PITAVA事件 東京地裁平成26年8月28日判決

原告は、第5類薬剤を指定商品とする商標「PITAVA(標準文字)」の商標権者です。被告は、製薬会社であり、被告製品である錠剤に「ピタバ」の文字等(以下「被告標章」とする)を付していました。原告は、被告による各被告商標の使用は原告の商標権を侵害するものであるとして被告標章の使用の差止及び被告標章を付した薬剤の廃棄を求めました。本件訴訟の争点は、被告標章の使用が商標的使用に当たるかどうかです。

東京地裁は、「被告標章は、別紙被告商品目録記載のとおり、『ピタバ』の片仮名を被告商品(錠剤)の上半分に外縁に沿って等間隔に配置した標章である。被告標章は、被告商品1については、『明治』の漢字及び『1』という含量を示す数字と併せて錠剤の片面に表示されており、被告商品2及び3については、『2』ないし『4』という含量を示す数字と併せて錠剤の片面に表示され、裏面には『MS』の英文文字及び3桁の数字が表示されている。...ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする医療用後発医薬品の販売名には、医薬品の販売名等の類似性に起因した医療事故を防止するために、一般的名称である『ピタバスタチンカルシウム』及び剤型、含量、会社名(屋号等)を付さなければならないこととされている。また、錠剤に販売名等を印刷もしくは刻印する方法は、製薬業界において一般的に行われている。...原告は、平成25年10月17日付けで、『ピタバ(標準文字)』を登録商標とする商標登録出願をしたが、特許庁審査官は、平成26年3月4日付けで、『ピタバ』の文字は、指定商品を取り扱う業界において、『ピタバスタチンカルシウム』又は『ピタバスタチン』の略称として使用されているから、単に商品の原材料、品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるなどとして拒絶理由を通知し、同年6月12日に拒絶査定をした。原告は、キョーリンリメディオ株式会社に対し、平成25年12月19日付け商標使用許諾契約により通常使用権を設定しているところ、キョーリンリメディオ株式会社の発売するピタバスタチンカルシウムを有効成分とする錠剤には、『ピタバ』及び『杏林』並びに『1』ないし『2』という表示があり、パンフレットには、『一錠毎に成分名と含量を表示』という記載がある。以上によれば、被告標章は、被告商品の有効成分であるピタバスタチンカルシウムの略称として被告商品(錠剤)に表示されているものであって、その具体的表示態様は、本件商標権の使用許諾を受けているキョーリンリメディオ株式会社のそれと何ら異なるものではない。そうすると、被告商品の主たる取引者、需要者である医師や薬剤師等の医療関係者は、被告商品に接する際、その販売名に付された会社名(屋号等)『明治』に加えて、被告商品のパッケージであるPTPシートに付された『明治』との表示や被告商品に併せて表示されている『明治』や『MS』の表示によってその出所を識別し、錠剤に表示された被告標章は、被告商品の出所を表示するものではなく、有効成分の説明的表示であると認識すると考えられる。」として被告標章の使用は商標的使用に該当しないとして、原告の請求を棄却しました。

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