ZOLLANVARI事件 平成29年(ネ)第245号 商標権侵害差止等請求控訴事件(原審 大阪地方裁判所平成27年(ワ)第5578号)

 本件は、ZOLLANVARI 社(以下「ゾ社」という。)と日本において総代理店契約を締結し、ゾ社の同意を得て、日本国内において商標権を有する控訴人が、被控訴人を商標権侵害で訴えた事件です。
 本件では、被控訴人の行為が真正商品の並行輸入に該当するかどうかが争点となりました。

 並行輸入については、フレッドペリー最高裁事件がありますが、この高裁判決でもフレッドペリー事件が引用されています。
 フレッドペリー最高裁判決で示されている真正商品の並行輸入の要件は以下の通りです。

「商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品につき,その登録商標と同一の商標を付したものを輸入する行為は,許諾を受けない限り,商標権を侵害するが,そのような商品の輸入であっても,① 当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり,② 当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより,当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって,③ 我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される場合には,いわゆる真
正商品の並行輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと解される」(フレッドペリー事件最高裁判決)

 大阪高等裁判所は、被控訴人の行為は真正商品の並行輸入に該当するので、商標権侵害としての実質的違法性を欠くものであるとして控訴人の請求を棄却しました。
 大阪高等裁判所の判断は以下の通りです。

大阪高等裁判所の判断

「・・・被控訴人標章1が記載された被控訴人タグは,ゾ社によって被控訴人商品に付されたと認められる。・・・ゾ社は,イランにおいて,『ZOLLANVARI』をペルシア文字で表記した商標の登録を出願したが拒絶され,『ZOLLANVARI』に関する商標について商標権を取得していないことが認められる。しかし,証拠によれば,ゾ社は世界各地に直営店を設けている中で,日本においては,控訴人が,ゾ社の総代理店として,直営店と同じ扱いと待遇を受けていると認められる。それに加えて,控訴人は,前記のとおり,ゾ社から権限を授与されて初めて控訴人商標の登録を受けることができたのであるから,ゾ社がイランにおいて商標権を有している場合と実質的には変わるところがないといえる。そうすると,被控訴人が,被控訴人標章1が付された被控訴人商品を輸入した上,これを販売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した行為は,控訴人商標の出所表示機能を害することがないといえる。本件の証拠上,ゾ社と控訴人との間の総代理店契約において,控訴人が控訴人商品の品質管理に直接関与していることを示すものはなく,控訴人商品の品質管理は,基本的にはゾ社において行われているものと認められる。これに対し,被控訴人商品については,前記2のとおり,ゾ社から,被控訴人が日本国内で販売することを前提として販売されたものであると認められるから,被控訴人商品の品質については,これが日本において販売されることを前提としてゾ社において管理しているものと認められる。そうすると,ゾ社が外国における商標権者でなくても,控訴人商品につき,控訴人商標の保証する品質は,控訴人がゾ社を通じて間接的に管理をしていて,そのゾ社が,控訴人商品と同じく日本に輸出して日本において販売される商品として被控訴人商品の品質を管理しているのであるから,被控訴人商品と控訴人商品とは,控訴人商標の保証する品質において実質的に差異がないといえる(本件は,被控訴人商品と控訴人商品のいずれも,ゾ社の下で製造されているという点において,フレッドペリー事件最高裁判決の事案と異なるということがいえる。)。・・・控訴人商品についても,その品質管理を実質的に行っていると認められるゾ社自身が,控訴人商品と同じく日本に輸出して日本において販売される商品として被控訴人商品を被控訴人に販売している以上は,被控訴人商品と控訴人商品とは,控訴人商標の保証する品質において実質的に差異がないとの評価は左右されず,被控訴人商品と控訴人商品の品質が同一とまではいえなくても,控訴人商標の品質保証機能を害することはないというべきである。そうすると,被控訴人が,被控訴人標章1が付された被控訴人商品を販売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した行為は,控訴人商標の品質保証機能を害することがないといえる。前記ア及びイのとおり,被控訴人が,被控訴人標章1が付された被控訴人商品を販売し,販売のために被控訴人ウェブサイトに掲載した行為(前記(1)ア②の行為)は,控訴人商標の出所表示機能及び品質保証機能を害することがなく,また,以上に述べたところによれば,商標を使用する者の業務上の信用及び需要者の利益を損なうものでもないから,商標権侵害としての実質的違法性を欠くというべきである。」

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