日本ウーマン・パワー事件(最高裁昭和58年10月7日第二小法廷判決)

本事件は、不正競争防止法2条1項1号(旧法1条1項2号)の類似・混同について最高裁が判断を示した事例です。
X(原告・被控訴人・被上告人)は昭和41年11月に設立され、「マンパワー・ジャパン株式会社」の商号(以下「X商号」とする)およびその通称である「マンパワー」(以下「X通称」とする)という名称を用いて事務処理請負業を営んでいました。Y(被告・控訴人・上告人)は、昭和51年4月に設立され、Xと同様に事務処理請負業を「日本ウーマン・パワー株式会社」の商号(以下「Y商号」とする)を用いて行っていた。
Xの商号及びその通称はYの設立登記が行われた頃には、Xの本店、支店及びその周辺地域でXの営業活動を示す表示として広く認識されていました。そしてXにはXとYが同一営業主体であると誤解したYの顧客から電話がかかってきたり、Xの顧客から「YはXの子会社か」等の問い合わせを受けたことがあったそうです。そこでXがYに対して旧不正競争防止法1条1項2号(現行の不正競争防止法2条1項1号)に基づきYによるY商号の使用差し止めとY商号の抹消登記請求を求めました。第1審、第2審ともにXの請求が認容されたため、Yが上告したというものです。

最高裁の判決のポイントは以下の通りです。
ポイント1:「ある営業表示が不正競争防止法1条1項2号(現行の不正競争防止法2条1項1号)にいう他人の営業表示と類似のものか否かを判断するに当たつては、取引の実情のもとにおいて、取引者、需要者が、両者の外観、称呼、又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのを相当とする。」

ポイント2:「不正競争防止法1条1項2号(現行の不正競争防止法2条1項1号)にいう『混同ヲ生ゼシムル行為』は、他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が同人と右他人とを同一営業主体として誤信させる行為のみならず、両者間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係が存するものと誤信させる行為をも包含するものと解するのが相当である。」

ポイント1では、旧法1条1項2号(現行の不正競争防止法2条1項1号)の商品等表示の類否判断基準を示しています。

ポイント2では、旧法1条1項2号(現行の不正競争防止法2条1項1号)の混同には、狭義の混同のみでなく広義の混同を含む旨が判断されています。

本件では、「マンパワー」と「ウーマン・パワー」は、いずれも人の能力、知力を連想させること、「ジャパン」と「日本」の部分はいずれも観念において同一であることなどから類似であると判断され、営業表示として類似のものを使用しているからYはXの営業活動と混同を生じさせる行為をしたとしてYの上告は棄却されました。

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