肉ソムリエ事件 知財高裁平成27年11月30日判決

原告は、「肉ソムリエ」(標準文字)(以下、「本願商標」とする。)の商標について出願しましたが、3条1項3号に該当するとして、拒絶査定を受けたので、拒絶査定不服審判の請求と同日付で指定商品及び指定役務を補正しました。尚、補正前後の指定商品・指定役務は以下の通りです。

(補正前)
第29類「食肉」

第41類「食に関する資格検定試験の実施、資格の認定及び付与、資格検定試験に関する情報の提供、資格取得に関する知識の教授」

(補正後)
第29類「食肉」

第41類「肉食を中心とすることで健康を維持・促進するための肉の選択方法・肉の調理方法・肉と他の食材との組み合わせなどに関する資格検定試験の実施、肉食を中心とすることで健康を維持・促進するための肉の選択方法・肉の調理方法・肉と他の食材との組み合わせなどに関する資格の認定及び付与、肉食を中心とすることで健康を維持・促進するための肉の選択方法・肉の調理方法・肉と他の食材との組み合わせなどに関する資格検定試験に関する情報の提供、肉食を中心とすることで健康を維持・促進するための肉の選択方法・肉の調理方法・肉と他の食材との組み合わせなどに関する資格取得に関する知識の教授」(以下、この指定役務を「本願指定役務」ということがある。)特許庁は、上記請求について不服2014-19333号事件として審理し、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をしました。原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。

本件訴訟の争点は、本願商標の3条1項3号該当性です。

知財高裁は、「本願商標は、『肉ソムリエ』の文字を標準文字で表してなるものであり、本願商標から『ニクソムリエ』の称呼が生じる。大辞林第三版(平成18年10月27日発行。)によれば、本願商標を構成する『肉』の語は、『【1】動物の骨や植物の種子に付着した柔らかい部分。【2】食用とする鳥獣のにく。【3】からだ。【4】生身のからだだけで器具を用いないこと。【5】血縁であること。【6】印肉のこと。』を意味し、『ソムリエ』の語は、『ワインに関する専門的知識をもち、レストランなどで客の相談に応じてワインを選ぶ手助けをする給仕人。』を意味することが認められる。そして、本件審決日以前にウェブサイトに掲載された情報として、【1】『現在日本ではワイン以外でも○○ソムリエと、様々な専門分野に特化した専門家を○○ソムリエと呼ぶ事があります。』との記載に続き、『資格を取得出来るソムリエやまた、ソムリエと同じく専門特化している資格等』の例として、『日本酒ソムリエ』、『焼酎ソムリエ』、『コーヒーソムリエ』...【2】『ソムリエといえば客の好みや料理に合わせてワインを選ぶ人のことをいいますが、最近では『専門的な知識を持っている人』という意味として使われることも増えています。その中でも今回は、ワイン以外のものに関係する食べ物のソムリエをいくつかご紹介しましょう。』との記載に続き、資格の認定等が行われている例として『オリーブオイルソムリエ』、『だしソムリエ』...【3】資格の認定等が行われている例として『タオルソムリエ』、『温泉ソムリエ』...が紹介されている(同月7日付け『マイナビニュース』。)ことからすると、本件審決日当時、『ソムリエ』の語の前に商品や食品、事柄を表す語を結合した語は、当該商品等についての専門的知識を有する者を意味する語として、一般に理解されていたことが認められる。さらに、食肉業者や肉料理を提供する飲食店においては、食肉技術専門士協会の認定資格である『食肉技術専門士』を『肉のソムリエ』と称することがあるほか、商品である食肉の選択や品質管理等についての専門的知識を有する者を指す語として、『肉のソムリエ』、『お肉ソムリエ』、『肉ソムリエ』、『ビーフソムリエ』の語を用いている例があることが認められる。...そうすると、本件審決日当時、『肉』の語と『ソムリエ』の語を結合させた『肉のソムリエ』の語が、食肉業者間で『食肉技術専門士』の別称として用いられ、また、『肉ソムリエ』、『肉のソムリエ』、『お肉ソムリエ』などの語が、食肉の選択や品質管理等についての専門的知識を有する者を意味する語として用いられる例があったことが認められる。... 本願指定役務である『肉食を中心とすることで健康を維持・促進するための肉の選択方法・肉の調理方法・肉と他の食材との組み合わせなど』に関する資格検定試験の実施、資格の認定及び付与、資格検定試験に関する情報の提供、資格取得に関する知識の教授に係る事業の取引者、需要者には、食肉の選択や調理等についての専門的知識の修得に関わる食肉業者や一般消費者などが含まれるところ、前記(2)認定の事実によれば、本願商標を構成する『肉ソムリエ』の語は、本件審決日当時、かかる取引者、需要者によって、『肉(食肉)に関する専門的知識を有する者』を意味する語として、一般に認識されるものであったことが認められる。...加えて、本願商標は、標準文字で構成されているから、『肉ソムリエ』の文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるというべきである。したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当するものと認められる。」として知財高裁は原告の請求を棄却しました。

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