BOSS事件 大阪地裁昭和62年8月26日判決

原告は、指定商品を「被服、布製身回品、寝具類」とする商標「BOSS」の商標権者です。  被告は、本件商標と同一の商標を付したTシヤツ、トレーナー、ジヤンパー等の衣類を訴外A社に製造させ、被告製造の楽器のノベルティとして無償で譲渡してきました。  原告は、被告の行為は原告の商標権を侵害するものであるとして、損害賠償請求等を行いました。 大阪地裁は、「被告は電子楽器等の製造、販売を業とする会社であるが、その製造、販売する電子楽器等に別紙商標目録記載の商標(以下『BOSS商標』という。)を使用しているところ、昭和五四年頃から電子楽器類の宣伝広告及び販売促進用の物品(ノベルテイ)として、Tシヤツ、トレーナー及びジヤンパーにBOSS商標を附したものを...被告製造の電子楽器の購入者に直接又は販売店を通じて無償で配付してきた...訴外ローランド株式会社を出願人として、指定商品第一一類、電気通信機械器具、その他本類に属する商品並びに同第二四類、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く)、レコード、これらの部品及び附属品につき『BOSS』の商標及び大きい『●』のマークの下に『BOSS』の横書きの文字を配して成る商標等が公告になつていることが認められ、右事実と弁論の全趣旨によれば、被告は右ローランド株式会社からBOSS商標の使用許諾を受けているものと推認される。...商標法上商標は商品の標識であるが(商標法二条一項参照)、ここにいう商品とは商品それ自体を指し商品の包装や商品に関する広告等は含まない(同法二条三項参照)。商標権者は登録商標を使用する権利を専有し、これを侵害する者に対し差止請求権及び損害賠償請求権を有するが、それは商品についてである(同法二五条 参照)。したがつて、商標権者以外の者が正当な事由なくしてある物品に登録商標又は類似商標を使用している場合に、それが商標権の侵害行為となるか否かは、その物品が登録商標の指定商品と同一又は類似の商品であるか否かに関わり、もしその物品が登録商標の指定商品と同一又は類似ではない商品の包装物又は広告媒体等であるにすぎない場合には、商標権の侵害行為とはならない。そして、ある物品が それ自体独立の商品であるかそれとも他の商品の包装物又は広告媒体等であるにすぎないか否かは、その物品がそれ自体交換価値を有し独立の商取引の目的物とされているものであるか否かによつて判定すべきものである。これを本件についてみるに、被告は、前記のとおり、BOSS商標をその製造、販売する電子楽器の商標として使用しているものであり、前記BOSS商標を附したTシヤツ等は右楽器に比すれば格段に低価格のものを右楽器の宣伝広告及び販売促進用の物品(ノベルテイ)として被告の楽器購入者に限り一定の条件で無償配付をしているにすぎず、右Tシヤツ等それ自体を取引の目的としているものではないことが明らかである。また、前記認定の配付方法にかんがみれば、右Tシヤツ等はこれを入手する者が限定されており、将来市場で流通する蓋然性も認められない。そうだとすると、右Tシヤツ等は、それ自体が独立の商取引の目的物たる商品ではなく、商品たる電子楽器の単なる広告媒体にすぎないものと認めるのが相当であるところ、本件商標の指定商品が第一七類、被服、布製身回品、寝具類であり、電子楽器が右指定商品又はこれに類似する商品といえないことは明らかであるから、被告の前記行為は原告の本件商標権を侵害するものとはいえない。」として原告の請求を棄却しました。

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