税関の輸入差止申立て(模倣品の水際対策)
「ECサイトの出品を消しても、海外からの模倣品の流入が止まらない」「海外の業者に警告書を送っても応答がない」――相手が海外にいる模倣品被害では、国内の警告・訴訟だけでは実効性に限界があります。そこで有効なのが、模倣品が国内に入ってくる入口=税関で止める「輸入差止申立て」です。
税関における知的財産侵害物品の輸入差止件数は令和7年に31,760件と3年連続で3万件を超えており(財務省公表)、仕出国別では中国が8割超を占めています。申立てが受理されれば、税関が輸入貨物を監視し、該当する模倣品を発見した際に認定手続を経て没収等の措置がとられます。海外の相手を訴えるよりはるかに費用対効果の高い手段ですが、申立書には権利の内容・侵害の事実に加え「本物と偽物の識別ポイント」を疎明する資料が必要で、準備の質が受理と差止めの実効性を左右します。
このページでは、商標・不正競争防止法に注力する弁護士・弁理士が、輸入差止申立ての要件と進め方を解説します。
初動を誤ると選択肢が狭まります。まずは現状をお聞かせください。
お電話:03-6205-7455/LINEでのご相談・ご予約も承ります。法律相談料は60分1万1000円(税込)です。
輸入差止申立てとは
商標権などの知的財産を侵害する物品は、関税法上「輸入してはならない貨物」と定められています(関税法69条の11第1項9号)。権利者は税関長に対し、自己の権利を侵害する貨物が輸入されようとする場合に差止め(認定手続)をとるべきことを申し立てることができます(関税法69条の13第1項)。
申立てが受理されると、全国の税関で輸入貨物のチェックが行われ、疑義貨物が発見されると認定手続が開始されます。侵害品と認定された貨物は、輸入者が自主的に廃棄等をしない場合、没収・廃棄されるか、積戻しが命じられます(関税法69条の11第2項)。
個人輸入を装った持ち込みへの対応:かつては「個人使用目的」を装った小口輸入が抜け道となっていましたが、令和3年の商標法・意匠法改正(令和4年10月1日施行)により、外国にある者(海外の事業者等)が郵送等で国内に模倣品を持ち込む行為も商標権侵害となる「輸入」に含まれることが明確化され、水際取締りが強化されています。
申立てに必要なもの
- 権利の証明:商標登録原簿・商標公報など、権利の存在と申立人が権利者であることを示す資料
- 侵害の事実を疎明する資料:模倣品の現物・写真、入手経緯、対象物品が登録商標の指定商品に該当し商標が同一・類似であることの説明
- 識別ポイント(真贋判定資料):税関職員が現場で本物と模倣品を見分けるためのポイント(ロゴの縫製・刻印・タグ・パッケージ・付属品の違い等)をまとめた資料。申立ての実効性はこの資料の出来で決まります
- 輸入者・仕出人の情報(判明している場合)
受理された申立ての有効期間は最長4年で、更新申請により更新できます。いずれかの税関に申し立てれば全国の税関で取締りが行われます。
弁護士・弁理士に依頼するメリット
- 受理される申立書の作成:侵害の疎明は法的な類否判断そのものであり、弁護士・弁理士の意見書を添付することで疎明の説得力が上がります。
- 識別ポイント資料の作り込み:判定しやすい識別ポイントの選定・資料化を支援します。
- 税関からの照会・認定手続への対応:疑義貨物が発見されると認定手続が開始されます。輸入者が通知から10日以内に争う旨を申し出た場合には、権利者側で証拠の提出・意見の陳述を行うことになります。見本検査の申請(関税法69条の16)や、税関長から担保の供託(同法69条の15)を命じられた場合の対応も含め、一貫して代理します。
- 国内措置との併用設計:EC申告(EC上の模倣品対策)・国内販売者への警告・損害賠償請求と組み合わせ、流通の川上から川下まで一体で止めます。
手続の流れ
- ご相談・被害状況の確認:模倣品の流入ルート(仕出国・輸入形態)と権利関係を確認します。
- 資料準備:権利証明・侵害疎明資料・識別ポイント資料を作成します(模倣品現物の入手が未了ならテスト購入から支援します)。
- 申立書の提出・税関との調整:提出先税関との事前相談・補正対応を行います。
- 受理後の運用:疑義貨物発見時の照会対応、認定手続での意見提出、更新手続まで対応します。
初動を誤ると選択肢が狭まります。まずは現状をお聞かせください。
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弁護士費用
- 法律相談:60分1万1000円(税込)
- 詳細は弁護士費用をご覧ください。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 商標登録がなくても申し立てられますか。
輸入差止申立ての中心は商標権・意匠権などの登録された権利です(著作権・著作隣接権のように登録を要しない権利でも申立ては可能です)。不正競争防止法上の周知表示等を根拠とする申立ての枠組みもありますが、経済産業大臣の意見書等が必要となるなど手続が加重されます。未登録の場合は商標出願を急ぐのが現実的です。
Q2. 申立てから差止めまでどのくらいかかりますか。
提出後、税関の審査(必要に応じた補正)を経て受理されます。税関は事前相談を受け付けており、権利関係・侵害品・識別ポイントの資料を事前に整えておくと審査が速やかに進みます。所要期間の目安はご相談時にご案内します。受理後は有効期間中、継続的に監視されます。
Q3. 誰が輸入しているか分からなくても申し立てられますか。
可能です。輸入者を特定せず「自社の商標を侵害する貨物」を対象として申し立てることができ、税関側で該当貨物を発見した時点で権利者に通知されます。
Q4. 差し止めた模倣品の輸入者に損害賠償を請求できますか。
認定手続で判明した輸入者に対し、別途、警告書送付や損害賠償請求を行うことが可能です。税関手続と国内の法的措置を組み合わせることで、再発抑止まで含めた解決を図ります。なお、認定手続で通知された輸入者の情報は不当な目的に使用してはならないとされており(関税法69条の12第8項)、権利行使の範囲で適切に用います。
Q5. 少量ずつ・個人名義で輸入されている場合は。
令和4年10月施行の法改正により、外国にある者からの郵送等による持ち込みも水際取締りの対象として明確化されています。小口・分散型の流入こそ、税関差止の監視網が有効です。
Q6. 申立てに担保(供託)は必要ですか。
税関長は、輸入者に生じ得る損害の担保として、申立人に金銭の供託を命じることがあります(関税法69条の15)。供託が必要となる見通しや金額感も含めて、ご相談時にご案内します。

このページの監修
虎ノ門法律特許事務所 代表
弁護士・弁理士 大熊 裕司
第一東京弁護士会所属(登録番号:37803)・日本弁理士会所属。商標・不正競争防止法をはじめとする知的財産紛争に注力し、警告書対応から審判・訴訟まで一貫して取り扱う。