男性用かつら顧客名簿事件 大阪地裁平成8年4月16日判決

原告は、男性用かつらの販売を業とする株式会社です。被告は、平成5年某日まで、原告の従業員として稼働していましたが、現在は原告を退職して、大阪市中央区において「○○」の屋号で男性用かつらの製造、販売を行っています。原告は、各営業店舗において新規顧客の顧客名簿を作成し、顧客からは見えない店のカウンター内で保管していました。被告は、原告の心斎橋店にある原告顧客名簿をコピーし、これを利用して原告の顧客に電話をかけるなどして営業活動をしていました。
大阪地裁は、「一般に男性用かつらの販売業においては、理容業等の業種に比ベて顧客の獲得が困難であり、多額の宣伝広告費用を投下して新聞、テレビ等の各種宣伝媒体を利用せざるを得ない実情にあり、原告顧客名簿も、原告において長年にわたり継続して多額の宣伝広告費用を支出してようやく獲得した顧客が多人数記載され、各顧客の頭髪の状況等も記載されているものであり、これらの顧客からは将来にわたって定期的な調髪等の外、かつらの買替えの需要も見込まれることに照らせば、原告顧客名簿は、原告が同業他社と競争していく上で、多大の財産的価値を有する有用な営業上の情報であることが明らかである。そして、原告は、原告顧客名簿の表紙にマル秘の印を押捺し、これを原告心斎橋店のカウンター内側の顧客からは見えない場所に保管していたところ、右のような措置は、顧客名簿、それも前記のような男性用かつら販売業における顧客名簿というそれ自体の性質、及び証拠(証人丁、原告代表者)により認められる原告の事業規模、従業員数等(従業員は、本店及び三支店合わせて全部で七名。心斎橋店は店長一人)に鑑み、原告顧客名簿に接する者に対しこれが営業秘密であると認識させるのに十分なものというべきであるから、原告顧客名簿は、秘密として管理されていたということができる。更に、原告顧客名簿に記載された情報の性質、内容からして、原告以外の者に公然と知られていない情報であることは明らかである。したがって、原告顧客名簿は、不正競争防止法二条四項所定の『営業秘密』に該当するというべきである。」と判断しました。

お気軽にお問合せください!

お問合せ・ご相談

主な業務地域
日本全国

連絡先 お問合せフォーム