商標権者であっても、専用使用権を設定した範囲においては登録商標を使用することはできませんので、この点を考慮の上、専用使用権にするか、通常使用権にするかを検討する必要があります。専用使用権は、登録が効力発生要件となっていて印紙代が1件あたり30,000円かかります。弁護士や弁理士に依頼する場合は、別途代理人費用がかかります。
 専用使用権の制度趣旨としては、商標に信用が化体すれば、その商標を使用したいと思う者があらわれたりする場合や、また、商標権者側からしても、資本関係等で密接な関係にある者に商標を使用させたいという場合もありうるので商標権を譲渡する以外の方法で使用できるようにする制度が必要であろうというものです。
 よくある例としては、商標の審査においては、類似する他人の先行商標が存在していた場合は拒絶されるので、複数のグループ企業を持つ大企業などでは、親会社の出願が子会社の商標を引用して拒絶されたり、子会社の出願が親会社の商標を引用されて拒絶されたりすることがありますので、手続の便宜上、親会社が一括して商標権を取得し、子会社に専用使用権を設定するような場合です。
 条文上「設定行為で定めた範囲内」とあるので、内容、時間、地域等を制限する事もできます。例えば、東北一円とか、2016年1月1日から1年とかそういったこともできます。
 専用使用権は移転することができますが、移転ができるのは、「商標権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合」に限られます(商標法第30条第3項)。これは、専用使用権を設定するのは商標権者と専用使用権者との信頼関係に基づくものであることが通常で、またライセンス料を1個当たり〇〇円のような形で設定している場合等は、専用使用権者がどの程度の資本をもって商標を使用するかにより大きくライセンス収入等が変わってくると考えられますので、移転を上述の場合のみに限っている訳です。
 同様のことが、専用使用権についての質権の設定や通常使用権の許諾についてもいえますので、これらについても商標権者の承諾が必要になります(商標法第30条第4項)。

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