二重帳簿事件 東京地裁平成11年7月19日判決

原告は、主として中国からの食品、食品原材料の輸入、販売等を業とする会社です。被告1は、もと原告の食品部長でした。被告1は、原告を退社後、被告2に入社しました。
原告は、被告は原告の営業秘密である「油炸スイートポテトについて、真実の原価、利益率は秘密にしながら、取引相手にはより低い利益率を示し、企業内で極秘に利益を獲得する営業システム」を使用しており、この行為は不正競争行為に該当するとして、損害賠償請求等を行いました。
東京地裁は、「原告は、その保護の対象とする秘密情報の内容について、『油炸スイートポテトについて、真実の原価、利益率は秘密にしながら、取引相手にはより低い利益率を示し、企業内で極秘に利益を獲得する営業システム』であると主張する。不正競争防止法二条一項所定の保護の対象となる「営業秘密」とは、営業上秘密とされた情報のすべてを指すのではなく、営業上の秘密として管理された情報の中で、事業活動に有用な技術上又は営業上の情報のみを指すことは規定上明らかである(同法同条四項)が、右の有用性の有無については、社会通念に照らして判断すべきである。そこで、この観点から検討すると、原告が保護の対象とする内容は、必ずしも明らかではないが、その主張によれば、極秘に二重に帳簿を作成しておいて、営業に活用するという抽象的な営業システムそれ自体のようであり、そうだとすると、このような内容は、社会通念上営業秘密としての保護に値する有用な情報と認めることはできない。また、真実の利益率より低い利益率を取引相手に示して取引を行うこと自体は、正当な取引手段であるか否かはさておき、特段、原告独自の経営方法と認めることもできない。以上のとおり、原告主張に係る事項は、営業秘密として保護されるような有用性を有するとはいえないし、非公知であるともいうことができない。」と判断しました。

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