くしゃっと水切りざる事件 大阪地裁平成23年10月3日判決

原告は、「くしゃっと水切りざる」という商品名でシリコン素材のざるを販売しています。一方、被告らは「なんでもござる」という商品名でシリコン素材のザルを販売しています。
原告は、被告の行為は不正競争防止法の2条1項1号又は2条1項3号に該当するとして本件訴訟を起こしました。大阪地裁は、2条1項1号と2条1項3号該当性について以下のように判断しました。

【1】2条1項1号に該当するか
大阪地裁は、「原告商品は、ざるとしての機能に加え、柔軟性があり、変形させることができるという機能もあり、これにより従来のざるにはない用途に用いることができるというものである。そうすると、柔軟性があり、変形させることができるという形態的特徴は、原告商品の機能そのもの又は機能を達成するための構成に由来する形態であり、...商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態として、法2条1項1号の商品等表示には当たらないというべきである。具体的にみると、基本的形態として原告が主張する構成は、いずれも、柔軟性を持たせるための構成若しくは柔軟性があるという機能それ自体又はざるとしての機能を発揮させるための構成であり、商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態であるというほかない。また、使用時形態も、柔軟性があり、変形させることができるという機能の結果生じる形態であり、これも商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態、結果である。」として2条1項1号には該当しないとの判断を示しました。
【2】2条1項3号に該当するか
大阪地裁は、「法2条4項によれば、『商品の形態』とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感をいう。...原告商品の使用時形態それ自体が、法2条4項により保護される商品の形態(形状)であるかはおいても、使用時形態のように変形自在であるという原告商品の特性は、少なくとも需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる質感等に反映されることは明らかであり、法2条1項3号により保護されるべき商品の形態として十分に考慮されるべきものである。被告らが主張する上記各書証に記載されたざる等のうち、乙2に記載されたシラスティック製水切りボールはシリコンゴム材料を素材とするものであるが、取っ手部分があり、ざるの部分にもリムがないなど、原告商品の形態と大きく異なるものである。乙3に記載された合成樹脂製ざるについても、二個のざる体をセットにしたものであり、原告商品のように変形自在にしたものでもなく、質感についても大きく異なる。...他に、原告商品と同様に変形自在であって、しかも原告商品と同一の形態の先行商品が存在することを認めるに足りる証拠はない。...被告らは、原告商品の形態は、シリコン素材を使用したという技術的構成から必然的に由来するものであり、商品の機能を発揮するために不可欠な形態であるとも主張する。しかしながら、ざるの素材を変形自在なものにしたとしても、ざるとしての基本的形態だけを取っても、材質の選択、肉厚幅、底面突起の数、底面突起の有無及び数、表面上の穴の大きさ及び数など、その形態選択には無数の選択肢があることからすれば、原告商品の形態を全体として評価したときに、それが商品の機能を発揮するために不可欠な形態のものであるということはできない。」として2条1項3号に該当するとの判断を示しました。

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