ライサポ事件 大阪地裁平成26年6月26日判決

原告は、指定役務を、「第39類 車両による輸送、船舶による輸送、航空機による輸送、主催旅行の実施等」及び「第42類 老人の養護、高齢者の介護又は看護、身障者の介護又は看護等」とする片仮名文字「ライサポ」(以下、「本件商標」とする。)の商標権者です。被告は、障害者・高齢者市民の生活を支援等することを目的とする特定非営利活動法人で、ホームヘルパー派遣・育成・研修及びコーディネートに関する事業等を行っています。被告はWEBサイトやブログを開設し、その中で、「ライサポいけだ」の語句(以下「被告標章」という。)や「lispo-ikeda.jp」のドメイン(以下、「本件ドメイン」という。)を使用していました。原告は、被告による被告標章及び本件ドメインの使用は原告の商標権を侵害するものであるとして、使用の差止及び損害賠償を請求しました。被告標章及び本件ドメインが本件商標に類似するかについて、大阪地裁は以下のような判断をしています。
【1】被告標章が本件商標に類似するかについて
大阪地裁は、「原告は、被告標章のうち、地名である『いけだ』の部分に識別力はなく、『ライサポ』が要部であるから原告商標と類似する旨主張する。しかしながら、この主張は採用できない。...原告商標と被告標章の類似の有無については、被告標章の現実的な使用態様を前提に、誤認混同のおそれを判断すべきところ、被告標章の使用態様については、本件ウェブサイトを閲覧する者は、いずれも目立つよう大書された、被告の正式名称である『特定非営利活動法人ライフサポートネットワークいけだ』、あるいはブログのタイトルである『ライフサポートネットワークいけだのブログ』をまず認識し、その後に、バナー、イラスト、記述的文章の中に、被告標章である『ライサポいけだ』が使用されていることを認識するものと考えられる。そうすると、本件ウェブサイトを閲覧する者は、被告の正式名称またはブログのタイトルから、本件ウェブサイトを管理運営しているのは、池田市に本拠を置く、生活(ライフ)を支援(サポート)することを目的とする団体である旨の観念を抱いた後に、被告標章に接することになるから、被告標章が被告の正式名称の略語であることは容易に認識され、被告標章についても、同様に、池田市に本拠を置く、生活を支援することを目的とする団体であるとの観念を抱くものと考えられる。すなわち、被告標章の現実的な利用形態に照らすと、本件ウェブサイトを閲覧し被告標章に接する者は、被告標章を一体として認識し、『ライサポ』のみを抽出して捉えることはなく、上記のとおり、池田市に本拠を置く、生活を支援することを目的とする団体である旨の観念を抱くと考えられるから、単に『ライサポ』の文字からなる原告商標との間に誤認混同のおそれはなく、両者は類似しないというべきである。」として両者は非類似であると判断しました。

【2】本件ドメインが本件商標に類似するかについて
 大阪地裁は、「一般に、ドメインネームにおいて、自他識別機能を有する部分は、『.jp』『.co.jp』など(トップレベルドメイン等)を除いた部分であるから、本件ドメイン名においては、『lispo-ikeda』がこれに該当する。他方、ドメインネームは、和文字を使うものもあるが、ほとんどの場合は英文字の標準文字(特定の字体をもたないもの)の組み合わせによる以外の表現はとりえないところ、当該文字列から、直ちに『ikeda』の部分が大阪府内の一市町村を指す地名であると判明するとはいえないから、同部分が識別力を欠き、『lispo-』の部分のみが要部を構成するものということはできない。したがって、本件ドメイン名の要部は、『lispo-ikeda』である。(外観について)本件ドメイン名の要部は、『lispo-ikeda』との英文字を、標準文字で横一列に表記するものである。『lispo』の部分は、辞書の見出し語としては存在しないので、アルファベットをそのまま発音することにより『エルアイエスピーオー』の称呼を生じる。また、これを英語風に発音することにより『リスポ』の称呼を生じる。『ikeda』の部分は、特定の日本語のローマ字表記であると想到する余地があるから、『イケダ』の称呼を生ずる。したがって、本件ドメイン名の要部から生じ得る称呼は、『エルアイエスピーオー・イケダ』又は『リスポ・イケダ』となる。上記外観及び称呼を前提とすると、本件ドメイン名の要部からは、特定の観念を生じない。また、『lispo』と『ikeda』に分けた場合、『ikeda』の部分が人名ないし地名であるとの観念を生じることはありうるが、『lispo』の部分から特定の観念が生じることはない。何らかの単語の先頭の音節を組み合わせるとしても、その組み合わせに唯一のものを見いだすことはできない。上記のとおり、原告商標と、本件ドメイン名の要部を外観、称呼及び観念において対比すると、類似する要素がないから、原告商標と本件ドメイン名は類似するものと認められない。」として両者は非類似であると判断しました。

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