知財高裁平成27年11月30日判決「肉ソムリエ」事件

原告は、平成25年10月7日に第29類「食肉」、「肉ソムリエ(標準文字)」について商標登録出願を行いましたが、本願商標は3条1項3号に該当するので、登録することができないとして拒絶査定を受けました。原告は拒絶査定不服審判を請求ましたが、請求は棄却されました。原告は、これを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。

知財高裁は、「本願商標は,『肉ソムリエ』の文字を標準文字で表してなるものであり,本願商標から『ニクソムリエ』の称呼が生じる。大辞林第三版(平成18年10月27日発行。乙1及び2)によれば,本願商標を構成する『肉』の語は,『【1】動物の骨や植物の種子に付着した柔らかい部分。【2】食用とする鳥獣のにく。【3】からだ。【4】生身のからだだけで器具を用いないこと。【5】血縁であること。【6】印肉のこと。』を意味し,『ソムリエ』の語は,『ワインに関する専門的知識をもち,レストランなどで客の相談に応じてワインを選ぶ手助けをする給仕人。』を意味することが認められる。そして,本件審決日以前にウェブサイトに掲載された情報として,【1】『現在日本ではワイン以外でも○○ソムリエと,様々な専門分野に特化した専門家を○○ソムリエと呼ぶ事があります。』との記載に続き,『資格を取得出来るソムリエやまた,ソムリエと同じく専門特化している資格等』の例として,『日本酒ソムリエ』,『焼酎ソムリエ』,『コーヒーソムリエ』...などが紹介され(2012年(平成24年)10月27日付け『777NEWS』。乙3)...加えて,市民講座『丸の内朝大学』の2013年(平成25年)度秋学期クラス一覧(乙16)に,食肉の選び方,買い方や保存法,調理法等を学ぶ講座として開講される『No Meat No Life 肉ソムリエクラス』が挙げられていること,2013年(平成25年)4月16日付け日本経済新聞朝刊(乙17)に,『丸の内朝大学』が開講する講座に関し,『食肉の選び方や料理法などを,食べながら学ぶ【肉ソムリエ】が一番の人気だ。』との記事があることが認められる。そうすると,本件審決日当時,『肉』の語と『ソムリエ』の語を結合させた『肉のソムリエ』の語が,食肉業者間で『食肉技術専門士』の別称として用いられ,また,『肉ソムリエ』,『肉のソムリエ』,『お肉ソムリエ』などの語が,食肉の選択や品質管理等についての専門的知識を有する者を意味する語として用いられる例があったことが認められる。本願指定役務である『肉食を中心とすることで健康を維持・促進するための肉の選択方法・肉の調理方法・肉と他の食材との組み合わせなど』に関する資格検定試験の実施,資格の認定及び付与,資格検定試験に関する情報の提供,資格取得に関する知識の教授に係る事業の取引者,需要者には,食肉の選択や調理等についての専門的知識の修得に関わる食肉業者や一般消費者などが含まれるところ,前記(2)認定の事実によれば,本願商標を構成する『肉ソムリエ』の語は,本件審決日当時,かかる取引者,需要者によって,『肉(食肉)に関する専門的知識を有する者』を意味する語として,一般に認識されるものであったことが認められる。そして,『資格検定試験の実施』,『資格の認定及び付与』などの役務においては,『資格』の内容は,当該役務の質(内容)を構成するものといえる。そうすると,本願商標は,本件審決日当時,本願指定役務に使用されたときは,当該『資格検定試験の実施,資格の認定及び付与,資格検定試験に関する情報の提供,資格取得に関する知識の教授』に係る資格が,『肉(食肉)に関する専門的知識を有する者』に関するものであるという本願指定役務の質(内容)を表示するものとして,取引者,需要者によって一般に認識されるものであって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであったものと認められるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,自他役務識別力を欠くものというべきである。加えて,本願商標は,標準文字で構成されているから,『肉ソムリエ』の文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるというべきである。」として、本願商標は、商標法3条1項3号に該当するとの判断をしました。

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