GOLDWELL事件 東京高裁昭和56年11月25日判決

原告は、「GOLDWELL」の欧文字と「ゴールドウエル」の片仮名文字とを上下二段に横書きしてなり、「せつけん類、歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品とする登録第1101012号商標の商標権者です。

登録第1101012号は、元々A社が出願して、商標権を取得したものでしたが、A社から原告に対して昭和52年1月17日付で移転登録手続きがなされています。

被告は、原告に対して、商標法50条に規定する不使用取消審判の請求を行いました。その結果、不使用取消審判の請求登録日(昭和53年2月21日)前三年以内に、原告はいずれの指定商品についても商標を使用していないとして、原告の商標は取消されました。

原告は、不使用取消審判の請求登録日(昭和53年2月21日)前三年以内にいずれの指定商品においても商標を使用していない事は認めるが、原告の不使用には商標法50条2項但書で定める正当理由があるとして、本件審決取消訴訟を提起しました。 本件商標は、不使用取消審判の請求登録日(昭和53年2月21日)前三年以内である昭和52年1月17日付で移転登録手続きがなされていますが、このような場合に不使用期間は、前の商標権者との間で合算されるのかという問題があります。

この点について東京高裁は、「商標権を譲り受ける場合には、その商標の従前の使用状況についての事実、例えば、指定商品の一部又は全部について、一定の期間使用されていない事実があるときには、その事実自体は、消滅するはずのものではないから、当該商標権に当然に伴うものとして、譲受人もまた、そのような事実を伴いないしはそのような状況下にある商標権を承継し、したがつて、当該商標権の譲り受けにより、譲渡前の不使用の事実が不問に付され、不使用の期間が譲受人との関係で新たに起算されるというようなものではないと解すべきであることは、商標法第五〇条第一項、第二項の規定の前示趣旨に鑑み明らかである。そして、このことは、商標権者が通常使用権を許諾した場合における通常使用権者との関係においても全く同様である。したがつて、商標権を契約によつて取得しようとする者又は商標権者から通常使用権の許諾を受けようとする者は、その際に当該登録商標の使用の事実ないし状況のいかんを調査すべきであり、例えば、不使用の状態が相当期間継続しているような場合には、その商標権の登録がその不使用の期間に応じて取消される可能性を包蔵したものであることを予想して取引に当るべきである。それ故に、不使用についての正当な理由の有無を判断するに当つてもまた、商標権の移転又は通常使用権の許諾がされた場合には、単にその移転又は許諾後の事情のみならず、それ以前の継続した不使用の事実ないし状況が、商標登録取消審判請求の登録前三年内の不使用事実として、前後通じて判断されるべきものである。」との判断を示しています。

お気軽にお問合せください!

お問合せ・ご相談

主な業務地域
日本全国

連絡先 お問合せフォーム