Meiji事件 知財高裁平成26年2月5日判決

被告は、第30類「学校給食用の菓子及びパン」を指定商品とし、橙がかった赤色の三つの半円をドーム状に組み合わせた図形の下に、左から青色で二つのだ円形をハート型に重ねた形状(本件図形)と「eiji」の文字を配してなる登録第5081512号商標(本件商標。平成18年5月25日出願、平成19年10月5日設定登録)の商標権者を持っています。原告は、本件商標は原告の商標と類似するとして4条1項11号及び4条1項15号で無効審判を請求しましたが、請求不成立となりました。原告はこれを不服として本件訴訟を提起しました。
知財高裁は4条1項11号及び4条1項15号について、それぞれ以下のように判断しました。
4条1項11号について知財高裁は「本件商標と引用商標を比較すると、まず、本件商標は、上段において三つの半円をドーム状に模した図形を配しており、下段における本件図形が上記のとおり特定の文字と認識できない上に、右側のアルファベットと違って太さが均一であるという特徴があり、『eiji』部分と一体化した文字として見ることが困難であるという点において、やや装飾化された欧文字のみからなる引用商標1ないし3と明確な差異が存在するから、両商標は、外観において顕著な違いがあり、異なる印象を与える。したがって、両商標は、外観上紛れるおそれはない。次に、称呼の点において、本件商標は、上記のとおり本件図形が特定の文字と認識できないことからすれば、『エイジ』の称呼が生じることになる。これに対し、引用商標の称呼は『メイジ』であり、本件商標と音節の数が同一である上、第二音、第三音を共通にし、語頭音の母音部分も同じ『e』であるが、「メイジ」の語頭音の子音は「m」で両唇鼻音であって聞き取ることは容易であり、かつ、これが語頭に配されていることからしても、区別することは容易である。そして、三音しかない短い構成の称呼において、最初の一音が異なることによる称呼全体に与える影響は小さくない。したがって、両商標が紛れるおそれはない。さらに、上記称呼の違いから観念についても共通性はなく、両商標が紛れるおそれはない。」として本件商標と引用商標は類似しないと判断しました。
4条1項15号について知財高裁は、引用商標の周知性、及び本件商標と引用商標の指定商品の共通性については認めました。その上で、本件商標と引用商標に出所混同のおそれがあるかについては、知財高裁は「明治パン株式会社の取引先である学校関係者が本件商標に接した場合に、該会社名との関連性のためにこれを『メイジ』と呼称したとしても、そのような取引者は、明治パン株式会社の概要をある程度認識した上で取引関係に入るはずであって、その判断能力や前提知識からすると、原告とは別の会社であることはもちろんのこと、原告と何ら関係のない会社であると理解すると考えられるから、明治パン株式会社の商品を原告と経済的、組織的な何らかのつながりがある者の業務に係る商品と混同するおそれはないというべきである。これに対し、具体的に本件商標が指定商品に付されたという使用態様は現時点で証拠上明らかでないが、仮に指定商品における一般的取引者が本件商標を付した商品に接した場合には、前示のとおり、本件図形を『M』と判読できず、何らかの文字と関連づけることができない以上、本件商標からは『エイジ』の称呼しか生じない。そして、本件商標の称呼は、原告の商号の称呼の要部である『メイジ』の前後に何らかの別の言葉が付加するわけでもない。原告の商号の呼称の要部は『メイジ』のみと認められるから、本件商標の称呼である『エイジ』は、複数の要部から構成される商号のうち、その一部だけが省略されて用いられたり、一部を共通にしたりするものでもない。アルファベットで表記された場合の最初の文字が欠ける結果、日本語としては最初の音が完全に異なることとなったものである。しかも、両商標は、発語時に三音節しかない中で最も重要な語頭部分の音が異なっており、共通の発音部分から原告や引用商標まで想起・連想することは困難である。したがって、本件商標が付された商品を原告と経済的、組織的な何らかのつながりがある者の業務に係る商品であると誤信するとは認められないから、混同のおそれはない。」との判断を示しました。

お気軽にお問合せください!

お問合せ・ご相談

主な業務地域
日本全国

連絡先 お問合せフォーム