SEIKO EYE事件(最高裁平成5年9月10日第二小法廷判決)

この最高裁判決は結合商標の類否判断について最高裁が指針を示したものです。
X(原告・上告人)は、十字形輪郭内に「eYe」の欧文字とその下に小さく「miyuki」の欧文字を併記した商標(以下、「本願商標」)につき、指定商品を旧23類に属する「眼鏡、及び、その部品、その他本類に属する商品」として商標登録出願したところ、本願商標と同じ旧23類に属する「時計、眼鏡、これらの部品および付属品」を指定商品とし「EYE」の欧文字からなる登録商標(以下、「査定引用商標」)に類似するとして拒絶査定を受けました。
Xはこれを不服として拒絶査定不服審判を請求しましたが、審判係属中に査定引用商標に係る商標権が更新されずに消滅したため、査定引用商標と指定商品を同じくし、「SEIKOEYE」の欧文字からなる登録商標(以下、「審決引用商標」)と本願商標とでは「アイ」の部分の称呼、観念が類似するとして、拒絶理由通知を行ったうえで、商標法4条1項11号により登録を受けることができないとしました。Xはこれを不服としてY(特許庁長官-被告・被上告人)に対し審決取消訴訟を提起しました。原審では本願商標と審決引用商標とでは「アイ」の称呼及び「目」の観念を共通にする類似の商標と認められるとしてXの訴えを退けました。これに対してXが上告したという事件です。

最高裁は「審決引用商標は、眼鏡をもその指定商品としているから、右商標が眼鏡について使用された場合には、審決引用商標の構成中の『EYE』の部分は、眼鏡の品質、用途等を直接表示するものではないとしても、眼鏡と密接に関連する『目』を意味する一般的、普遍的な文字であって、取引者、需要者に特定的、限定的な印象を与える力を有するものではないというべきである。一方、審決引用商標の構成中の『SEIKO』の部分は、わが国における著名な時計等の製造販売業者である株式会社服部セイコーの取扱商品ないし商号の略称を表示するものであることは原審の適法に確定するところである。そうすると、『SEIKO』の文字と『EYE』の文字の結合から成る審決引用商標が指定商品である眼鏡に使用された場合には、『SEIKO』の部分が取引者、需要者に対して商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与えるから、それとの対比において、眼鏡と密接に関連しかつ一般的、普遍的な文字である『EYE』の部分のみからは、具体的取引の実情においてこれが出所の識別標識として使用されている等の特段の事情が認められない限り、出所の識別標識としての称呼、観念は生じず、『SEIKOEYE』全体として若しくは『SEIKO』の部分としてのみ称呼、観念が生じるというべきである。」として原審を破棄し自判しました。

一般的に商標の類否判断は、商標の外観、称呼、観念の3要素を基本的な構成要素として全体観察をするというのが基本ですが、指定商品・指定役務との関係において識別力を有するものと識別力を有さないものの結合商標の場合は識別力を有する部分が要部として抽出され、類否判断が行われることがあります。
本事件においては、本願商標及び審決引用商標が指定商品「眼鏡」に使用された場合「EYE」の部分は眼鏡と関連性を有する「目」を意味する一般的、普遍的な文字ですので、この部分を要部として抽出すべきではなく「SEIKO」又は「SEIKOEYE」が出所識別標識であると最高裁は判事しています。

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