日本維新の会事件 知財高裁平成26年9月17日判決

原告は、「日本維新の会」の文字を標準文字で表してなる商標(以下、「本願商標」とする。)について商標登録出願(以下、「本願」とする)を行いましたが、本願商標は商標法4条1項7号に該当するとして拒絶査定されました。原告は拒絶査定不服審判を行いましたが、本願商標は商標法4条1項6号に該当するので「本件審判の請求は成り立たない。」との審決を受けました。原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。本件審決取消訴訟の争点は、【1】商標法4条1項6号該当性の有無に係る判断の基準時、【2】本件審決の事実誤認の有無です。
知財高裁は、「商標法4条3項の趣旨は、同条1項各号の該当性の有無に係る判断の基準時を、最終的に当該判断をする時点、すなわち、原則として『商標登録査定時』又は『拒絶査定時』、拒絶査定に対する審判の請求があった場合には、『審決時』とすることを前提として、同条1項各号のうち、出願時には該当性が認められず、その後に出願人が関与し得ない客観的事情の変化が生じたために該当するに至った場合、当該出願人が商標登録を受けられないとするのは相当ではないものにつき、判断の基準時の例外を定めたものと解するのが相当である。上記の商標法4条1項6号の趣旨及び同条3項の趣旨に加え、同項が判断の基準時の例外を認めるものとして掲げる事由に商標法4条1項6号は含まれていないことに鑑みれば、同号該当性の有無に係る判断の基準時は、審査官による商標登録出願の審査(同法14条)の際には査定時、拒絶査定に対する審判の請求があった場合(同法44条)には、審決時とすべきである。...審決取消訴訟においては、原則として、当該審決時までの事情に基づいて同審決の瑕疵の有無を判断すべきであり、同審決後に生じた事情は考慮すべきではない。...『日本維新の会』という名称を有する政党は、商標法4条1項6号所定の『公益に関する団体であって営利を目的としないもの』に該当し、『日本維新の会』は、上記政党を表示する標章といえる。...政治資金規正法7条の2第1項の規定に基づき、『日本維新の会』の名称等が公表されたことに加え、政党『日本維新の会』は、平成24年の衆議院議員総選挙及び平成25年の参議院議員通常選挙において、野党の中でも上位の票数を得ており、平成26年1月1日現在、53名の衆議院議員及び9名の参議院議員が同党に所属していることに鑑みると、前記政党を表示する標章『日本維新の会』は、著名なものと認められる。そして、本願商標は、『日本維新の会』の文字を標準文字で表してなるものであるから、上記標章と同一の商標ということができる。以上によれば、本件審決時において、本願商標は、商標法4条1項6号に該当することが認められ、本件審決の認定に誤りはないというべきである。...証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告は、『元祖 日本維新の会』を掲げて政治活動等をしてきたことが認められるものの、この事実は、前記結論を左右するものではない。また、たとえ、本件審決時において、政党『日本維新の会』は近日中に消滅する蓋然性が大きいという事実があったとしても、本件審決時に同党が存在していた以上、本願商標について商標法4条1項6号の該当性が認められるのは明らかであり、上記事実はこの結論を左右するものではないから、本件審決が同事実を認定しなかったことは、事実誤認に当たらない。」として原告の請求を棄却しました。

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