天理教事件 最高裁平成18年1月20日判決

上告人は、宗教法人であり「天理教・・・大教会」又は「天理教・・・分教会」の名称で活動しています。被上告人は、上告人との間で被包括関係を設定していましたが、上告人の教義は教祖の教えとは異なるものであると考えるようになり、被包括関係を廃止する旨の通知書を上告人に送付しました。
被上告人は、上告人との被包括関係の廃止後も、教祖の教典に基づいて、朝夕の勤行、月次例祭等の年中行事などの宗教活動を継続的に行っており、その宗教活動につき、「天理教豊文教会」の名称を使用していました。被上告人は、現在収益事業を行っておらず、近い将来これを行う予定もないとのことです。
最高裁は、「宗教法人の活動についてみるに、宗教儀礼の執行や教義の普及伝道活動等の本来的な宗教活動に関しては、営業の自由の保障の下で自由競争が行われる取引社会を前提とするものではなく、不正競争防止法の対象とする競争秩序の維持を観念することはできないものであるから、取引社会における事業活動と評価することはできず、同法の適用の対象外であると解するのが相当である。また、それ自体を取り上げれば収益事業と認められるものであっても、教義の普及伝道のために行われる出版、講演等本来的な宗教活動と密接不可分の関係にあると認められる事業についても、本来的な宗教活動と切り離してこれと別異に取り扱うことは適切でないから、同法の適用の対象外であると解するのが相当である。...不正競争防止法2条1項1号、2号は、他人の商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡するなどの行為を不正競争に該当するものと規定しているが、不正競争防止法についての上記理解によれば、ここでいう『営業』の意義は、取引社会における競争関係を前提とするものとして解釈されるべきであり、したがって、上記『営業』は宗、教法人の本来的な宗教活動及びこれと密接不可分の関係にある事業を含まないと解するのが相当である。」として、本件上告を棄却しました。

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